第5話 盗賊旅団!【ビューティー4!】……4?
ヒョータ、ハク、スピカが入った森、その森には【星獣】と呼ばれる獣達が生息している。
この世界の生き物は皆、生まれつき星力と呼ばれる力を持ち合わせているが、すべての生き物がその力を使いこなしているわけではない。
戦闘・索敵・逃走など、目的は様々だが、そのような場面で星力を扱うことのできる、【人族】を除いた動物のことを総じて、【星獣】と呼ぶ。
今回三人が入った森は、長時間でなければ【Eランク】………つまりは、旅人になったばかりの
もちろん、星獣が出る以上決して安全ではない、森の範囲も広いため、失せ物探しも簡単ではない、ない……………の、だが―――――――――
「あった…………あれだ」
「おぉ!?ほんまや!あの丘の上の木にひっかかっとるやつやな!」
「(エエエエエエエエェェェェ!?
す、すぐ見つかりました――――――!?)」
ヒョータ達は、すぐに守護星晶の下までたどり着いていた。
ちなみに、ハクが背負っているリュックには依頼で必要な薬草が大量に詰まっている。
「結構早うに見つかったなぁ〜森に入ってからどれくらいや?」
「三時間くらい」
「す、すごいです………
薬草の群生地を見つけたどころか、こんなに早く守護星晶が見つかるなんて……」
森に入ってから、先頭を歩いていたのはハクだった。すると、歩き始めてから一時間ほどで、依頼を受けた薬草の群生地を見つけ、またたく間に指定された量を集めてしまった。
そして今は、一番の目的としていた守護星晶の下まで、迷うことなく来ることができていた。
だが、それと同じくらいスピカが驚いていたのは………………………
「こ、ここに来るまでに……星獣に全然遭遇しませんでした……」
「気配を感じた方は避けたから………後は勘」
「か、勘……」
「あ〜なんちゅうか……ハクの勘は他の人より鋭いんや。薬草をぎょ〜さん見つけれたんも、ハクの勘のおかげや」
「そ、そうなんですか?」
「ほんまやほんま!初めてきた場所でも、ハクは迷わず目的地に行けるや。地図も見とらんのに」
「す、すごいです」
「うん、まぁ………
それより、早く取りに行こう」
「おお、そうやな!ほんならまぁとりあえず木の下まで上がろか―――――――――」
と、その時だった。
その大声が響いたのは。
「ちょぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ
ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっっっっっとぉ!!!
むぁっっっっったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!!!!」
「ぬああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??
な、なんやぁ!?」
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃいいいい!!!???」
「うるさ」
爆音とも呼ぶべき大声が辺りに響き渡り、ヒョータとスピカは飛び上がって驚きの声をあげた。ハクは驚きこそしなかったが、うるさくはあったようで、ほんの僅かに顔を歪めている。
そんな三人の様子を知ってか知らずか、先程の声の持ち主が丘の上に姿を現した。
いや、正確には…………声の持ち主も含む、三人の少女達が現れた。
「なっはははははははは!!!!!
やったぞおおおぉ!!!シノ!!!ナノ!!!
おっ宝ぁぁ!!!発見!!!」
「いやその前にどんだけ大声出してんのよ!?
鼓膜破れるかと思ったわよ!普段から声でかいけど叫ぶ時は合図ぐらいしなさいよね!?ニノ!」
「なのです、ナノもお耳痛いのです」
きゃいきゃいと騒ぎながら現れた少女達、それぞれ顔立ちがよく似ており、恐らくは姉妹であることが窺えた。
髪色は全員明るめの茶髪、しかしそれぞれ髪型と髪留めが違った。大声で話すニノと呼ばれた少女は、ツインテールに赤の髪留め、キレ気味にツッコミを入れるシノと呼ばれた少女は、ポニーテールに青の髪留め、独特な口調で話すナノと呼ばれた少女は、サイドテールに黄色い髪留めを身に着けていた。
「な、なんやあの子ら……」
「誰?」
「ム!誰だと!?フッフッフーーー!!!
こーーーーれは名乗ってやる必要がある必要だありそうだぞ!!!シノ!!!」
「あーーーーーもう!!耳元で喋らないでよ!!
…………でもそうね、誰と問われた以上、名乗ってあげようじゃない!」
「なのですなのです。ではでは………
『盗みも美貌も超一流〜』」
「『おまえのハートも盗み出す!!!』」
「『完全無欠!可憐で麗しい美女集団!』」
「「「『盗賊旅団!!!ビューティー
「お、おぉ………」
「お〜………ぱちぱちぱち」
「ふ、ふえぇぇ………」
『ちゅどーん!』という謎の効果音と共に、決めポーズと決めゼリフを披露する少女達に、なんとも言えない表情をするヒョータとスピカであった。一方でハクは、顔こそ無表情だが感心したように拍手をしていた。
「バッチリ決まったな!!!」
「二人ほど反応が微妙なのが気に入らないけどね」
「なのです」
「………と、とりあえずあれやな………盗賊っちゅうことか?」
「みたいだね。さっき『お宝発見』って言ってたけど………それってもしかして、あれのこと?」
「えぇ!?しゅ、守護星晶ですか!?」
「む!!!そのとお〜り!!!あれはアタシが見つけたお宝だ!!!ちょっと前に、空から落ちたのを見たんだ!!!」
「三日前ね!あんたが見たって騒ぐから探し始めたけど、何で落ちた場所覚えてないのよ!時間かかっちゃったじゃない!」
「なのです。星獣さんから逃げてたら、ママともはぐれちゃったのです」
「ええい!!!見つかったからいいだろー!!!
うるさいぞ!!!」
「あんたにだけは言われたくないわよ!」
「守護星晶って高いんか?」
「は、はい……アースのパーツの中では一番値が張ります……姉さんが、良い品質のものを選んでくれたようで……」
「それを狙っているわけだ」
再びぎゃいぎゃいと騒ぎ始めた姉妹を横目に、スピカに守護星晶の価値について聞いたヒョータは、そのままその姉妹に話しかけた。
「なぁ、ちょっとええか?」
「ヌ!!!なんだー!!!」
「その守護星晶なんやけど、この子の船に付いとったもんなんや」
「は?そっちの女の?」
「ひっ!は、はい………」
「俺らはそれを拾いに森に入ったんや。悪いんやけど、持っていくのは諦めてくれへんか?」
「何の話かと思ったら……くだらないわね!」
「なのですなのです」
「フッフッフ!!!………
え!!??
じゃあお宝はお前のものってことかー!!!???それじゃ諦めるしかないじゃないかー!!!」
「いや何言ってんのよニノ!?私今くだらないって一蹴したわよね!?」
「だ、だって!!!あいつの落とし物なら返さなきゃ駄目だろ!!!」
「ばか!関係ないわよ!誰のものだろうと、盗んだらいいのよ!盗賊でしょうが私達!」
「な、なるほど!!!」
「なのです。あの子の落とし物っていうのも、嘘かもしれないのです。証拠ないのです」
「なるほど!!!」
「ん、ダメそうだね。あの子だけなら諦めてくれそうだったけど」
「そやなぁ……どないしょうか……」
「はわわわ………」
「よくも騙そうとしたなー!!!お宝は渡さんぞーーー!!!」
そうニノが叫ぶと、懐から野球のボールくらいの赤い玉のようなものを取り出した。続いてシノとナノも、それぞれ青と黄色の玉を取り出した。
「悪いけど、ここで大人しくしてもらうわよ!
くらいなさい!」
初めに動いたのはシノ、青の玉をヒョータ達に目掛けて投げる。
玉はまっすぐ三人のもとに向かっていき、2・3メートルほど手前で『バシュッ』と音をたてながら炸裂する。
「スピカ、こっち」
「はわ!?きゃぁぁぁぁぁ!?」
「ちょお!?俺は!?
のわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
玉から飛び出てきたのは、青色の液体、いや粘液。炸裂した際、大きく広がり、三人に覆いかぶさった。
もっとも、その粘液が広がった瞬間、ハクは素早くスピカを脇に抱えると木の上まで跳躍し、躱すことに成功していた。…………そのため、まともに当たったのは―――――――――
「ぬえええぇぇぇぇぇぇぇ!?
なんやこれ!?すんごいネバネバするんやけど!?」
「きゃあ!?ヒョ、ヒョータさん!?」
「顔、おもろ」
「しばいたろかハク!?」
「あっはっは!どう?これが私特性【スライム玉】よ!今よニノ!追い打ちよ!」
「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!くらえ!!!」
気合の入ったかけ声と共に、今度はニノが赤色の玉を投げる。その玉はまっすぐ三人………いや、ヒョータに向かって飛んでいった。
「いや俺!?ちょお!あかんて!まだネバネバで動けらへ――――――――『バシュッ』
うんぎぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!??
目があああああああああぁぁぁぁぁぁ!!??」
「ヒェェェェェェェ!?ヒョ、ヒョータさぁぁぁん!?」
「わぉ」
ニノが投げた玉から出てきたのは、赤色の粉末。ヒョータの目の前で炸裂し、出てきた粉末をまともに浴びたヒョータは、絶叫しながら目をおさえ、その場でのたうち回った(ネバネバなのであまり動けていないが)。
「なっはっはぁぁぁ!!!どうだ!!!アタシの【激辛!トンガラーシ玉】の威力は!!!
いけぇナノ!!!トドメだ!!!」
「なのです。え〜い」
どこか気の抜けたかけ声と共に投げられたナノの黄色の玉は、山なりの軌道をえがいて…………
倒れているヒョータの上までいき、炸裂した。
「うべぇぇ!?なんやこの粉!?口の中までめっちゃ辛いんやけど―――――――――『バシュッ』
うべべべべべべべべべべべべべべべべべ!!??
あばばばばばばばばばばばぁぁぁぁぁぁ!!??」
「ヒョ、ヒョータさぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!?」
「電撃か」
「ナノちゃんの〜【ビリビリ玉】なのです〜」
「なはははははは!!!思い知ったか!!!
アタシ達の力!!!」
「うん、まぁ、主にヒョータが」
「………………がくっ」
「(か、完全に気絶しちゃいました…………)」
最後の電撃によって、ヒョータについていたネバネバは焼け焦げたが、肝心のヒョータ自身があえなく気絶し、行動不能となった。少し焦げたまま。
それを横目に、ハクはスピカと木の上から下りると、ヒョータの近くでしゃがみ、様子を見るふりをしながら、三姉妹から見えない角度で石を二つ拾った。
「まずは一人ね!さぁ!残りの二人もやるわよ!」
「おう!!!/なのです」
「………スピカ、ヒョータをお願い」
「へ!?は、はい」
スピカにヒョータを預けると、ハクは三姉妹の方に向き直す。すでにシノが青い玉を投げようとしていた。
そして、それに合わせてハクも石を二つ投てきする。シノ………ではなく、ニノとナノの足元に。
「ぬわぁ!!??」
「なのです!?」
「なっ………!?」
豪速で投げられた石は、大きな音をたてて着弾し、ニノとナノは反射的にその場から飛び退いた。
――――――シノがいる方向に飛び退いた。
異変に気づいたシノだったが、すでに投げる勢いは止められず、青い玉はシノの手から離れてしまった。
一方でハクは、自ら青い玉に向かって素早く直進し、それを蹴り返した。その結果、玉は三姉妹の方向に飛んでいき、炸裂した。
「うおわぁ!!??」
「きゃあ!?」
「なのです〜!?」
「……捕まえた」
こうして、三姉妹同時にネバネバの餌食となった。
「ちょっ!なんであんた達まで捕まってるのよ!?」
「い、いしが飛んできて!!!それで!!!」
「やられたのです。ナノたちが三人でかたまるように誘導されたのです……」
「さて……スピカ、ヒョータはどう?」
「あ、えっと……もうしばらくは起きないかもしれません(す、すごいです。あっという間に動けなくしちゃうなんて……)」
「ぬうぅぅん!!!まずいぞ!!!ネバネバだ!!!」
「も〜〜!髪にからみつく!最悪よ!何なのよこれ!」
「シノちゃんが作ったのです。
………こうなったら奥の手を使うしかないのです」
「う〜〜〜………今日は私達だけで頑張りたかったのに!」
「仕方ないのです。このイケメンのおにーさんはすごく強いのです」
「もう!わかってるわよ!
あれをやるわよ!ニノ!お願い!」
そうシノが言うと、ニノが大きく息を吸う。そして、シノとナノが耳を塞ぐと、それを見たハクとスピカも耳を塞ぐ。
放たれたのは、爆音。
「たぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁすけてぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!
ママぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
大声が辺り一面に響く、耳を塞いでいても面をくらっているスピカに対して、ハクは鋭く森の奥を睨む。
そしてその方向から、それはものすごい勢いで飛び出し、三姉妹の前に着地した。
「とぉぉぉぉぉぉぉう!!!
………待たせたわね………あたしのかわいい愛娘たちよ!」
「ママぁ!!!」
「来てくれたのね!ママ!」
「ママ〜なのです」
「「…………………………………………」」
「まったく……こんなあられのない姿になって………ヤッたのはあそこのボウヤかしら?
………あら?イケメンじゃな〜〜い!」
「そうだぞ!!!ママ!!!あのイケメンだ!!!」
「そうよママ!あのイケメンよ!」
「なのです。あのイケメンのお兄さんなのです」
「……………………」
「は、はわわわわ………」
ママと呼ばれ、三姉妹から慕われている様子のその人物は、三人の安否を確認した後、品定めをするようにハクとスピカの方に向き直る。
……………一方で二人はロクな反応ができていない…………いや、どんな反応をすればいいか困っていた。
「…………な、なんや…………何が起こったんや…………」
「あ、起きた」
「ヒョ、ヒョータさん!」
「あら?もう一人いたのね」
「なに!!!もう起きたのか!!!」
「うそ!?私達の玉を全部くらったのに!?」
「タフなのです」
「あ!そうやハク!お前俺のこと見捨てたやろ!?おかげでボロボロ………に……………」
起きてすぐ、ハクに文句を言おうとしたヒョータだったが、その人物を見て固まった。
「娘達の攻撃を受けて立つなんてやるわねぇ〜
………あら?あなたも中々かわいい顔してるじゃな〜い」
「な…………な…………」
「あ!そういえばまだ名乗ってなかったわね〜
あたしは、ボンジョノ・パルノ………
この子達のママにして、盗賊旅団【ビューティー4】の旅団長――――――――――」
「なんか筋肉ムキムキのデカいおっさんが増えとるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!???」
「誰がおっさんだ!!!!!クソガキゴラァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!」
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