第8話 ヤンデレ幼馴染
乱入してきた人物に見覚えがあった。
彼女は海外にいるはずの幼馴染だ……。
「お久しぶりです、兄さん!」
「都……
「そうです! 都です! 覚えていてくれたのですね」
ニコリと微笑む幼馴染。
以前は幼さを感じさせるツインテールだったが、バッサリ切ってショートボブになっていた。栗色の髪が風になびいてサラサラだ。
彼女は俺のひとつ下。子供の頃よくゲームの対戦相手とかしてもらったっけ。二年前に海外留学するとかで旅立ってしまったが、早くも再開できるとは……。
「都……どうして?」
「綾乃ちゃんのことを聞いて、いてもたってもいられなくなりまして」
どうやら藍から連絡がいっていたらしい。
「そうだった。赤くん、都ちゃんに教えておいたんだよね……」
思い出したようで藍は苦笑いしていた。けど、まさかこんな短期間で帰ってくるとは思いもしなかった。
「都、なぜ地元に? 留学はどうした?」
「いや~、実はですね。もう三日前ほどから日本に帰って来ていたんです」
「なんだって?」
「海外の空気は自分には合わなくて。それでですね、こちらに転校することにしました!」
マジかよ。そういう理由だったのか。
おかげで藍とのキスを逃してしまったが、けど久しぶりに都と会えて俺は嬉しかった。
「そっちも色々あったんだな」
「はい。ですので、これからは同じ学校です。よろしくお願いしますね」
丁寧に頭を下げる都。そういえば昔から礼儀正しかったな。
それから俺は綾乃のこと、平野のことを情報共有した。黙って話を聞いていた都は終始驚いていた。……そりゃ、そうだろうな。
都と綾乃は姉妹のような関係だった。仲が良かっただけにショックは計り知れないだろう。
「綾乃はとはもう会えない」
「そうだったんですね……。悲しいです」
「でも、都が元気そうで良かった。雰囲気変わっててビックリしたけど」
「そりゃ二年も海外にいましたからね。見た目くらい変わります。胸だって結構大きくなりましたもんっ」
確かに、子供の頃に比べれば大きく変化している。記憶を探りながら観察していると藍が膨れていた。
「ちょっと、赤くん!」
「か、勘違いするな藍。俺は別に胸なんか見てないぞ……!」
「むぅ」
悔しそうにしながらも藍は、俺の腕をその胸に包むように抱いた。……んぉ!? 腕が、腕が幸せ過ぎるッ!
こ、この感触は感じたことのない“天国”そのものだ。
ていうか、藍のヤツ……妬いてるのか!?
だとしたらこれは可愛すぎる!
「あれ、兄さんって藍ちゃんとそんなに仲良かったです……?」
「あー…これは、その……だな」
昔の俺と藍はここまでベッタリするほどではなかった。どちらかといえば、俺と都はベッタリだった。だが、最近の事件が俺と藍の距離を縮めた。今や特別な好意を感じている。
「……へぇ、兄さん。
「え……は!?」
都の様子がヘンだ。
目が死んでるっていうか、なんかカバンから取り出したぞ。
「兄さん、子供の頃に約束してくれましたよね……」
「な、なにを!?」
「まさか忘れたんです……? それは酷いですよ……私のことお嫁さんにしてくれるって言ってくれたじゃないですか!」
その手にはナイフが握られていた。
ちょ!!
都のヤツ、病室で凶器を……冗談じゃねぇ! さすがに笑えないって。これは止めないとまた事件になっちまうぞ。
「お、落ち着けって……都」
「そ、そうだよ。都、病室でナイフなんて!」
藍も一緒になって説得してくれた。
だが。
「……兄さんは私のモノ。私だけを愛してくれるって言いました。だから……裏切ったのなら、ここで兄さんを殺して私も死ぬ」
ナイフを向けて走ってくる都。ウソだろ……都のヤツ、本気じゃないか! せっかく、せっかくこれから藍と新しい生活が送れると思っていたのに。
こんなところで俺は死ぬのか……!
「や、やめてくれ!」
「死んでください……!!」
胸元にナイフの先が接近していた。だめだ、スタンガンの後遺症でまともに動けない。避けられない……!
うわ……!
うあああああああああああああ……!!!
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