第3話、あらゆる感情はすべてのはじまり

4月5日


あの奇妙な出来事へ向かう、カウントダウン。

残り16日。


案の定、後輩や同僚は速攻で仕事を落としやがった。

本来、後輩の面倒をしっかりと見るべきなのは上司だ。


実際に俺や後輩には係長級の上司がいた。


だが、直属の上司として転職してきた係長級は、当社製品の基本構造すらまともに理解していなかった。


自動車メーカに転職するなら「走る、曲がる、止まる」にかかる機構と力ぐらいは理解しとけよ!と心の中で叫んでいる。そんな係長がぽっと出で上司として上にやってきたのにもムカついていた。


更にこの係長、余計なマジで無計画な夢語って仕事の邪魔しかしてこない。それを考える前にお前さんの部下の面倒を見ろ!!と俺は言いたい。


結局は後始末させられる俺。


すげー、くだらない。挙句にこの係長の面倒を見て自分の上司に育てろ、と課長は宣う。なんで俺より職級の高い奴の面倒見なきゃなんねーんだよ。


自分より知識もなく、仕事もできない転職してきた上司に、昇進昇格試験も失敗。使えない後輩に同僚。


本当にめちゃくちゃ気分最低で、こんなクソみたいな同僚達と仕事して、挙句に努力しても報われない会社なんか辞めてーとか異動してーと思っていた。


と、まあ、ここまでは誰しもよくあることだと思う。


だが、本当にここからはマジでわからない。たかがひと月にも満たない時間。今振り返っても、やっぱり理解できない。


そんなある日、睡眠薬飲んでもその日は眠れなくて、ネットサーフィンしてたんだ。ぼんやりと。ただ知識を貪るだけ。


そしたら、出てくる出てくるリア充たち。すげーな疫病下でもお盛んだ。

若さ。もう無くしたものを虚しく見つめている。


キラキラなインスタに飽きて、それでも時間潰しにチラ裏な呟きを見ていたら、なんか、俺がずっと師事している大学教授に大変似たことを言ってる呟きがあったんだ。


あんまりにもセリフというか、言い回しが似てるから、もしかしたら教授かな?と思ってしまったんだ。


睡眠薬で眠かったし。

で、いつも通り教授にメール返すみたいに普通にコメント付けて、そのまま眠ってしまったんだ。


ああ、これが初春の夜の夢の始まりとも知らずに。

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