第20話 ヤンデレ幼馴染の計画
幸せな昼休みが終わった。
午後の授業も適当に受けて――放課後。
藍と一緒に帰ろうと思ったが、部活へ行ってしまった。そういえば、藍は水泳部だったな。あんまり参加してはいないらしいけど、たまに顔を出さないと部長に怒られるという。なら、仕方ないか。
せめて都と帰るか。
今日はいろいろ悪いことをしてしまった。
スマホを取り出し、俺はアプリでメッセージを送った。
赤:今から帰るんだが、一緒にどうだ?
しばらくすると“既読”になった。
けど反応はない。
これはいわゆる既読スルー?
なんて思っていると、反応が返ってきた。
都:はい、よろこんで。では、昇降口で待っています
妙に反応が悪かったけど、取り込んでいたのかもしれない。ともあれ良かった。
俺はそのまま教室を飛び出し、昇降口へ。
歩いて向かうと、都の姿があった。
「お待たせ、都」
「いえ、私も今着いたところです」
「そうなのか。それじゃ、帰ろうか」
「二人きりで帰れるなんて嬉しいです」
本当に嬉しそうに微笑む都。普通にしていれば可愛い妹なんだが、最近は情緒不安定だからなぁ……。海外でいろいろあったのかな。
「藍は部活だってさ」
「ええ、知ってます」
「なんだ、知っていたのか」
「連絡をもらいましたので……」
「そうなのか?」
だが、都の反応はなんだか曖昧に思えた。
なにか……隠しているような。
なんだ、この“違和感”のようなもの。
本当にこのまま都と共に下校していいのか……?
なにか裏があるんじゃないかと俺は疑念が生まれていた。
「さあ、帰りましょう」
妙に口元を緩ませ、俺の腕を引っ張る都。……やっぱり、おかしいって。
「都、なにか俺に隠してないか? というか、企んでいないか?」
「兄さんに隠し事なんてありません。信じてください」
そんな風に胸を押し付けてきて、ますます怪しいぞ。
まさか……藍になにかしたのか。
だとすれば危険が迫っているかもしれない。
「都、藍になにをした?」
「なにもしていません。本当です! 信じてください!」
その時だった。
ちょうど通り掛かった都のクラスメイトらしき女子が駆け寄ってきた。
「あ~、都。さっき水泳部の
「え……なんのこと?」
突然のことに都は表情を硬くしていた。まて、水泳部の部長と話していた?
「ちょっと、とぼけないでよ~。あの部長さんってさ、かなりの人数の女子と関係を持ってるって噂だし、やめておいた方がいいよ」
そう言ってクラスメイトらしき女子は去っていく。
……これはスルーできない問題だぞ。
「都! これはどういうことだ!」
「もう遅いですよ、兄さん。藍ちゃんは茂木部長に言い寄られている頃です。あの部長、可愛い女子なら直ぐ手を出すことで有名ですからね、利用したんです」
……やられた!!
都は最初からそのつもりで……!!
くそおおおおおおおお……!!!
昇降口に都を置いて、俺は全力で走った。
水泳部はグラウンドの外にあるプールで活動中のはずだ。
今はきっと他のメンバーも練習中のはず。
だけど部室もあるから、そっちで大変なことになっているかも。
全力疾走して俺はわずか二分で水泳部の部室に到着。
息が乱れ、肺が死にそうだが――そんなことはどうでもいいっ!
藍の無事が知りたい……。
ゆっくりと部室の前へ向かうと――。
『古森さん……スクール水着姿の君はいつも綺麗だ。俺はそんな君が欲しい』
『な、なにをするんですか、茂木部長! わたし、水泳部を辞めたいんです! 今日だけ部活に参加したら退部届をくださるって条件だったじゃないですか! 嘘だったんですね!?』
『そんな固くならないで。ほら、俺に身を委ねてごらん』
『さ、触らないでくださいっ! 叫びますよ!』
『……おかしいな。古森さん、君は俺に惚れたんじゃないの? そう聞いたけどな』
『なんのことかサッパリです! ていうか、あたしには好きな人がいるので……やめてください!』
なにやら抵抗する音が聞こえる。
でも、なんだろう……藍のヤツ、逃げきれていないようにも思えた。
『やめておけ、古森さん。君の手足は結束バンドで縛ってあるから逃げられないよ』
……なっ!
この男、藍を拘束しているのかよ。なんてやつだ!!
踏み込もうとすると、背後から羽交い絞めにされる俺。
だ、誰だ……!?
「邪魔するんじゃねぇよ」
「お、お前は……」
「水泳部の中田だ。部長に頼まれてよぉ、ここに誰も入れるなって言われてるんだよ」
く……まさか部活メンバーに見張りをさせていたとは……!
俺は口をふさがれ、その場で身動きが取れなくなった。こいつ、なんて馬鹿力だ……。
「…………ッッ!!」
「抵抗は無駄だ。このまま大人しく部長とあの女のお楽しみタイムを見届けろ」
そんな、そんな、そんな……!!!
『や、やめて……いやぁぁっ!』
扉の隙間から藍の水着が脱がされていく光景が見えた。ちくしょう……こんな時だっていうのに俺は不覚にも興奮してしまった。
「おいおい、お前。下半身がガチガチじゃねえか!」
(……だ、黙れ)
「いいぜ、お前の相手は俺がしてやる」
(は……? この中田ってやつ、まさか!!)
うああああああああああああああああああああああああああ……!!!
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