第22話 危険な幼馴染

 対応はすべて駆けつけてくれた先生たちに任せた。

 茂木と吉田はどこかへ連れていかれ、最終的にはパトカーに乗せられ連行されたようだ。


 その姿を遠くから見守り、俺たちは帰宅へ。



「今日はすみませんでした、兄さん。藍ちゃん」



 俺の自宅前で都は頭を下げた。

 本当に申し訳ないと思っているようだ。

 助けてくれたのは事実。今は信じよう。



「いいんだ、都。今日のところは真っ直ぐ家に帰るんだ」

「はい……」


 都は大人しく家に帰った。


「行っちゃったね、都」

「ああ……。ところで、藍はケガとか大丈夫か?」

「幸いにも擦り傷くらい。赤くんが守ってくれたおかげだよ」


 いや、心の傷はもっと深いはずだ。

 あの茂木にあんなことをされたのだから。

 それに、最近多くのことがあった。

 今までのことを考えれば……藍はかなり無理をしている。少しでも嫌な記憶を忘れさせてやりたい。


「家に寄っていくか?」

「いいの……?」

「ウチはほら、誰もいないし」

「そうだったね。じゃあ、お言葉に甘えようっと」


 俺の手を握ってくる藍。まるで子供みたいに小さく震えて……ああ、やっぱり無理をしていたんだと俺は悟った。


 家に上がらせ、リビングへ案内した。



「さあ、座って」

「ありがと、赤くん」



 しばらく沈黙が続く。

 なにを話したらいいのだろう……。話題に悩む俺。こんな時、慰めてやるべきなんだろうけど……。



「藍……その……」

「ごめんね」

「え……」

「いつも助けて貰ってばかりだから」

「気にするなって。幼馴染だろ」



 そうだ。藍は大切な幼馴染だし、好きだから助けている。こんな散々なトラブル続きではあるけど、それは藍が魅力的で可愛いから仕方ないんだ。

 だから変な男が寄ってくるのも不思議なことじゃない。

 そんな危なっかしい藍を俺が守る。自然のことだ。


「幼馴染っていうか……その、えっと」

「どうした、藍」

「もっと特別な……関係でもいいんだよ?」



 顔を赤くして藍はそんなことを言った。

 もっと特別な関係だって……?


 それってつまり……そういうこと!?


 嬉しい、嬉しい、とても嬉しい。その言葉を藍から聞けるなんて思いもしなかった。



「藍……俺も――」



 返事を返そうとするとチャイムが鳴った。……くそ、こんな時に来客かよ。



「あら……」

「すまん、藍。ちょっと玄関へ行ってくる」

「うん、分かった」



 藍には申し訳ないが、あとで返事をしよう。

 俺は直ぐに玄関へ向かった。


 扉を開けると、そこには……。


 俺を見下すような眼を向ける『綾乃』の姿があった。



「…………」


「あ、綾乃……!?」


「久しぶりね、赤くん」



 感情のない口調で綾乃は、俺に挨拶をした。な、なんだこの冷たさ。なんだか怖いぞ……。いや、当然か。コイツは俺に恨みがあるはず。



「なんでここにいる。お前は転校したはずだ!!」

「まあね。警察のお世話になるわ、母親に怒られて強制的に引越しもさせられて大変だったわ」

「恨みを晴らしにきたのか……」

「あ? ゴチャゴチャうるさいな。でもね、あのあと家を飛び出して今は友達とシェアしてるの」


 そうだったのか。

 転校して引っ越した後、家出少女にでもなったらしい。


「で、なんの用だ」

「とりあえずさ、今日……水泳部の茂木となんかあったらしいじゃん」


「なんで知ってる!」


「さあね。それより、赤くんさ~。わたしとイチでいいからしよ」

「は……?」

「立ちんぼもリスク高くなっちゃってね。知り合いがどんどん捕まっちゃった。なら、元幼馴染の赤くんでも誘ってみよっかなって」



 コイツ、売春までしているのかよ。

 今度は金の為に俺に近づいてきたわけか。



「ふざけるな! 綾乃、俺はお前のことが好きだった……でも、お前は俺の気持ちを裏切ったんだ」

「じゃあ、いいわ。泊めてくれるなら、タダでヤらせてあげる」


「黙れ、クソビッチ!!」



 俺は玄関の扉を閉めた。

 綾乃と関わるだけリスクしかない! 俺は藍と平和にのんびり学校生活を送りたいんだ。邪魔はさせないッ!

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