第11話 信頼と秘密



「改めてやけど、これでええか?」

「は、はい!」

「ん、決まり」

「オシ!ほんなら、今日から俺達は〜〜〜〜〜〜


 冒険旅団、【青のメテオール】や!」


 飲食店を出た後、三人は寝泊まりしている宿屋兼酒場に戻り、その一室で団の名前について決めていた。


「とりあえず名前は決まったなぁ、今さらやけど三人だけでも旅団って組めるもんなん?」

「は、はい。大丈夫です。最低三人で……その中に【Dランク】以上の旅人が一人いれば組むことはできます」

「………ん?俺ら確か【Eランク】やなかったけ?」

「へ?そ、そうなんですか!?」

「いや、僕達はDになってる。………というか、【旅人の証】見たら分かるよ?」

「あ、そうやな。………ほんまや、いつの間にか上がっとる。薬草採取でか?」

「いや、その前……スピカを襲ってたプラードンって星獣の素材を持っていった時。元々緊急の討伐依頼が出てた案件で、僕達は受理していなかったけど、迅速に危険を排除したとして依頼の達成が認められた」

「!や、やっぱり!お二人が倒してたんですね!?あ、あの時の記憶が曖昧でどうなったか思い出せなかったんです……」

「そうやったんか?まぁスピカが起きた時も言うたけど、そいつを倒したのはハクや」

「ん……それで、プラードンは結構ランクの高い星獣だったらしい。それを倒した旅人が低ランクのままなのもよくないらしくて……すぐにDランクに引き上げられた。………ヒョータはギルドをウロウロしてて聞いてなかったみたいだけど」

「な、なはは〜………すんまへん」

「そ、それじゃあ………問題なく旅団は組めるんですね?」

「ん、【旅団長】も決めないといけないけど」


 ランクが上がったことを把握してなかったことを反省し、うなだれていたヒョータは顔を上げて、スピカの方に顔を向ける。


「ほんならスピカやないか?船、アースはスピカのもんなんやし」

「へえ!?む、無理ですよ!?旅団長なんて……そ、それに私はまだEランクの旅人なので……」

「なんやこれもランクが関係あるんか?」

「ん、Dランク以上じゃないと駄目……だからヒョータで決まり」

「いやハクもおんなしランクやろ」

「向いてない。あとやりたくない」

「やりたくないが本音やろ………」

「ヒョータは向いてる。リーダーシップと決断力がある」

「………決断力はハクもあるやろ」

「ヒョータは他人を想って決断できる。迷っても悩んでも、最後に決断を下せる。僕はすぐに………………ヒョータならわかるはず」

「…………」

「(ど、どういう意味で………い、いえ………きっと二人にしかわからないことなんだ………)」


 真剣な顔で表情で見つめ合う二人、そんな二人を見てスピカはオロオロしつつも、今自分が口を挟むべきではないと考え、静観することにした。

 やがてヒョータが折れたように、目をつむってため息を吐いた。そのまま右手で頭を掻くと、今度は覚悟を決めたように二人に向き直る。


「わかった、ほんなら俺が旅団長になったるわ!その代わり、俺はアホやから難しいことはハクとスピカにすんごい頼るで!?それでええか!」

「ん、サポートは当然する」

「は、はい!よろしくお願いします!

 わ、私も微力ながら力になりますので!」

「ほな決まりや!後はギルドに報告したらええんか?」

「ん、それぞれの【旅人の証】と……必要書類は僕とスピカで記入して提出しよう。それで正式に認められる………だよね?」

「は、はい!間違いないです!」

「オシ!ほんなら早速………ってもう外暗くなっとるな………」

「割と話したから。明日でいい?」

「そうしよか〜スピカもええか?」


「…………」

「スピカ?」

「ふへ!?は、ははははい!大丈夫です!?」

「お、おう。どないした?」

「ぼーっとしてた」

「す、すみません……えっとその………い、今の状況が信じられないといいますか………あの、う、嬉しくて………」

「嬉しい?」


 慌てつつも自分の気持ちをどうにか言葉にしようとするスピカ。そんなスピカの言葉に、相づちをうちながら聞こうとするヒョータと、黙って聞いているハク。


「昔………姉さんに言われたんです………『信頼できて、苦楽を共にできる仲間を見つけてほしい』って………わ、私はその、う、上手く話せないので………旅に出ることはできたけど、仲間を作るのは無理なんじゃないかって思っていたので………こ、今回お二人に誘っていただいて!ほ、本当に嬉しくてっ!そ、その気持ちがじわじわと溢れてきたといいますか………そ、そんな感じ、ですぅ……」

「………信頼してくれとるんか………俺らのこと」

「……………ヒョータ?」

「は、はい!お、お二人が………私なんかを信じると言ってくださったので…………わ、私も!お二人を、その、信じたいです」

「そうかぁ……ありがとな、スピカ」

「い、いえ////」

「ハク」

「………何?」




「言おう。俺らのこと、できるだけ

「!…………急に…………本気?デメリットしかないって言った」

「すまん、でもスピカには隠し事したぁないって思うたんや!」

「へ?あ、あの?」

「…………まだ出会って数日、悪いけど、僕はまだはできない、能力を認めただけ」

「ハクの考えもわかっとるつもりや。でも、スピカの信頼に応えるべきやと思った。仲間になるなら尚更、俺らのことなんも教えらへんのは、スピカに対して不誠実や」

「………いずれ分かることだから、僕達の星力については、また話すつもりだった。けど、それ以外を話す必要は―――――――――――」


「ある!!!」

「へぇ!?」

「…………………なんで?秘密があったら仲間になれないの?」

「………そういうわけやない。けど、俺らのことは話すべきや………スピカには」

「なんで?」


「……………………………僕らの方が?」

「そうや、信頼には信頼で返さなあかん。片方が秘密抱えとったら、それがいつか重荷になる、罪悪感になって」

「…………」

「そんで相手のことも疑ってしまうかも知れへん。『こいつも何か隠しとるんちゃうか』ってな。俺は、仲間をそんなふうに思いたぁない……

 せやから話そうや、俺らのこと。大丈夫やたぶん!」

「………ようするに、ヒョータの心情的に秘密を抱えるのしんどいから、隠し事したくないってこと?スピカを信頼できるってことについてはただの勘だし」

「うぐっ………ま、まぁそうやな………」

「………………(そもそも、スピカが僕らのことを信頼してることが前提で話してるけど、口で言ってるだけ………嘘かもしれないし、秘密を受け止める覚悟なんてないかもしれない。そのことにヒョータは………気づいていない。基本的に人を疑わないから…………)」


 顎に手をそえて考えながら、オロオロとしているスピカを横目にヒョータの瞳を真っ直ぐ見つめる。

 ハクは他人の心情を察することがあまり得意ではない。それでも、目の前の真っ直ぐに見つめ返して来る瞳に確かな覚悟が宿っていることは分かる。


「……………(気づいていない………けど、仮にスピカ裏切られても、ヒョータはきっと恨まない。そういう人間だ。それに………僕はともかく、人を見る目はある………そういう星のもとに生まれたような、そんな人間だ。それだけは分かる)

 ……………まぁいいや………話そう」

「!ほんまか!?」

「ん、今回はヒョータの勘を信じる………目の前でこんな言い合いされたら、スピカも気になるだろし」

「へぇ!?わ、私はその!?お、お二人が言いたくなければ………(正直ものすごく気になっていますが………………)」

「いや、聞いてほしいんや。そんで改めて俺らと一緒に旅をするか決めてほしい」

「どちらにしても他言無用でお願い」

「は、はい!き、聞きます!」


「ありがとな、ほんならまず――――――」




 こうしてハクとヒョータは、自分達のことを話し始めた。自分達がもとはこの世界の人間ではないこと、この世界での力、星力を一切使えないこと、ハクのなど出来るかぎりのことを。





「………………………………………………………」

「っと、まぁこんなもんか?これが俺の秘密……スピカ?ど、どないした?」

「たぶん混乱してる」

「あ、えっと………(こ、こことは違う世界?そんなものが?せ、星力をもたない人が存在するんですか?で、でもハクさんだけは違う力をもっていて………)」

「一気に言い過ぎたか?すまんな、ゆっくり考えたらええけど」

「あ、その……驚きました……けど、私はやっぱりお、お二人とた、旅をしたいです!」

「!」

「お!ほんまか!」

「は、はい(こんな大切な秘密を話していただきましたし………というか私は他の人と仲間になれる気がしませんし………)」

「おっしゃ!ありがとうな!」

「迷惑をかけるね」

「い、いえ」


 秘密を打ち明け、改めていい返事を聞けたことに喜ぶヒョータ。その顔は秘密を抱えずにすんでホッとしているようにも見えた。

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ファンタジー・オブ・ギャラクシー 〜転移者と仲間達の宇宙冒険ロマン〜 竜胆の星 @rindou-no-hoshi

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