第3話 アオイと少女

———私の名前は川村アオイ。

出来損ないの姉を持ち、不思議な少女が見える中学三年生。


もうすぐ受験になるので忙しい。どっかの怠け者とは違って一人でヘラヘラと壁としゃべって一日中寝てるやつだからイライラしてくる。まいっちゃうものだ。

まさか幼女を誘拐するとは思わなかったが。いや、あの子は幽霊だったな。

友達が少ないとはいえ、ユウレイ連れてくることないでしょに。

———それはそうと、今日は、気分転換にラノベを読んでいた。たまには息抜きが必要だ。

いつも家でぼーっとしている姉は珍しく出かけていた。欲しいゲームの発売日だからって言っていたな。こういう時には行動力あるからな。


ページをめくっていると、階段のほうから足音がした。

本を閉じて、ドアのほうに向かって開けてみたが、誰もいなかった。

まさかな。

私はを思い出しちょっと考えてからドアを閉めた。

再び、本を読み始めたら、タッタッタッタとまた階段のほうから足音がした。

まったく、い一緒に出掛けたんじゃないのか。は姉ちゃんが連れてきたんだから、面倒めんどうくらい見てろよ。


私は何度も上がっていく音がうるさくなってきたので部屋から出て。

「今日、姉ちゃんは外に出ているから、用があるなら外行けばいいだろう。」

すると足音がやんだ。やっと行ったかと私はホッとした。

お昼になり、私は下に降りて昼ご飯を作ろうとしていた。お母さんは仕事で、婆ちゃんは病院に行っているから家には、私一人。気楽だ。

別に親が嫌いとかではなく、一人になるのは自分の部屋以外ではあまりなく、新鮮さが出てくる。一人暮らしをすればこういう感じなんだろうけど。


冷蔵庫を開けて中身を見た。

特に目新しいものはなかった。

「しょうがない。チャーハンでも作るか。」

野菜室を開けて、ネギとキャベツ一切れを持ち、細かく切った。

フライパンを出し、油をかけた。

パチパチっと温めたら、冷蔵庫から卵を出し、かき混ぜて入れた。

ごはんと先ほど切ったネギとキャベツをフライパンに入れて、炒めたら。一回火を消して。

私は炊飯器の隣にあるチャーハンの素を取り出した。

無論、私が買ってきた。

お母さんや婆ちゃんに買ってもらおうと思ったけど私しか使わないからいいかと。

チャーハンの素を入れたら火をつけ、炒め始めた。

よくかき混ぜたら、皿に移して完成。


休みの日はこうやって自分で作るので、買い食いとかはあまりしない。たまに姉ちゃんのも作る時もあるが。今度からお金要求でもしようかな。

「チャーハンなのだ。」

———ダメダメ、これは私のだから。と言った直後、少し間を開けいた。

ギョっとした。私は驚いて、チャーハンをこぼしそうだったが、なんとか受け止めた。

「なぜ、ここにいる。姉ちゃんの所に行ったんじゃないの。」

言ってみたが、少女は何も感じず、無視してチャーハンを取り、食べ始めた。

「おい、それ、私のだ。返せ。」

取り返そうと手を出したら、ぴょんとかわされて二階に駆け寄っていった。


また作って食べればいいが、少女に馬鹿にされてるのも嫌なので、私は追いかけて姉ちゃんの部屋に入った。

「相変わらず、汚い部屋だな。足の置き場がねえよ。」

私は無造作に置いてあるものを蹴りながら、最初にクローゼットから探した。

少女の考えることなんて単純だから、隠れる所なんてここでしょ。と扉を開けたが誰もいなかった。

違ったか。と再び探し始めた。

姉ちゃんの部屋を一通り探したが、少女はいなく、部屋を出た。

おかしい。二階に上がったのは確かだけど、姉ちゃんの部屋にいなかったとなると。

思わず隣の私の部屋のほうを見て、まさかな。と歩き出し通り過ぎようとした時。

———ゴトン。と物音がした。案の定私の部屋の中で、私は恐る恐るドアを開けたら。いた。少女がいた。


何やら探して勝手に机の引き出しを開けていた。

「アオイ姉ちゃん。一緒にトランプで遊びたいのだ。」

唐突に言ってきた。もともと子供は好きではないからちょっとびくついてしまった。

もう関わらないようにしようと私は部屋から出ようとしていると少女がドアの前まで走ってきて。

「行かさないのだ。今日はアオイちゃんと遊びたいのだ。」

私を巻き込むなよ。と頭を搔いていた。


———まったくわがままな奴だ。姉ちゃん。ちゃんと教育しろよな。だけどこのままだと出られないので。

「分かったよ。お昼食べたらやるよ。」

そういうと少女が喜びで部屋から出て、下に降りって行った。まぁ、結果オーライだな。

結局また作ることになるとはな。チャーハン。

お昼を食べ終わり、私たちは二階に上がって私の部屋に入った。

「ババ抜きでいいな。」

少女が言う前に私が言って勝手に決めた。

「ば・ば・ぬき?」

少女はババ抜きのことは知らなかった。

仕方がないので、私が教えていくことにした。

シャッフルをして、カードを渡し、全部配り終えてルールを教えた。

「——まず、最初に同じがあった場合に私たちの間に二枚と置くことができる。」

「数字?」

「端っこについている。文字みたいなのだよ。それが同じのあるでしょ。」

「確かにあるのだ。」

「その同じ形のカードを二枚、一緒に私の置いたところに捨てて。」

「そしてジョーカー。ピエロみたいな。格好しているカードが残って持っている負けだ。これで分かったか。」

分かったなのだ。と少女は笑顔で言った。


頭いいのか。悪いのか。さっぱりだ。まぁ、あまり考えすぎないようにしよう。

そうと決まれば、ババ抜きを始めた。

互いに、同じカードを捨てまくり。私が九枚。少女は八枚までになった。

その一枚はジョーカーを持っている。

「——それじゃ、最初に君が引いて。」

少女が悩んでカードを引いた。

「あったなのだ。」

あるのか。仕方ない。

「じゃ、私のターンね。」

少女の持っているカードを一枚引いて、見てみた。

「私もあった。」

同じカードを手に取り捨てて。今度はボクなのだ。と少女は手を差し伸べた。

引いた瞬間に少女の顔が凍りついた。


これは面白い。私はにやりとそう思った。

「——ジョーカー。引いたね。」

「・・・う、うん。」

少女は顔を少し下げてから、ショックな顔をしていた。こういうのが良いんだよ。

生意気なガキを叩きのめしているのは、たまんねーな。


私は手を伸ばし、カードを引き、二枚捨てた。そして少女も引き、カードを捨てた。

勝ち負けには興味ないが。少女の絶望している顔を長くみられるようには考えるふりをする。

こうして引き合い。捨てていった結果。私は二枚、少女は三枚になった。

私の番だ。このままいけば勝って。泣きじゃくんだろうな。


そう思い、手を伸ばしてカードを引いた。

———ジョーカーだった。

顔が凍り付いた。虚無の顔になった。

少女はやけにニヤニヤしていた。私の真似か。

最後の一枚になった少女は悩んでいた。どれかがジョーカーだからだ。

私もちょっと緊張していた。———たかがトランプ。少女に負けるのはやっぱ屈辱だ。

「これなのだ。」

やっと引いた。その結果。

「あがったなのだ。」

勝負がついたしまった。


少女はぴょんぴょん飛んでいて少し騒がしい。

———ま、負けてしまった。いや。

「も、もう一度勝負しないか。」

「いいのだ。けど、少し腹減ったなのだ。」

まだ食うのかよ。と私は突っ込んだ。


たく、食いしん坊な奴め。誰に似たんだが。

まぁいいや、食わせておくか。

「お菓子持ってくるから待ってて。」

私は部屋を出て、キッチンに向かった。

「柿の種でいいか。」

食器棚に置いてあった柿の種を持っていった。少女には少し辛いが、負けた腹いせにくれてやればいい。


部屋に入り、私はふと、少女のほうを見たら。机で何かを書いていた。

もしかして。と思い、向かってみると少女は私のノートで落書きしていた。

「ナニやってんだ!。お前。」

私はノートを奪った。

真っ白のページだからよかったが。敵意をむき出して少女を見た。

少女は頬を膨らんで横に振った。怒っているんだろう。私も怒りたいわ。

「お菓子持ってきたんだから、それ食べてさっさと来い。」

私は柿の種を少女に投げて言った。

ゼッテー。ボコボコにしてやる。

柿の種を食べ終わって少女ともう一度、勝負をし始めた。

私は散らばっているカードを整え、シャッフルして、配り始めた。

お互い、同じカードを捨てて、少女は五枚、私は六枚。またジョーカーを持っている。

「それじゃ、ボクから先なのだ。」

そう言ってカードを引いた。左端から二番目のほうを。カードを見たらそのまま手札に入れた。———捨てなかったのだ。


そらそうだ。———何故なら、ジョーカーを先に引いたからだ。

少女はカードを後ろに持っていって、シャッフルして私に見せた。

私は構わず、右端のカードを引いて捨てた。これで私は四枚、少女は少し悔しそうに私のカード見た。


やっぱり、気持ちがいい。絶望した顔が。

今度は右端のほうから二番目を引いて捨てた。

三枚になって、私は今度、左端のカードを引いた。ジョーカーではなかった。

そして少女は引き捨てていった。


これからが本番だな。

私は一枚、だが引く順番が回ってきた。

まぁ、これで最後だ。ジョーカー引かなかったら、少女がぶざまに泣きじゃくってる姿が見れると思うとゾクゾクしていた。


すると少女は後ろを向いて無理にシャッフルしていた。無駄な努力だ。

その時、少女は床にバァンっと二枚、裏向きのまま置いた。

神経衰弱かよ。と思ったが。まぁ、引けばいいだけ。私は余裕の笑みを浮かべながら左のカードを強く引いた

見たところ、よく見たピエロみたいな姿をしたカード。

———ジョーカー引いてしまった。

私は最初に少女がジョーカーを引いた顔を少女がニヤニヤしていた。マネをするな。

少し落ち着いてから、後ろを向いて、シャッフルし、少女に見せた。

まだいける。そう思った。

そして少女は引いた。

「あがったなのだー。」

また負けてしまった。悔しい。よく姉ちゃんには負けるが。

子供に負けるのは屈辱くつじょく

そう思っていると、ノックがした。

「なぁ、——今日、あの子見かけなかったけど、成仏したの。」

姉ちゃんがドアを開けて部屋に入ってきた。もう少女はいなくなっていた。


そんなことはどうでもいいんだ。ちょっと泣きダメになっていると。

「あぁ、ババ抜きやっていたのか。ジョーカー持っている。というと少女に負けたのか。

アオイは人を見下すくせに勝負事しょうぶごとには向いてないからな。まぁ、日頃の行いが悪いからいい気味だと思うけど。」

腹立つ。こんなダメな姉に馬鹿にされて、私は姉ちゃんに向けてグーで殴り掛かった。

「ちょっと八つ当たりはやめろよ。」

「ウルサイ!。」


今度会ったら、必ず、倒してやる。と私はそう決意をした。

———そんな一日だった。

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