第13話 盗撮疑惑
学校に到着。
校門を抜け、俺は藍と都と共に昇降口へ。
「では、私は行きますね、兄さん。それと藍ちゃん」
一年の教室へ歩いていく都。少し後姿を見守っていると、すでに男子が寄ってきていた。……人気あるんだな。
少し心配になっていると藍が俺の袖を引っ張った。
「行こ」
「あ、ああ……」
階段を上がっていくと、藍は上目遣いで俺を見た。
「ねえ、赤くん。まさか、都が心配なの?」
「……い、いやぁ~?」
「その
「なにを根拠に」
「根拠もなにもないって。赤くん、変にニブいね」
「ふむ……?」
う~ん、どういう意味なんだ。
ヴォイニッチ手稿よりも難解だな。永遠に解けない謎かもしれない。
そのまま教室へ向かい、いつもの席へ座る。
隣の席の藍はクラスメイトと挨拶や雑談を交わしていた。さすがクラスの人気者だ。
そんな中でも藍は、俺に話しかけてくれる。
「ねえ、今日もお弁当作っておいたからね」
「お、おう。ありがとう、助かるよ」
そんな純粋な眼差しを向けられ、俺は心臓の鼓動が早まった。
しばらくしてホームルームがはじまり、念仏みたいな授業が進んでいく。右から左へと謎言語が流れていく。そして、昼前に体育の授業となった。
今日はマラソンかぁ……面倒な。
倦怠感を感じながら、俺は体操着に着替えていく。女子は隣の空き教室で着替えることになっているので、ぞろぞろと出ていく。
「じゃ、あたしも行くね~」
「ああ、木ノ原には気をつけろよ」
「まだ気にしてるの~。大丈夫大丈夫」
本当に大丈夫かな。
心配の塊しかないのだが、今は藍を信じる他ない。
俺は体操着に着替えてグラウンドへ向かおうとした。
だが。
廊下を歩く二人の女子から、気になる会話が耳に入った。
「ねえねえ、さっき着替える前に木ノ原が教室から出てこなかった~?」
「うん、なんで誰もいない教室にいたんだろうね」
「怪しいよね」
「まさか覗き?」
「でも、女子が来る前に帰っちゃったし、関係ないのかな」
二人は不安そうに階段を降りていく。
俺は……俺はとてつもない違和感を感じた。
木ノ原のヤツ、女子たちが着替える前に隣の教室にいただと……?
そんなの怪しすぎるじゃないか!
だが、俺が今から覗きにいって万が一にも中に人がいたらアウト。人生終了のお知らせだ。今から行こうが後で行こうが死だ。
――となると、方法はひとつ。
きたっ……!
「藍! 待っていたぞ」
「ど、どうしたの、赤くん」
体操着姿の藍は少し恥ずかしそうに慌てた。相変わらずスタイルは抜群だが、今はそれどころではない!
「頼みがあるんだ」
「た、頼みって……」
「今、女子更衣室になっている教室、あの中を調べて欲しいんだ」
「え? なんで?」
「女子が使う前に木ノ原がいたそうだ。怪しくないか?」
「うそ……木ノ原先生が? でも、あの教室に違和感はなかったと思うけど」
「よく調べてみてくれ! 頼む!」
「うん……分かった」
もしかしたら、木ノ原は“盗撮”している可能性がある。どこかに超小型カメラを仕込んでいるに違いない。もし……もしカメラが見つかれば大事件だ。
何もなければいいけど、だけど木ノ原の行動は明らかに怪しい。
そう、ヤツは藍を狙っているように見えた。つまり、藍の着替えを盗撮する目的で……そう考えれば矛盾はない。
頼むぞ、藍。
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