伯爵令嬢ナビ婦人 その弐
「リリィ様、一刻も早く大聖堂に向かわなければならないところを御引止めしてしまって申し訳ありません。物資を届けるに当たって皇国内の戦闘状況など情報を頂きたいのですか?」
「ナビ。自分で持っていくつもりなのか?」
「はい。その覚悟で参りました」
流石、帝国への潜入工作員だっただけある。
ただの貴族令嬢では、ここまでしないだろう。
あ、例外がいたな。
ローズだ。
あいつなら、臣下が止めるのも聞かずに動き回ってるはずだ。
ローズの事を思い出して、クスッっと笑ってしまった。
「どうされましたか?」
「あ、ナビ、済まない。どこかのお姫様の事思い出してな」
「ああ、ローズ様の事ですね?」
「何故わかるのだ?」
「私も皇国の人間でしたので。私以上に活発に動きたがる方と言われますと、ローズ皇太子妃殿下しかいらっしゃらいません」
とナビは言った。
「そう言えば、大事な事を忘れておりました。殿下から城内の様子を書いた手紙を頂いたのですが、
「まったく。ローズは……」
そう言いながら、必死になってローズを止めている我が旦那様の様子を想像すると、思わずホッコリしてしまった。
だからあれだけ異世界の変な事、教えないでって言ったのに。
「フェイス皇太子殿下が、魅かれる理由がわかりますね。
「だから、言ったのだ。ローズみたいなのに変な事教えるなって」
「リリィ様やルナ様が活躍される様子も、刺激になってしまわれたようで……」
ナビは、少し困った顔をしながらも、少し羨ましそうな顔をしていた。
「ナビ。お前も、本当は剣を持って戦いたいとか思っているのか?」
すると、軽く首を振って、ナビは否定した。
「いいえ、胸を患っておりまして。あまり激しい活動はできないのです」
「そうか、悪い事を聞いたな」
「いいえ。それに、私の性分ではありませんので。そんな性格だったら、お医者様の所に嫁ぎません。これでも、古風なのです」
「そうか、まあ、変わってる人をばかり見ない方が良いな。自分でも思うぞ」
「フフフ。でも、リリィ様のような女性に、男性の方々も憧れるようですよ」
「生まれた時から、こうだった。選べなかっただけだ。私だって、ナビや友達のメイの様に育ってたら、そんなふうになってたかもな。まあ、わからないけど」
「手紙を受け取った時点ですが、そこに書いてある通り、帝国軍の動きを制するために、帝国領内に入っていったそうです。ガルド様も恐らく、一緒に行動されていると思います」
「そうか、早いな」
「こんなことが出来るのも、リリィ様が親方様達を連れてきて下さったからです。国内の防備をお任せ出来て、本当にありがたいです」
ナビに褒められてしまった。
「でも、親方様が来てくださるとは、私も予想してなかったぞ。お叱りを受けるとばかり思っていたからな」
「確かにそうですね」
ナビと話をしていると、補充について手配をしていたルナがやってきた。
「姉さま。どこに送ったかよいかの指示は、だいたい済んだよ。奥方様だっけ? 他に用事ある?」
「いえ、十分です。大変助かりました」
「本当にあなた達で運んで行ってくれるの? 戦闘になったら困らない?」
「その為のリリィ様、ルナ様ですよね。お二人が引付けて下さっていれば、きっと大丈夫と思っております」
「だってさ。姉さま」
とルナ。
「まあ、第参部隊の子達でも大変だから、そうなるからな」
と私は答えた。
「私達の部隊が出会えば全滅ですので、どうぞよろしく」
と、ニコリ笑みを浮かべてナビは言った。
「では、負けヒロインは、ここで去りますね?」
「ん? 負けヒロインって何だ?」
「ご存じないですか?
「そうなのか?」
(また、
「戦争が終わりましたら、是非我が国においで下さい」
「そうか、お前の国の屋敷の近くに海はあるのか?」
「海ですか? はい、御座います」
「じゃ、今度、
「本当ですか? では、楽しみに待っておりますね」
ナビとはそこで分かれた。
いつアルキナ達の気が変わって、無差別攻撃してくるかわからない。
そんな状況でも、ナビは補給部隊を率いて皇国領内の各地に向かって行ってくれた。
ナビの祖国だからというものあるかもしれないけど、フェイスや
後で二人を、とっちめてやらないといけないな。
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