第1話完結 「進化と神化」
2024年8月 夏休み。
家電量販店のテレビ売り場でいくつかの液晶テレビから同じニュースが流れている・・
「今、○○業界で世界No.1の方! 前田 聡さんに直撃生取材です!」
「前田さん、大成功した秘訣はズバリなんですか?」
とニュースキャスターの女性が前田さんに突撃インタビューをしている映像が、
家族連れのお客さんで賑わう店内で流れていた。
時は遡り3年前、2021年夏8月のある日。
僕は、自宅から自転車で10分の距離にある設計事務車で働いている25歳の独身。
最近はコロナの影響もあり、仕事は激減し土日出勤もなくなり、平日も定時で帰る日々を過ごしていた。
今日は日曜日。
僕はダラダラ過ごしていた。
その日は会社が休みの日だった。
休日はいつも起きるのが10時ごろ、9時には目が覚めてるんだけど、ダラダラとベッドでスマホをいじっていた。
スマホでニュースを読んでいたら、転生もののゲームバナー【転生Punk】って広告が邪魔をした。
無視して次のページを開こうとしたら、誤ってゲームバナーを触ってしまった。
【転生Punk】のアプリダウンロード画面に切り替わった。
インストール自体は無料(アプリ内課金)だし、レビューを見てみたら、星の評価が4.2ついていて、ダウンロード数が1億以上。
なかなか評判やん。と思い。
特にすることがななかったので、
そのゲームをダウンロードしてみた。
ゲームを開始するには、まずユーザー名の登録が必要だった。
僕は自分のイニシャルSとMに、性別は男性と打ち込み生年月日やら趣味やらと一通り必須項目は埋めた。するとチュートリアルが画面に現れ、順に遊び方の説明が画面に表示される。
説明を読み始めたが、すごく細かな設定が書かれていた。
面倒なので、僕は次へボタンを連打した。
すると初期設定画面が映し出され、登録時の情報をベースにAiがキャラを自動生成しはじめた。(時間にして1分ほど)結構待たされるな・・・と、
やっと現れた僕のキャラ(アバター)は、ぴちぴちのアミタイツに右手には鞭を持って顔はマスクをしていた。マスクのせいなのか、そのアバターは男性とも女性とも判断できないキャラだった。
Ok? Cansell? の選択画面が現れ、
キャンセルしたら、また待たされる?と思い僕は【OK】を押した。
画面が切り替わり、未来的なスチームパンク風の世界を背景に僕のアバターが現れた。
「【転生Punk】の世界へようこそ!」と、アナウンスが流れた。
スチームパンク風の街並み、いかにも重たそうな気球が空に浮かんでいる。
カエルが話し、ペガスが空を飛んでいる。
壁掛け時計は歩き出し、仮想的な世界を演出していた。
僕のアバターはその世界にウルトラ馴染んでいた。
「おー、楽しそうー」と、僕は呟き、まずは街を探索することにした。
街にはいろいろなアバターが歩いていたり、会話をしていたりと、
賑やかで、しばらく僕は街を走りまわって探検していた。
ただ街をウロウロしていても、何も起こらないので、すれ違った女性アバターに声をかけた。
「こんにちは。」と打ち込み、女性からの返事をまっていた。
・・・・返事がない、
もう一度「こんにちはー」と打ち込んでみたが、
そのアバターから返事はなく、歩き出して僕の前から離れていった。
まぁ、仮想ゲームの世界だし、ひょっとして日本語が分からない人だったのかも?と思い、他のプレイヤーにも声をかけてみた。
かれこれ、20人ほど声をかけてみたが、誰からも返事が来なかった・・・
唯一何かあっとするなら、さっき開けたゴミ箱の中にあった石のアイテムを1つゲットしたくらいだった・・・
僕はチュートリアルをちゃんと読まずにゲームをしていた。
「ん、、やはりちゃんと説明読まないとダメか・・・」
僕の発言はミュート設定のままだった・・・
チュートリアルを順に読み、そうこうしているうちお腹が空いてきた。
壁にかけてある時計の針が12時10分を指していた。
腹減った…
「よし、昼飯つくるか・・」、一旦ゲームを終了しようと、ログアウトボタンを選択すると、画面に自動モード・ON・OFFの選択画面が現れ、僕は無意識にONを選択しゲームをログアウトした。
昼を食べて、お腹いっぱいになった僕は、
夕食の食材を買いにスーパーに出かけた。
スーパーで食材をみていたら、さっき昼を食べたばかりなのに、
お腹が空いてきた。笑
よし、今晩は青椒肉絲と酢豚でも作るか!
食材を買い、家に戻るとすぐに下拵えを始めた。
「完璧!うまそー」テーブルに料理を並べて、ビールを開け、毎週楽しみしている21時から始まるドラマを観ながら食べた。
その後、風呂して、ベットに横になって、スマホを片手に、昼ダウンロードしたゲームを開こうかなと思ったが、そのまま寝てしまった。
次の日の夜。僕は家のソファーに座りスマホを片手にニュースを読んでいた。すると、楽しそうなゲームの広告がポップアップしてきた。
【男1対: 女100の夢物語】
これハーレムじゃん!♪って思いインストール。
僕はそのゲームをプレイしかけたが、もう眠くて眠くて、、、
そうか、なんでこんなに眠たいのかと思ったら、今日は珍しく残業だったんだ・・・
家に帰ったのは22時を過ぎていた。
「もう、、0時過ぎてるやん・・・あかん、寝よ」と、布団に潜り込んだ。
目覚まし時計がなっていた。
朝日がカーテンの隙間から僕の顔を照らしていた。
僕は目が覚めた。
僕のスマホにはインストールして放置しているゲームアプリやら、ポイントが貯まるアプリやらが山ほど入っている。
その8割は、1度しかプレイしたことがないアプリばかりだった・・・
まともに最後までプレイしたゲームは一つもなかった・・・
そして、1年が過ぎ去ろうとしていたある日、
2022年夏8月
同僚から面白いゲームがあると教えてもらった。
そのゲームは1年前に「S.M」でアカウントを作った、あのゲーム【転生Punk】だった。
しかもダウンロード数は3億人にまで拡大していた。
スマホの画面をなん度もスワイプし、どこにあるんだろう・・・1年前だから、だいぶ後ろの方だろうなぁ・・・30分ほどスマホと睨めっこが続きやっと見つけた。
久しぶりにパスワードを入力してログインしてみた。
(基本パスワードは同じ、銀行のカードもクレジットカードもゲームも全て。)
すると、現れた景色は、空の上から街を見下ろしてる景色だった。
「あれ?これ、空飛ぶゲームだったっけ?」
僕のアバター飛んでるのか?と思ったが、そうでもなく、空の上を歩いていた。
いや、それも違っていた・・・
僕がいる場所はビルの最上階で、このビル全体はクリスタルで出来ていた。
「眺めいいじゃん!」と感動していたら、
隣に美しい女性アバターが現れ、
「社長、お疲れさまです。先ほど、本日のスケジュールが更新されましたのでご確認くださいませ。」
え?何それ、スケジュールって、しかも俺のこと社長って言った?
状況が全く掴めないので、
「すみません。今、僕のこと社長って言いました?」
「はい、社長。」
「僕はこの世界で社長なの?」そんな初期設定あっただろうか・・・?と思いながら・・
「はい、社長。」
「いつから?」
「はい、社長になられて300日と540分です。」
へー、んじゃ、ほぼ1年前にログインしてからだから、二ヶ月で社長になったのか。
それから僕は彼女にいろいろ聞きまくった。
僕はこの世界で、ある業界のNo1になっていること。
僕の会社で1億人以上のスタッフが働いていること。
今いる場所は自社ビルの最上階など、
このゲームの世界で僕のアバターは神と呼ばれていることとか・・・
僕が作ったアバターはこの世界でカリスマ的な存在と成長し、
カリスマ的な衣装も身につけていた。
しかも、「S.M」はこの世界でSMプレイの新たな領域を切り開く教祖として、
1億人の崇拝者(会員)を従えていた。
最近のゲームはすごいなぁ〜、自動モードで勝手に成長するとか。
驚き感心した僕は、このゲームで「S.M」が辿った軌跡を学んだ。
その知識と成功の道のりを理解するうちに、
「これ、現実の世界でも通用するかも?」と、思い、
ありったけの貯金を崩し、
リアルでもSMクラブを立ち上げた。(2023年の夏だった)
それがたった2ヶ月で、世界でNo.1の「前田聡SMクラブ」となった。
お店は大当たりし、現実の世界でも勝者になった。
「あのゲーム凄いな!!」と感動した。
でも、ゲームは1年前から、
ログインしていなかった。
さらに1年後、2024年の夏
「前田さん、大成功した秘訣はズバリなんですか?」
今、僕はテレビ取材の突撃インタビューに答えていた。
この世界も捨てたもんじゃないなぁ〜と、
そういえば!と思いながら、スマホ片手に【転生Punk】を久しぶりにプレイしようとしていた。
あれからどこまで成長したんだろうって思い、ひょっとしてさらに新規事業展開してたり??なんて思いながら・・・
でも、いくらログインしようとしてもログインできなかった。
なんでだろうと、スマホに集中し過ぎて、
僕は信号を見ずに横断歩道を渡っていた・・・
イヤホンをしていたので、気づかなかったんだけど、
大きなクラクションの音と眩い光が僕に近づいていた。
彼はその後、車に轢かれて、僕は死んでしまった。
会社はその後、倒産した。
2024年10月31日
永眠 前田聡
あとがき、
彼のゲームキャラは1年前の2023年10月31日に
SM事業に失敗し、アバターは停止されていた。
死んだと思ったその瞬間。
僕はSMプレイ用の
大成功、
手にした栄光
花と散る。
結局、人は最後には死んじゃうの? 斜目 卯枝子 @nanameue
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