戦争の停戦。そして、ヒロインの帰還
「アミュレット、いつまで油を売っている?」
ガルドが話し込んでいるアミュレットに
「あ、申し訳ありません。大隊長。じゃ、リーゲンダ隊長、リリィさん、また後で」
そう言って、持ち場に戻って行った。
「もうすぐ殿下がこちらに来られるそうだ。破壊した大聖堂を確認しに来られる」
「そうか」
私は答えた。
「帝国政府の方は、片が付いたんだな」
「そう報告を受けている。まあ、終戦とはいかなかったが、停戦となった。今後の事は、殿下と帝国政府の主だった者達との話し合いになる」
「フェイスも本当に大胆だな。殿下自ら敵の奥地深くに行って、何かあったら皇国も大変だろうに」
「まあな。しかし、殿下の良いところでもある。我らはその行動に制約が掛からないよう、日々鍛錬を積むだけだ」
「そうだな。私達も」
と答える私。
「親方殿とリリィ殿。今後も頼りにしている。よろしく頼む」
「ガルド殿、こちらこそよろしく頼む」
親方様が返事をされた。
綺麗な赤い夕陽が私達と廃墟となった大聖堂の長い影を映し出していた。
今までは、これから暗殺の仕事が始まることが多かった。
今は、戦いが終わってゆっくりしようかと言える時間となった。
指令を受け取った時に外観だけ見た大聖堂は、凄く巨大な建物の様に感じた。
その巨大に見えた建物が、今はバラバラになって地面に破片として山なりになっていた。
日も暮れ、私達は大聖堂近くにある宿舎で休むことになった。
そこに、ようやくフェイスがやって来た。
「フェイス殿下が来られました!」
夕食を終えてくつろいでいた皆は、整列をしフェイスを迎えた。
手を軽く上げ、偉そうにやってくるフェイス。
(やっぱり、王子様だったんだな。フェイスって)
いや、私が礼儀知らずなだけなのかな?
私も親方様と一緒に整列し、フェイスを迎えた。
「あれ? リリィちゃん。そんな畏まって。親方様の前だからカッコつけてる?」
馬を降りるなり、そんな事を言ってくるフェイス。
「こ、こ、こ……。いえ、家臣ですので」
(やばい。思わず、この野郎と言いそうになった。よく我慢した私)
「ハハハ。からかってごめんよ。じゃ、話が出来る部屋に入ろうか?」
「はい」
フェイス、ガルド、アミュレットら第壱、第弐隊長。
そして、親方様、私が集められた。
「皆さん、ご苦労様でした。やっと一区切りつきましたね。終戦とまでは出来なかったけど、何とか停戦にまで話は付けてきたよ」
「殿下。しばらくは、殿下はこちらに滞在されますか?」
ガルドが質問した。
「うん。そうなる。仮調印だからね。ガルドと第壱、第弐部隊は、一部をここに残し、私と一緒に帝国首都へ向かって欲しい。国境の部隊から一時的に増援も要請している。しばらくしたら、交代要員として本国からも駐留部隊が派遣されてくるだろう」
「畏まりました」
と、答えるガルド。
「親方様とリリィちゃんは、明日の朝には帰るで良いよね。今は流石にいずらいだろうし」
「配慮して頂き感謝いたします」
親方様が答えた。
「リリィちゃんも、その方が良いよね?」
「うん」
「いい返事だ」
フェイスがニッコリとしながら言う。
そして。
「早く、
と余計な一言をいうフェイス。
「別に、そんなわけは無いのだ」
「いやいや、ローズにも終わったよって君の顔を見せてあげて欲しい。心配で心配で、自分も槍とか剣とか持って駆けつけようとしたらしいし。それを止めてた
「うん。わかった」
「フェイス殿下、帝国の者達は、素直に停戦を受け入れていましたかな?」
親方様が質問した。
「うん。かなり悲惨な戦いになるかもと覚悟して来たんだけどね。皇帝不在というのが、そうとうショックの様だった。逆に、皇国としては皇太子の私が来てたから、すんなり言う事聞いてくれた感じかな?」
「なるほど。殿下が直接来られて正解だったですな」
「うん。親方様のアドバイスもあったしね。話の分かる貴族も直ぐに見つけられてたから助かりましたよ」
「いえ、お役に立てれば何よりです」
「リリィさん。本当に良かったね」
フェイスがしみじみと私に言った。
「うん。まだ不明な所もあるけど、前のようなことはもうないだろうな」
「うん。よかった」
フェイスもホッとした顔をしていた。
翌朝、フェイス達一行は、再び帝国首都の城に向かって行った。
部隊の一部は、このまま待機する。
国境付近を守っていた部隊の一部が、増援としてやって来ていた。
日が昇るよりもずっと早い時に、こちらへ向かって来てたらしい。
私と親方様は、それと入れ替わるように皇国へ戻る。
「あ、リリィ様だ!」
国境付近に他部隊の何人かが、私を見かけ、大喜びで声をかけてきた。
「う、うむ」
少しひきつった笑顔で私は答えた。
だって、色々世話になったし。
「お前も、上手に愛想笑いが出来るようになったのだな」
親方様にからかわれる。
「お、親方様。からかわないでください。恥ずかしいです」
「そうか。では帰るぞ!」
親方様と私は、馬を走らせた。
後ろから、部隊の皆が手を振ってくれていた。
私は、それを見ながら軽く手を振り馬を走らせる。
(落ち着いたら、城に登城しないとけいないな。皆にも礼を言わないと)
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