ここだけの話
私と
皆が退室した後、親方様が突拍子もない事を話された。
「これは私の感であるが、アルキナは帝国皇帝本人と深く関わりがある可能性がある。あるいは本人の可能性も」
「え?」
これには、フェイスも驚く。
「ちょっと待ってください。親方様。それは、本当にそう思うのですか?」
アミュレットが尋ねた。
「確信はない。リリィを襲った
親方様が答える。
「うーん。もしそうなら、帝国皇帝不在にも説明が付く感じするけど。うーん」
と、悩むフェイス。
合点がいかない私とオルトとルナの三人は、互いに顔を見合わせた。
「私、帝国皇帝自身か息子かクローンかわかんないけど、そんな奴にしつこくされてたの?」
それを聞いたルナが、クスッと笑った。
「じゃ、帝国皇帝が
「こら! ルナ! 変なこと言うな!」
と私は怒るが、ルナはテテヘと笑っていて効果がない。
「じゃ、リリィを私の所に刺客として差し向けて、自決までさせようとしたのは何故ですか?」
だって、大事な人だったら、そんなことしないのが普通なのだから。
「本当に、自決させようとまで考えてはいなかったかもしれぬ。私が受けた指令は『この異世界人を消せ。この男に深く関わった者も含めて、全ての人間を』だ。『消せ』と書いてあって、『殺せ』とは書いてなかった。我らにとっては、『消す』は『殺せ』と同意義ともうけとるのでな。使命を果たした後、自決しようとするリリィを騙して引き留めようと考えていたかもしれぬ」
「え? そこまでして……」
旦那様の
「
「いいえ、親方様。そのように信頼して頂けて嬉しいです」
「同じ失うのなら、他で生き延びてくれれば良いと考えた。リリィならば、仮に刺客が大量に来ても切り抜けるだろうからな。ところが、現状は、もっと良い方向に傾いた。
「お、親方様……」
私は、うれしくて泣きそうになった。
ずっと、心配してくださったのだ。
使命の為になら、死体すらも残してはいけない家業だ。
いちいち、配下の者の生死を気にしていては身が持たない。
それでも、親方様は、最善を模索してくださっていた。
「あの、実は僕。こちらへ来る前に、夢でリリィに出会っていたんです」
と、
「え? そうなの?」
初めて聞く、その話にビックリする私。
「う、うん」
と頷く
フェイスを見ると、ペロッと舌をだしていた。
「二人とも、何で教えてくれないの」
私は、ちょっとご立腹になった。
「だって、恥ずかしいから……」
と、
クスックスっと、フェイスとルナが笑った。
「まあ、その運命的な出会いのお陰で、この世界も、この皇国も救われて行くわけだ。引き合わせた奴には感謝せねばならないところだな」
ガルドが、いつもの仏頂面で言う。
「それは同時に、アルキナと思われる帝国皇帝に恨まれることになったということでしょうか?」
今まで静かにしていたオルトが尋ねた。
「そうだろうな。私の感が正しければな」
と、答える親方様。
(ええ? じゃ、この混乱のほとんどは私とあいつのせいじゃん、この戦争も)
ああ、本当にあいつ(アルキナ)嫌い! 大っ嫌い!
「あいつ、絶対ぶっ飛ばしてやる!」
私が半ギレ気味に言うと、フェイスとルナがお腹を抱えて笑った。
「あはは。姉さま。怖い――」
とルナ。
「まあ、これで
情報戦を仕掛けたフェイスとしても、少しは肩の荷が下りたのかな?
まだ、あいつが帝国皇帝の同一人物と決まったわけじゃないけど、そうなるのかな?
「あの、帝国皇帝なのか、アルキナなのかわからないですけど、どうしてこのような事を?」
弐番隊隊長が質問した。
「帝国皇帝は、不老不死を模索していたのかもしれぬ」
「それは! どうして、そう思わるのでしょうか?」
「あの
「うわっ、キモッ!」
ルナが気味悪がった。
「ルナ。思ったことを直ぐ口にするのやめなさい」
私は、ルナを叱った。
「では、クローン一人、
弐番隊隊長として、当然気になることろだろう。
「その可能性で、動かざるをえないだろうな」
親方様は、このように答えられた。
「まあ、全部倒せば済むから問題ないのでは?」
いつもの様にオルトが、冷静に答える。
「私が皇国に再び戻って来た事が、帝国がリンド皇国に対して抹殺指令や宣戦布告を急に出し始めた理由のひとつかもしれない。もはや刺客程度では、目的を果たせないと」
「帝国皇帝も、そうとう余裕ないようですな」
と、ガルドが感想を述べた。
「帝国皇帝様の横恋慕かぁ?」
ルナが、感想を述べる。
「ちょっと、ルナ! さっきから……」
私が言いかけると、ルナはアミュレットの後ろに逃げて隠てしまう。
「そのクローンも不老不死も、あまりうまくいっていないのではないか。リリィ殿に固執するのは、単に横恋慕だけなのだろう」
と、ガルド。
それを聞いた
「あ、あの。そのクローン魔法と不老不死の魔法を成功させるのに、リリィが必要になったってことはないですよね?」
それを聞いて、みんなの視線が私に集中した。
「え? 私、魔法なんて使えないよ」
みんなわかっていることだが、視線に耐えられなくて、つい変なことを言ってしまった。
みんなの表情が、「いや、そうじゃないよ」って顔になった。
ちょっと悔しい。
「親方様。姉様が帝国に居続けていたら、帝国皇帝のクローンか不老不死を実現する材料にされていたかも。ということですか?」
オルトが、尋ねる。
(オルト。材料って言い方酷くないか?)
私は、ムッとした。
「ざ、材料? ひとりの人間を」
ほらっ、オルトが材料なんて言い方するから
「それは、かもしれないと言うだけだな。だが、ここまで帝国皇帝が焦る理由としては十分だがな」
オルトの問いに、親方様が答えた。
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