結局、人は最後には死んじゃうの?

斜目 卯枝子

第1話完結  「ナイパット!」

僕の名前は芝川 球児。今年で51歳。

そこそこの大手の企業で営業部長をしている。

部下は100人を超えていた。


営業で成績を伸ばした一つに、僕の得意なゴルフも影響をしていた。

僕は特技を活かし、

お得意先の社長さんとも接待ゴルフによく行っていた。


若い頃は力任せにドライバーで400ヤード飛ばしたり、と、パワーありきでプレーしていたが、50歳を過ぎたあたりから、飛距離より正確さと冷静が何より重要で、

特にパッティングが凄く重要だと悟った。


今日も、お客さんとゴルフ接待だった。


気を使いながらゴルフをするのも随分と慣れてきた。

しかも今日の僕は、なかなかのスコアだった。


パットはかなり神がかってたな〜。全てワンパット!

それに、なにより楽しくプレーできたし、お客さんも喜んでくれて、次の商談も纏まりそうだ。


スコアブックには69の数字が刻まれていた。


ロックだぜ!と、そのスコアに見惚れていたら・・・

僕の車は道から外れてカーブをそのまま真っ直ぐ突き抜けていた。


「ロックーーーーー♪」


「あれ?」車は崖を飛び越え、空を舞っていた、いや、ちがう、落ちていた・・・


僕は車と一緒に激しく崖下の地面に叩きつけられ、燃えて灰になってしまった。


その時、

僕は生まれ変わった。


自分の姿を見ることはできないけど、視点は緑のグリーン上にあった。

視線の前方にはピンが立っている。視線を動かすと、隣にゴルフボールが一つ。


ここはどこかのゴルフ場? しかもここはグリーン上かな?


僕はゆっくり後ろに揺らされ、

そのまま目の前にあるボールに当たった。


ころころころっとボールは綺麗な放物線を描き、カップに吸い込まれていった。

完璧なラインの読みだ! ナイスバディ!と僕は思った。


僕は、プロゴルファーロビンのパターに生まれ変わっていたのだ。


その後、ロビンはどんなに長いロングパットでも

1パットで沈めるパターの神様とされ、

ゴルフ業界に多大なる功績を残し、史上最高の選手となった。


その後、彼は90歳まで生き、大往生して、この世を去ってしいった。

ロビンは、僕を生涯大切に使ってくれた。優しいロビンだった。


ロビンがいない今も、パター(僕)はロビンと共に永遠に語り継がれる存在となった。


そして、今、僕は「ロビン記念館」に展示されている。


「それしても退屈だ・・・誰か僕をもう一度、使ってくれ・・・」

僕はもう一度グリーンに上に立ちたかった。



腕がなる

みどりの大地

もう一度。

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