第2話 依頼主
こちらにきて欲しいと言う内容だけが書かれていた。
「満李、申し訳ありませんが、急を要する用事ができてしまったのでこれで失礼させてもらいます」
「えぇ、またね!玉」
双樹がいてくれて良かった。
彼がいなければ満李は紅玉蘭離してくれなかっただろう。
こちらを見て何かを話したそうな双樹に感謝しつつ、紅玉蘭宮である蘭火宮に戻った。
「みんな、あの方から呼び出されたから今から行ってくるわ。服を用意して」
そう言って準備された服は、深紅の衣装だった。深紅は紅玉蘭に与えられた色で、もちろん満李たちにも色が与えられている。
「行ってらっしゃいませ」
あらかじめ準備してもらっていた駕籠に乗り、しばらく揺られていた。
声をかけられ駕籠から降りると、全く違った風景になっていた。
後宮ほど華やかさはないが、ここには品の良さ、というものが感じられる。
すると宮の方から男がやってきた。
「紅玉蘭様、お待ちしておりました。私はあの方にお仕えしている仁と言うものです。あの方に連れてくるよう言われておりますので、さぁ、参りましょう」
仁について行き、あの方が待っているという部屋の前に着くと、仁が一歩下がった。
「仁でございます」
「入れ」
中へ入ると侍従たちに囲まれた若宮が見えた。
「若宮殿下の命により参りました紅玉蘭でございます」
「よく来た。顔をあげてくれ。早速だが、報告を頼む」
若宮の言う報告とは、依頼されたことで、内容としては後宮内の細かいことを教えてくれというものだった。
つまり、自身の妃を決めるには、情報が不足しているから、後宮の内情を教えてくれということだ。
「今現在のことですが、満李姫は誰にでも平等に接する良い方だと思います。ですが、私自身がまだ他の姫たちと関われていないため、今現在お伝えできることはございません」
「そうか他には?」
「はい、姫たちについては詳しく存じ上げませんが、姫たちの侍女は、使えている主人より身分の低い姫の侍女などによく嫌がらせをしております。それと、もう少し警備を厳しくすると良いと思います」
「なぜ?」
「どこからでも後宮に入ることが可能な状況にあるからです」
若宮は一度目を瞑り、側にいた侍従に何かを耳打ちした。
「そうか。ご苦労だった。また、呼ぶとしよう。何かあったら連絡してくれ」
正式な拝礼をし、部屋を後にした。
来た時と同じように駕籠揺られて帰ると、優蘭たちが温かいお湯を張って待っていてくれた。
幻の存在だと言われていますが、存在しますよ? 蓮水和蘭 @waka64
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