作戦概要
「では、作戦の概要をお伝えします」
ここからは、皇太子特殊守備隊一番隊隊長のアミュレットが話す。
「ガルド大隊長の話された通りの方針です。皇太子特殊守備隊一番隊と二番隊は、大聖堂破壊に専念する。軍との戦闘も意識しているからであります。帝国深くに入り込むのでかなりの危険が伴う。こちらは、転移魔法で送られてくる敵に体力を削り取られていくことが予想されるので時間との勝負です。くれぐれも遅れを取ることのないように。皇国内の防衛は、軍だけでは手が足りない。基本的に帝国政府の対正規軍として振り向けられるためです。国内の防御については、リーゲンダ殿から説明してくださいます。リーゲンダ殿、よろしくお願いいたします」
皆の前で話をするアミュレットのかっこ良い姿を見て、ルナがコッソリ手を振っていた。
だが、アミュレットには軽く無視される。
がっかりする、ルナ。
周りの子達は、その様子を見てクスクスと笑っている。
「では、ここからは、私が説明させていただく」
来た!
我らの親方様だ!
どんな無茶な御指示でも私達頑張ります!
「今回の我らの戦いで、大きく不利な点がひとつある」
と親方様が言う。
「それは、
親方様は、
「僕、ですか?」
みんなの視線が
「そうだ。今回の敵は、大聖堂で作られてくるクローンと
その話を聞いた時、
また、自分の知識が悪い方向に使われてしまったと思ってるのかな?
私は、勇気づけようと
「幸いにして、我らの特殊守備隊の面々は、この違いをかろうじて判別できることがわかっている。詳しくは、別に説目した通りだ。わずかな動きの奇妙な差を瞬時に見極め、これに対処せよ。
いよいろ、クローンについての話が始まった。
「クローンのアルキナについてだ。簡単に言えばアルキナ本人の複製であるが、要するに人間だ。切れば血が出る、そして死ぬ」
親方様は、ここでしばらく間を取った。
「このアルキナ・クローンは、殺してはならない。殺せば、
一同が、騒めいた。
アルキナ・
これが、リンド皇国の軍に向かっていったら被害甚大だ。
「このアルキナ・クローンについては、皇太子特殊守備隊三番隊のメンバーズが全て引き受ける」
壱番隊、弐番隊の隊員達が、どよめいた。
「大丈夫なんですか?
弐番隊隊長が溜まらず発言した。
「問題ない。各隊員は、アルキナ・クローンを見つけたら逃げよ。そして、我らに引き受けさせるようにしてほしい。どうしても戦闘が避けられそうにないときは、3人以上でかかること。その最低条件が整わない時は、とにかく逃げ回れ」
「逃げろ! ですか?」
「そうだ。恥ではない。参番隊の一般隊員ですら、一人では勝てない相手なのだ。その強さは尋常ではない」
そう親方様が説明し終わると、ルナが話に割り込んできた。
「親方様。私からも説明してもよろしいでしょうか?」
「構わぬ。言ってみろ」
「えーと、皆リリィ姉さまの強さは知ってるよね。それで説明するとね」
(ん? 何で私の強さが話に出てくるのだ?)
「えーと、アルキナ・本人が、十分の九リリィ姉さま。アルキナ・クローンが、十分の七リリィ姉さま。アルキナ・
「お――!」
その説明でクローンと
(まったく、ルナの奴め。いくらなんでも、私を単位にしなくても)
誰もいない場だったら、その場でルナを叱っていたが、ぐっと堪えた。
えらいぞ、私。
フェイスが、後ろでお腹を抱えてコッソリ笑っていた。
(わ、笑うなフェイス!)
しかし、親方様とガルドだけは、笑っていない。
それは、それで、ちょっと辛い。
「ルナ、説明ありがとう。これでわかっていただけたと思う。殺さずに打ち倒す技量があるのは、私とリリィ。そして、三番隊のメンバーズ。後は、ガルド殿と、各部隊の隊長クラスのみだ。よって、皇国国内の本人とクローン部隊は、防衛にあたる我ら参番隊の13名が受け持つ。よろしいかな?」
「ハッ!」
一同が一斉に返事をした。
「
と親方様。
「はい!」
と返事をする
こんどは、何の話をされるのだろう?
「相手の目的は、
「なるほど」
「そして、リリィ!」
「はい!」
「アルキナ・本人は、転移魔法大聖堂内にいるだろう。クローンや
「はい!」
「国内のクローン部隊を片付られる目途が出来たところで、お前は大聖堂に向かえ。そして、ガルド殿と合流し、大聖堂内に侵入。内部から破壊せよ。大聖堂は結界を展開して、外側からでは破壊工作が通じない可能性がある。だが、お前を誘い入れる為なら、そこを開けるだろう。お前がアルキナ・本人を倒し、大聖堂の機能を止めよ」
「はい。承知いたしました」
やっぱり、私が狙いか?
旦那様は、オマケで殺すのかな?
そうは、させないよ。絶対に!
心配してくれて嬉しいのだ。
「
親方様が、心配そうにしている
「ありがとうございます」
と、答える
「大丈夫よ。直ぐ帰ってくるから。一人でも十分だし」
あなたの戦いは、ずっと前に始まり、そして区切りを迎えた。
ここからは、私がしなければならない戦い。
この世界で生きてきた私のケジメを、『冥府の舞姫』として生きてきた私のケジメをつける戦いなのだ。
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