第2話 小林理沙
「そっか。姉ちゃんはロリコンで小さいもの好きなのは分かっていたけど、連れてくるとは思わなかったよ。」
「違うから。私、知らないし、イヤ、知っているけど、それにロリコンでもないから。」
テンパってしまった。私は状況を説明しようとしたら、アオイがワザと悲しそうな顔をしながら言ってきた。
「良いんだ。良いんだよ。刑務所に入って、まずい飯を食っている姿を想像したら、涙が出るくらい笑いがこみあげてくるから、せいぜい頑張れ。」
本当にヒドイ妹だ。私が死んだら絶対に化けて呪ってやるから覚えておけよ。死なないけど。
「きみ、名前は。」
私は少女くらいまでしゃがみ言ってみた。
「な・ま・え?」
「そう名前。」
「ボクはボクなのだ。」
話が通じなかった。だから子供は苦手だ。
学校行ってくるから、さっさと警察に行って自首するんだな。と妹が言ってそそくさと立ち去った。
もう準備していたのか。
この子どうしようと思っていると、とりあえず、お母さんに聞いてみよう。
いつもなら仕事疲れで学校に行くときには寝ているが、たまに早く起きているので、私は階段から降りてダイニングを見た。
やはり起きていた。コーヒー飲みながらテレビを見ている。
「おぉ、やっと起きたか。アオイはもう学校に行ったからあんたも行けよ。」
「お母さん。あの。その。」
「どうした。罪を犯したような顔をして。」
アオイと同じことを言っている。妹の性格は母譲りかよ。
私のほうを見ていると少女と目が合った。
気づいたかと思っていると母さんは私のほうを向き直して。
「なに。ぼーっと突っ立っているんだ。のんびりなのもいいけど、少しは焦った方がいいぞ。」
「えっ。見えないの。」
「何が。」
——いや、なんでもない。とちょっと考え込んで話を止めた。
対象の人にしか見えないのか。大人には見えないのか。なんか子供しか見えないお化けみたいだな。あ、あの子、お化けか。
朝食を食べ終わり、学校に行く準備をし始めた。
昨日やっとけばよかった。と後悔している時。
「ねぇ、一緒に遊ぼうなのだ。」
「ごめん。今日は学校だから遊べないんだ。」
「がっこう。?」
「行かないと先生に怒られるし、妹にも馬鹿にされるから行くの。成績もヤバいし。」
私は遊べない理由を言って部屋を出た。
少女はポカーンとしながら部屋の中立ち止まっていた。
ちゃんと理解したのかな。まぁいいや、急がなきゃ。
※
ギリギリだった。何とか間に合った。
私は汗をかきながら教室に入り、一限目の準備をしていた。
窓のほうを見て少女がいないかを確認。
来ていない。私は自由になった気分になった。気持ちがいいや。
「おはよう。」
理沙さんが挨拶してくれた。私もおはよう。と返した。
「だいじょうぶ。顔色悪いけど、体調でも悪いの。」
「ちょっと走っていきが切れただけだよ。それに体調悪かったら、学校に来ないよ。」
それもそうね。と理沙さんはそう言って、またね。と自分の席に着いた。
授業が始まるまで、ぼーっと窓のほうを見てる時だ。
「———遊ぼうなのだ。」
少女の声がして振り返って周りを見た。少女の姿はなかった。
気のせいか。
そう思って、もう一度窓を見てぼーっとした。その時だった。
「遊ぼうなのだ。」
突然、耳元で叫んだので驚いてしまい、変な声、出してしまった。恥ずかしい。
少女は無邪気にあそぼ。あそぼ。と言っているが、みんなが私のほうを不思議そうに見ているのが気になるから走って教室を出た。
そのまま少女を置いてきたけど、どっかで止まれば勝手に出てくるだろう。
※
今、学校の屋上の入り口前に来て入り。走ったせいで息が切れかかっている。
———それもそのはず少女がいきなり学校にいるからだ。
「何やっているの、ここに来ちゃだめでしょ。」
やはりどこからか少女が出てきたので説教してやった。私だって怒るときは怒るぞ。
「だって、いてもつまらないだもん。」
ふてくされたように少女が言った。
「だからって学校に来ることないでしょ。そろそろ授業とか始まるし。」
「ボクも授業に出てみたいのだ。」
帰って。と私はちょっと睨んでから言った。
反省している少女は何かひらめいた。
「だったらボク、学校を回ってくるのだ。」
そう言ったら、少女は下に降りてどっかに行ってしまった。
同時にチャイムが鳴り、私はあわてて教室に向かった。
まだ先生が来ていなかった。なんとか間に合って席に着いた。
まったく今日はなんて日だ。
授業が始まり、教室は静まった。
先生の話を聞いていたら眠くなってきた。
私はバレないように腕を囲み、顔を下を向いて寝た。
目をつぶり暇を持て余していると、廊下から走ってくる足音がした。
少し目を開けてのぞいて見て驚いた。
「ここが廊下なのか。」
少女は走って廊下のほうに行ったり来たりしていた。
だがよく見ると、教室の後ろ側を通り過ぎた同時に私たちの教室の前から出てきたのだ。それも何度もやっているのに先生やクラスメイトたちが微動だにせずに授業をしていた。
———おかしい。そう思いもう一度寝ていたら。
「なんで、廊下は誰もいないのだ。」
また来てキョロキョロし始めた。たぶん気づかれないだろう。そう思っていた時。
「おい、川村、授業聞いているのか。ここの問題解いてみろ。」
先生に指されて私は分かりませんと言い、みんなに笑われながら座った。
ちょっと恥ずかしかったけど、それより少女のほうが気になる。授業なんてやってられるかと廊下を見たが。
一瞬目を離したときにはいなくなっていた。
※
昼休みのチャイムが鳴り。
みんなは弁当を持ってくるか。購買でパン、買ってくる人と分かれていた。
私は弁当持参だ。お金使いたくないから。
作ってくれるのはおばあちゃんが多いがたまに妹が自分の含めて作ってくれるらしい。嫌々で。
お母さんは基本作らない。
仕事で忙しいとか、面倒くさいとかで、自分のものは自分で作れ。と言う人なのだ。
「ねぇ、ねぇ、もう授業終わったなら遊ぼうなのだ。」
少女が言っていることを無視して席は外して食べやすい所を探した。
教室で食べると何しでかすか分からない。
なるべく人とか通ってこない場所にしなきゃ。
※
良い所が見つからない。
屋上前は先客がいたし、あと人がいないのは。と探していたら、あるところを思い出し。
私は急いで目的の場所に向かった。昼休みがなくなっちゃう。
たどり着いたのは、運動用のボールや体育祭で使うものが入っている校舎裏の倉庫だ。
ちょっと暗く、じめじめして誰も近寄らない。
最適な場所である。
私もたまに来ている。
裏側に回り段差になっているところに座った。
弁当を広げて食べ始めようとしていると少女がジーっとよだれを垂らしながら見つめていた。
「食べたいのか。」
少女はめちゃくちゃ、上下にうなずいた。
仕方なくおかずのたまごを差し出してみた。
それを見た少女は喜びながら口を大きく開けた。
その時、少女が目を開け、硬直した。
「ど、どうしたの。」
私は少女に質問してみた。
けど、少女のほうはおびえながら走ってどっか消えてしまった。
何かを察したのか。そう思って逃げた少女を見送ってら視線がした。
まさか別の幽霊がいるのか。とおそるおそる振り向いたら。
端のほうに理沙さんがのぞき見していた。
「えっ、小林さん」
「あ、ごめんね。追ってきたんじゃないよ。たまたまいつもの場所に来たら美希さんがいたの。」
戸惑いながら理沙さんが言った。
話を聞いて少しぼーっとしていて、あ、っと思いついて顔真っ赤になった。
少女が見えてないってことは私ひとりでブツブツしゃべっていたことになるじゃん。しかも理沙さんに見られるなんて恥ずかしい。
気持ち悪がられただろうな。
「と、となり座っていい。」
去っていくと思っていたけど意外なことに驚いた。
まぁ、昼休みが少ないから遠慮して座ろうとしたんだろう。
どうぞ。と私は少し動いて理沙さんにスペースに明け渡した。
「ねぇ、美希さんもこういう場所好きなの。」
「こういう場所。」
「暗くてジメジメしているの。」
もしかして小林さんも。と私は不可思議な質問にちょっと聞いてみた。
「まぁ、人気がなくて静かなところはよく来るけど。」
「私もよく来るの。何か出そうで感じがするのがいいの。さっきの少女もそうでしょ。」
ドキッと驚き、続けて理沙さんが言った。
「けど、初めて見たよ。ユウレイ。」
「えっ、見たことないの。」
「感じたことはあるの。ホラ、誰もいない夜の学校とか。明かりが照らしていない病院とか。車とか一つも通ってこない静かな道路。そして
キョトンとした私は理沙さんが言っていることを聞いて驚愕した。
———つまり小林理沙さんってヤバい人なんじゃないの。
「美希さん、一限目から廊下、チラチラ見ていたでしょ。」
「う、うん見ていたよ。」
「その時、私も少女が走っている姿が見えていたから驚いたの。勝手に幽霊っておどろおどろしい存在だと思っていたけど、こんなにかわいい子がいるとは思わなかった。」
理沙さんが興奮していると急に私に振りかけてこう言った。
「美希さん、お友達になってもいい。」
理沙さんはスマホを出して連絡先を聞いてきた。
「ご、ごめん。今、スマホ持ってない。」
「連絡とかどうしているの。」
テレホンカードがあるから。と財布から出して見せた。
「それじゃ、持ってきたときでいいから。今度遊びましょ。」
しゃべりながら弁当を食べ終わって。また授業で。と手を振って教室に戻っていった。
——茫然としていた。
そういえば、少女はどこに行ったんだ。と思っていたら帰ってきた。
怯えていたけど私の目を見て。
「もう帰っていったのか。」
あぁ、帰ったよ。と私が言った。
「あの人は恐ろしかったなのだ。」
※
私はゲームをしながら今日のこと思い出して妹に聞いてみようとしたら、ちょうど部屋に入ってきた。
勝手に入ってくんな。と睨んだが、妹もにらみ返し。
「何。ニヤニヤしてるんだよ。気持ち悪い。」
「私が貸したマンガを姉ちゃんが返してないから取りに来ただけだけど、まさかまた幼女を。」
「さらってないわ。私をなんだと思っているんだ。」
ロリコン。と妹がちょっとへらへらしながら言った。コノヤロー。
「冗談だよ。勝手に入って悪かったが、なんかいいことでもあったのかなっと思っただけだよ。」
「マジで、顔に出ていたのかよ。まぁ、友達ができたって言うか。」
そういった瞬間。妹が急に動きを止め、私のほうを振り向いた。驚いた顔しながら。
「人を見下し、ブツブツ人形と遊んでいたやつが、二度とできないと思っていた。」
「見下しているのお前だろ。」
スキンシップだよ。と妹が腰に手に置き、私のほうを見下した。
いつもの光景だが、やっぱり腹立つ。
「けど、よく友達になったよな。私だったら切り捨てているのに。」
「よく分からないけど、霊感があって、少女のことが気に入っちゃったみたいで。」
ねぇ。と言って少女を振り向いたが、震えていた。
「本当にその人、大丈夫なの。姉ちゃん騙されてない。」
「イヤ、普通にいい人だよ。何故か少女が怯えてるんだよ。」
そう言ったら、突然、少女が口を動き出し。
「———いやらしかったなのだ。出会ったときに変な視線がして、ゾッとしたのだと、思って逃げたのだ。」
まったくだな。変な奴と変な奴は引き寄せるもんだな。気をつけよ。と妹は少女の頭をポン。と手に置いて私のほう見て言った。
変な奴って私のことかよ。
「けど、理沙さんは頭がよくて、優しいんだよ。ロリコン。なわけないよ。」
姉ちゃん、人見る目ないね。と妹がワザと泣いているすぶりをして言った。たぶん笑っているだろうな。
そんなこんなで一時期の間では、理沙さんと私がヘンタイ扱いになっていた。妹だけだけど。
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