僕たちの戦争

うさだるま

僕たちの戦争

 僕たちは将軍だ。それに王様であり、統率者でもある。この荒野に無数にいる将軍の中の一人、これ以上ないくらい小規模な軍隊を引き連れる男、それが僕だ。

 この荒野の将軍の中には争いを好まない温和な方もいれば、血気盛んなヤツもいる。それでも多かれ少なかれ皆、蹴落とし、踏み潰して生きている。そうしなければならない。ここでは、そうしなければ終わってしまうという事を皆んな知っているからだ。

 僕は荒野の中でも血気盛んな方だった。飢えなくては勝利はない。貪らなければ賞賛はない。

 決意の元、戦いを挑む。

 狙いをつけ、剣を研ぎ、全軍で敵に突っ込んでいく。

 敵は僕よりもより早く、この荒野で戦っている将軍だ。素人目にも戦力差は歴然。僕のおおよそ100倍の兵力を持つ。万に一つも勝てる要素などない。

 だけど、そこで諦める訳にはいかない。そんな簡単な話ではない。負けるからとて、挑まなければなるまい。これは生きる為でも、誰かの為でもない。ただの自尊心だ。

「全軍!突撃!!!」

 号令を合図に自軍が攻撃を開始する。そして、あっけなく自分の兵が、敵兵とぶつかり消えていく。

 すまない。ごめんよ。君達は悪くない。指揮をとった僕のせいだ。

 荒野は粘り気のあるインクのような血で湿りを帯びている。

 彼らが消えてしまった事を無駄にはしない。必ず次に繋げる。それが将軍である、僕の役目だ。

「全軍!怯むな!差し違えても倒せ!」

 喉がちぎれるほど、声を張り上げる。

 あと少し、もう少しで彼に手が届くんだ。皆んな、頼む!最後の力を貸してくれないか。

 隣でナルシストな高校生が消えた。後ろからは工場長の悲鳴が聞こえる。

 文字の波を超え、行間をくぐり抜け、難解な比喩を説き伏せて、僕は彼の喉元にペン先を突き立てようとする!

 だが、届かなかった。まだ彼には一歩届かなかった。いや、僕が一歩だと思っているだけで、ずっとずっーと離れているのかも知れない。

 何度も何度もキャラをぶつけ合い、こちらばかりが消耗していく感覚に陥る。それでも彼を倒すために書き続けるんだ。

 戦いを挑まなければ、「彼」という作家から勝ちを得る事は出来ないのだから。

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僕たちの戦争 うさだるま @usagi3hop2step1janp

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