大聖堂内の戦い(2)
「降りて来い! アルキナ!」
そう言った瞬間、アルキナは私の後ろから切りかかって来た。
私は後ろを振り向くと同時に、左の剣でそれを受けた。
ガギギィ!
剣が、がっしりと交差するように重なる。
(こっちは、クローンか?)
すぐさま切り返そうとするが、ひょいっひょいっと中に階段を飛び上がるように上がっていく。
(くそぅ。 足元に現れる円陣のようなものが足場になっている)
高みから二人のアルキナが、ニヤッとした顔で笑い私を見下ろしている。
(ならば!)
床の魔法陣を避けながら中心を通り越して淵に向かって走る。
そして、その勢いで壁を駆け上がる。
足をそろえてしっかり踏みしめて、横壁から垂直に飛び掛かっていった。
だが、またしても私の剣は虚しく空を切った。
二人のアルキナには、ヒョイヒョイと空中に出来た円陣を飛び移って逃げられてしまった。
ダンッ!
少し体を捻り魔法陣を避け、大きな音を立てて着地する。
アルキナ達を見上げた時、一人のアルキナがヒョイと飛び降りた。
来るかと思って身構えたが、そのアルキナは、スッと中に消えた。
「?」
背後に殺気を感じ、瞬時に体を回転させアルキナの剣を受けた。
「こ、こいつ!」
そして、また、フッと魔法陣の中に消えていく。
(この大聖堂の中にいる限り、アルキナは私よりも有利な条件で戦えることになるな)
「ふぅぅ」
私は息をスッと短めに吸い、「ふぅー」と少し長めに、細く長く息を吐いた。
そして、心静かに沈めていく。
ゆっくりと、ゆっくりと。
あらゆるものの揺らぎを感じろ。
心と神経を研ぎ澄ませ。
アルキナは、そこに居る。
「フンッ!」
宙に浮いていた右手アルキナの所に一気に飛び上がり下から切り上げる。
しかし、スッと消える。
左手のアルキナが足場にしている魔法陣を踏み台にし、斜め下に飛んでった。
わずかの間だが、アルキナが消えても残っているのだ。
それを利用した。
クローンの方には興味はない!
先に倒すべきは、アルキナ本人!
ガキッ!
私とアルキナの剣が、また激しくぶつかった。
と同時に、片方の剣でアルキナの胴を横に切り割こうと振り切った。
「グゥッ!」
呻き声と同時に、吹っ飛んでいくアルキナ。
かろうじて剣で受けたものの、振りかぶった私の剣の勢いで、アルキナ本人は大聖堂の横壁にたたきつけられる。
私は着地して、間髪を入れずアルキナ本人に飛び掛かった。
しかし。
「!」
気が付いた時には、大聖堂の天井が私の真正面に見えていた。
爆音と共に、私の体は天井に叩きつけられていたのだ。
私が真上へ来た時に、その魔法陣は火薬にも似た爆発をした。
それで私は天井に吹き飛ばされた。
「ガァッ!」
今度は、私が呻き声を上げる番となった。
そのまま、魔法陣の上に落ちた。
(円陣の上は、まずい)
直ぐに、陣から体をずらす。
幸運にも、その魔法陣は攻撃や魔法が仕込まれてはいなかった。
仕込まれていたら、危なかった。
「はぁ。はぁ。はぁ。はぁ」
激痛で、肩で息をするようになってしまった。
口の中を切ってしまい、血が少しこぼれてしまう。
(なんて威力なのだ? あれは、以前皇国の首都を爆破しようとした時に使った魔法陣と同じものか? 空中にいたせいもあるけど、避けられなかった。あれを、こんな小さな規模で作るなんて)
侮っていた。
剣技の差があるからと、甘く見ていた。
用心はしていたが、これほど使いこなして戦ってくるとは。
それが出来るのも、この大聖堂が機能しているお陰だと思うけど。
「リリィ。まだ、君は僕と戦うつもりかい?」
アルキナが話し出した。
「何?」
「やっぱり、君は思った通り強いね。ずっと見ていた。こんな集団だから、声なんかかけられなかったけれど。そんな気も無かったけど」
(何を言ってるんだ?)
「もし、このまま
「……。な、何?」
(行けるのか? あの人の住んでいた世界に。本当に?)
だが、私は直ぐに思い直した。
(信じちゃ駄目だ。呼んでくるのはともかく、送り出すのは行き先が不安定になりがちだから無理じゃないかと聞いている。どこへ飛ばされるかも分からないのに。話を聞くな!)
「信じられないって顔してるね。どこから人を呼ぶか? どこへ人を送り出すか? それは、術者の技量にかかわってくる。強く対象か場所をイメージすれば、送り出すことも呼んでくることも可能なんだよ。わかるかなぁ?」
「ざ、ざれ事を!」
「現にさぁ。2度も、3度も成功してるよねぇ。
「それは、運が良かっただけだろう? 安全など、どこに保証がある?」
「安全なら、行ってみたいかい?」
「安全?」
「行ってみたいだろう? 帰したいだろう?
そして、畳みかけるように言ってくる人間のアルキナ。
「君は、
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