第4話 謎の女子高生、現る。

「あ、今日は新刊の発売日だ。」

私は部屋を掃除している途中、思い出した。まだ散らかっているけど。明日は学校で、帰りに買っていてもいいけど。忘れそうだから、今日買うことにした。

私服はジャージ。———学校指定のものではなく、お店で買った上下同じ模様の奴だ。

後は紺色のTシャツを着て、靴は去年買ったシューズをそのまま使っているものでボロボロ。いまどきのオシャレ女子とは遠い存在だ。

靴を履き、ドアを開けようとした時。


「どこに行くのだ。」

厄介な奴が来た。

「おや、どこに行くの。」

今度はおばあちゃんが来て、私を見るなりこう言ってきた。

「靴がボロボロだね。お小遣いあげるから、新しいの。買ってきなさい。」

一万円もらった。おつりはあげるね。とおばあちゃんが言って居間のほうに向かっていった。


ラッキー、とりあえず貯金でもして、欲しいの。出た時に買うぞ。ともらった金を財布に入れた。

ぼーっと少女は私のほうを見ていたので、私はしゃがんでこう言った。

「わたし、出かけるから、遊べないよ。遊ぶなら妹と遊んでて。」

「アオイちゃんは友達ち一緒に遊びに行ったから暇なのだ。」

チキショ。この時に限って。

私は、遊ぼう。遊ぼう。と言っている少女をどうするか考えて。

「仕方がない。ただし、静かにね。後、私に話しかけないと約束するんだったら、イイよ。」

少女は喜んで飛び跳ねていた。まったく。


ドアを開け、外に出た。

今日は晴れていて太陽がまぶしい。ほとんど家に出ていないからな。

つらい。

まぁ、昔は散歩とかやっていたから歩くのはどうってことない。

少女のほうは消えることもなく一緒に歩いていた。

そして途中まで歩いた時、少女は走って電柱のほうにしゃがみこんだ。

どーせありんこでも見つけたんだろう。可愛い所もあるもんだな。


「何、見つけたの。」

少女は手に取り私に近づけて見せた。

ゾッとした。

うねうねしていて、毛深く、最初に少女と会った公園で手についていた虫。

毛虫を見つけていた。

深呼吸をして、とっさに距離を置いて走っていった。

「どうしたのだ。」

少女を置き去りしていったが、まぁどこでも出てくるから、いいだろう。それにしても私は、虫ダメみたいだ。そう思った。

目的地に着いた。まだ少女とは出会ってないが。

私が来たのはショッピングモール。食べ物が置いてあるほかに、家電とか。服屋。本屋。ゲームセンター等。他にもあるところだ。靴屋も確かにあるはずだ。けど、となりのホームセンターもあるから先に本を買っていこうと私は本屋に向かった。

新刊のライトノベルがあるかどうか探していると。


「見つけたのだ。」

後から少女がちょっと遠い所から走ってきてそのまま、私に抱きついて転びそうなったがなんとか食い止めた。

「危ないから、ぶつかりながら突進するのやめて。」

私は少女に怒った。少女は少しへこみ。ごめんなさいのだ。と謝った。

まったく。と思っていたら、何やら周りの視線が気になった。

どうやら私のほうを見ている。そうだほかの人は少女が見えない。ということは私、一人で怒ったり、動いたりしていたってことか。

顔が真っ赤になった。いったん少女の手を握りトイレに駆け込んだ。

今日は日曜日。時間は十二時半ごろ、だから一人になるところがしかなかった。


便座に座り、一息つけた。

「どうしたのだ。ウンコもれそうなのか。」

「女の子はそんなこと言っちゃだめ。じゃなくて店に入った時は話しかけないって言ったでしょ。」

「話しかけていないのだ。」

「そうじゃなくて、———これじゃ、私が変な人だと思われちゃうだろう。」

「変な人じゃないのか。」

違うよ。と私は突っ込んだ。

「けど、アオイちゃんがいつも口癖くちぐせのように言っていたのだ。」

アオイめ、私をこんな目で見ていたのかよ。まぁ、違っていないけど。

「まぁいいや、もう一度言う。ショッピングモールとか、外に出掛けるときは抱き着いたり、登ったり、話したりしないでね。いいね。」

分かったなのだ。と少女は言った。


トイレから出て、歩き始めた時、急に手をつなぎ。

「これくらいはいいのか。」

まぁ、いいだろう。と私は握りしめて歩いた。アレ?。

「そういえば、手、洗ったのか。」

「あ、忘れてたのだ。」

手、洗ってくる。と少女はまたトイレに入った。ユウレイだからあらわなくてもいいだろうと思ったけど、私ももう一度手を洗おうと駆けて行った。

手をつなぎ、ショッピングモールから出てきて歩き出した。

「ほん。買ったのか?」

「無かったよ。」

少女は無邪気に言ってきたので私は返答した。

仕方がない。今日は帰って、明日に買うかと思っていると。

「だったら隣町に行けばいいのだ。」

何をいっているんだ。この子。


「ボクが隣町に行きたいのだ。」

駄々をこねてきて、私の服を引っ張り始めた。やめろ、服が伸びる。

「分かった。分かった。ちょっと遠くなるけど、隣町まで行こうな。」

少女は喜びながら。さっそく行くのだ。と手をつかみながら走っていった。

「ちょ、ちょっと、危ない。」

走り出そうした少女を止めた。ちょうどバスが来たので乗るのを勧めたが。

「ボクは歩きたいのだ。」

少女はかたくなに、言うこと聞かない。

なんて、わがままな子だ。

仕方がないので、私は少女の言われた通り歩くことを決意した。

はぁぁ、しんどい。

一緒に少女と歩いている時、信号が見えてきた。少女は何事のなく渡ろうとしたので止めに入った。

「どうしたのだ。早くいかないと無くなっちゃうのだ。」

「今、信号が赤になっているから少し待っていなきゃならないよ。」

「しんごう?」

「あの、光っている機械があるだろう。アレが青になったら、渡っていいよ。という合図まで待っていなきゃならないの。」

私は指をさして、説明した。


「分かったなのだ。」

少女は言うとおりに青になるまで待った。案外、理解力はあるのか。

青になった。

もう、渡っていいぞ。と私が言った瞬間。

ビクッとして少女は走りだした。人ごみをかわしながら、意外と身軽なんだな。

そう思っていたら見失ってしまった。

ヤバい。と私は少女を探しに走って追いかけていった。


「この辺りにいると思ったけど。」

私は探した場所は、神社。

角を曲がった時に、ふと、少女の後ろ姿が見えたので中に入って調べた。

探してようやく見つけた。祠の下に潜り込んで寝ていた。 ネコかよ。

よくこんなところに寝られるな。とその辺にあった小石をつかみ、ちょっと投げた。が。ぜんぜん起きない。しょうがないのではいろうとしていると。


「どうかしましたか。」

後ろから声がしたので振り返ってみると、セーラー服を着ている髪の長い、昔、懐かしそうな、謎の女子高生が話しかけてきた。

それはあまりにも美しく、見とれてしまった。どこの学校だろう。見たことないな。

「あの、何が私の顔に何かついていますか。」

「い、イヤ別に、何も。」

私は少し考えていたら、急に私の顔の前まで来たので、思わずびっくりしてしまった。


「いや、その、このくらいの少女が祠の下に潜り込んで出て来なくなって。」

そう言うと、髪を手でどかしながら言った。

「そうなんだ。ところであなたはその少女との関係は。」

突然、何言っている。この子は。

「いや、その、えーと。居候みたいな。」

半分嘘でだが。半分ほんとである。

その子は、指をさして。

「あっちでお話ししましょう。」

女子高生は先に鳥居の前に向かって行った。私は少し悩んだ。なんなんだろうこの子。ジーっと見ている。仕方がない。私はその子のほうに行った。


「ねぇ、君はあの事どうやって、一緒になったの。」

「えっっと、なんとなくというか、公園に出てきたというか。」

「どごの公園。」

「それは、私の分からない。しわない公園に来ていたのだから。」

そうなの。とその子はわたしの顔をくっ付けるように話していた。顔、近い、近い。

「そういえば、君、名前は。」

「わたし?。私の名前は山口さら。名前なんてどうでもいいの。あなたに興味あるの。」

またジーっと見て、私は少し不気味に感じた。

「わたしなんか何も特技とかないよ。」

「けど、興味あるの。」

そして目が合い、ちょっとドキッとなった。

その時。


「どうしたのだ。早くいくのだ。」

突然、少女が私の裾を引っ張って言ってきた。寝てたんじゃないのか。

目をあげ、女の子のほうを見たがいなくなっていった。

「先行っているのだ。」

少女が走って神社に出ていった。

あの子は一体、私はそう思いながら歩いて行った。

となりのショッピングモールに着いた。運動もかねてと思っていたが。やっぱりきつい。

日頃、家にばっかりいたからな。

それを引き換え、少女のほうは汗もかかずに。

「早くいくのだ。」

走っていった。ちょっと待って。

私はわき腹を抱えて、ぜいぜい、言いながら少女を追った。


「ちょっと休憩。」

私は歩くのを止めて、エスカレーターの隣にあるベンチに座った。

先ほども言ったが。今日は日曜日、家族連れが多く、にぎわっていた。

別に嫌いではないが、いつも静かに暮らしたい私にはきつい。

そう思ってひと呼吸してから、また歩き出した。


目的地の本屋に着いた。その前には少女が立っていて。

「ここにあったなのだ。」

新刊コーナー、しかもまだいっぱいあり、私は少し余裕が出てホッとした。

ラノベを買い、あとは帰るだけ、とエスカレーターのほうを向かおとした時だ。

「ねぇ君。」

ふと、耳元から声をかけられて、びっくりしてちょっとコケそうになったがなんとか耐えて振り向いた。


なんと神社に出会ったあの女子高生が私に声をかけてきた。

「またお会いしましたね。そういえば、名前聞いていませんでしたね。」

ゾッとしたが。少し息を整えて。

「か。川村美希。えーと、山口さん。」

「さらさんでいいよ。」

どっから出てきて、何し来たのか分からない。

それじゃ、また。と私はエスカレータに向かった。


「待って、少しお話したいの。フードコーナーに行きましょう。」

そう言って、私の手を握って階段に向かった。

何故、階段に行くのか。分からないが。

けど、私はさらさんに興味がある。急に出てきたり、消えたり、少女と同じことやっていたりしたから、もしかして、少女のお姉さんだったりと思った。


サービスエリアに着いた。空いてる席をさらさんが見つけて、互いに座って見つめていた。

ジーっと見つめる。さらさん。

「あ、あの。」

私は最初に言葉を発した。

「何。」

「ナニって話したいことあるでしょ。」

「あるけど、見ているだけでも落ち着くの。」

ちょっと引いたが、私はそのまましゃべり始めた。

「な、なんか飲む。私の金。じゃないけど、自販機の缶ジュースくらいだったら買ってくるよ。」

私は席を立とうとした。さらさんはいいわよ。待ってる。と何事もないように待つことになった。


やっぱり見つからない。とっさに行ってしまったから、どこにあるのか分からない。

奥のほうまで来てようやく見つかった。

お金を入れ、何にしようか考えていた。何か好きか聞いて来ればよかった。

とりあえずコーラを二本、買って持っていこうとした時。


「何しているのだ。」

突如、少女が出てきて私に突進してきて抱きついてきた。

「どこに行っていたんだよ。急にいなくなって。」

まぁ、いなくなるのはいつものことだが。

少女はほっぺをプクーとふくらみ、ふてくされていた。

「そうだ。さらさんが待たせているから、一緒に行くか。」

そう言ったら、少女は喜んで一緒について行った。そしてフードコーナーに着いたが。

さらさんがいなくなっていた。

座っていた席には、ほかの家族が座っていたので私は茫然としていた。

「どこにいるのだ。」

少女は言った。

私は我に返り、———帰ろうか。と少女に向かって言った。

ショッピングモールから出て、家に向かって帰った。距離があるが、もうどうでもよくなったので歩いていくことにした。

少女は先ほど買ったコーラを飲んでいた。おいしそうに飲んでやがる。

ゲップをして、その後こう言った。


「そういえば、さらさんって誰なのだ。」

女の子だよ。と私は言った。

「年は———私と一緒で今ではそんなに見ないようなセーラー服を着ている髪のきれいな人かな。美人だった。」

私はその子を思い出したらちょっとニヤつき、ハッとして少女を見た。

少女は少し考えて。

「頭おかしくなったじゃない。」

そう言って走り出してどっかに行ってしまった。


最近、アオイに似てきたな。と私は少しがっかりした。———けど、やっぱりあの子は一体何者なんだろう。

家に着いた。入ろうと思ったとき。

「あぁ、くつ買うの忘れた。」

また出かければいいのだ。と少女はリビングから顔出して言った。帰ってきていたのかよ。

まぁ、そうしようか。と私は思って洗面所に行った。

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