ほぼ40℃前後の白昼夢

狐照

ほぼ40℃前後の白昼夢

長雨しとしとじわりと寒い。

濡れたアスファルトが悲鳴をあげる。

的な、短い微睡みとも夢とも区別つかないあたりを意識彷徨い、唾を飲み込む。

すっごく痛い。

いや、外は本当に雨は降っている。

それが寒さをアシストしている。

寒いってなにさ。

俺は不愉快な喉の痛みに目を覚ました。

今は寒さ厳しくなる季節の変わり目、ここ最近仕事も忙しかった。

完全に風邪引いている。

昨晩の珍しい眠気は、ウィルスに身体が冒されていたサインだったのか。

起き抜け一番の喉の痛みに耐え、とにもかくにもベッドから抜け出した。

ふらっとかくらっとかしたけど、あまり気にしないこととする。

テーブルの上に仕舞い忘れていた醤油差しを見つけ、冷蔵庫へ入れる。

台所に仕舞い忘れていたコップを見つけ、冷蔵庫へ入れる。

ついでにシャツも脱いで冷蔵庫へ。

なんでもかんでも冷蔵庫、って冷蔵庫大好きだな俺は。

冬将軍ってなんだっけ。

またしてもふらっとくらっと、壁に激突イテテ。

唾を飲むと喉が痛いひりひりする。

そうだ臍を噛んで我慢できないものか。

思いつくまま、上半身は丁度剥き出し好都合。

ぼあっと臍を眺め、どうしたものかと皺の奥。

それにしても暑い、エアコン付けて寝たっけか?

雨降って気温は確実に下がっているはずなのに熱い?

何か聞こえてきた、これは幻聴?

やっぱり暑い空調?

びびでばびでぶー?

頭が、上手く、回らない。


「何してんだ?」


あ、おはようござます。

両足を引き摺るよに振り返る。


「熱、あんな…どこか痛いか?」


首を触られその手の冷たさに心臓がどきどきしすぎて目眩がする。


「のど…いたい…」


しゃべるのもおっくうで何とか絞り出す。


「待ってろ、今喉舐めてやるから」


え、痛いとこ舐めてくれるって?そりゃあいいね。

安堵感に包まれ意識遠のく。


「お前、熱あると可愛さ倍ましだなぁ…」


なんだか褒められている独りごちに夢心地。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

ほぼ40℃前後の白昼夢 狐照 @foxteria

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ