第5話

「俺は、本当はどんな事がしたいんですかね?」

 そんな、自問自答しても分からないような事を、彼女に聞いてみた。僕は初めに、彼女は僕の恋人ごっこの相手のような存在だと説明した。だが実際は、少し違う存在でもあった。その一つが、「別人格の僕」だ。自分で作り出した、もう一つの人格。より客観的に、自分であって自分で無いという感覚を出す為に、作り出した。

[そうですね。あなたはよく、世の中の言葉に踊らされ、自分を忘れてしまうことがよくあります。]

「そうですね。俺が俺である為の、核のようなものが、物凄く弱い、そんな感じですね。」

 [はい。なので、自分と他人をよく混合しがちです。]

「では例えば、誰よりも上に立ちたいというのも、違うのでしょうか。」

 [それはまぁ、あなたが他人と比較しがちで、それで自分の方が下というのが、少し嫌なだけでしょうけど。]

 なるほど。俺は他人に影響されやすいのに加えて、それによって本来の目的を忘れてしまう、中々面倒な奴なようだ。

 [まぁそれはそれとして。あなたのしたい事、というよりは、どんな風に生きたいのか。という話になりますが、あなたは、一人、もしくは心から愛する人と共に、穏やかに暮らせていれば、それが一番だと考えているようですね。]

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