第13話 連鎖反応で人類滅亡!?


 いつもより足早に家へと戻ってきた。とりあえず、パッと見は何も変化はなさそう。そのまま、家に突入したる!



「あっ、ご主人!帰ってきたでヤンスか?おかえりヤンス!」



 玄関のドアに手をかけようとしたとき、謎の声が聞こえてきた!誰や?ウチをご主人なんて呼ぶヤツは?



「誰や!ウチのことを呼ぶヤツは!」


「なんでヤンスかぁ。あっしのことをそんな風に言うなんて、水くさいでヤンスよぅ!」



 またしても不審な声が聞こえてきた。その方向を見ると……タニシがいるだけだった。別に怪しいヤツはいなかった。普段通りだ。でもちょっとおかしい。いつもならキャンキャン、クンクン鳴いて出迎えてくれるのに、今日はやけにおとなしい。どうしたんや、タニシ?



「いやいや、まさか、タニシがなんかされたワケ……、」


「まさかぁ。あっしは別にヘンなことになってないでヤンスよぉ!」


「……え?」


「……へ?」



 ウチらは思わず顔を見合わせた。確かに今、タニシから謎の声が聞こえた。口もそういう風に動いていたような……、



「もしかして、しゃべってる?」


「またまたぁ!あっしは犬でヤンスよ。しゃべるワケないじゃないでヤンスかぁ!」


「しゃべってるやん!?」



 しゃべってるぅ!タニシが人語を話すやなんて!こんな大それた事が起きるとは。でも逆にこんなことができるヤツは間違いなく、アイツだ!



「フハハ!驚いたであろう!恐ろしかろう!」



 そのとき、玄関がガチャリと開き、魔王が姿を現した。やはりすでに家に到着していたようだ。遅かったか!



「まずは手始めに、犬に人語を解し、話せる能力を与えてやった。我の力を思い知ったか?」

「……べ、別に。」



 しょーもな!あまりにしょうもな過ぎて、リアクションも引き気味になってしもた。これのどこが恐ろしいというのか?



「恐ろしさに声も出ないようだな?我の狙いを解説してやろう。犬が話せる→飼い主が驚きショック死→それに気付いた近所の人が目撃しショック死→それが連鎖→人類滅亡!といった寸法よ!恐れ入ったか!」


「……エェ。」



 あまりの馬鹿馬鹿しさに突っ込む気も失せた。そんなんで、誰がショック死すんねん。確かに無類の犬好きなら気絶するほど喜ぶかもしれんけども……。ソレの連鎖で人類滅亡て、アホすぎて話にもならんわ。



「どうした?あまりのショックで虫の息か?」


「……ドアホ。」


「んん~?聞こえんなぁ?」


「……こんの、アホんだらぁ!!!」


(ドグォォッ!!!)


「はにゃわぁ!?」



 怒りにまかせて思い切り蹴り飛ばしたった!魔王は家の中に吹き飛ばされた。



「貴様、蹴ったな!……まあいい。さあ、家の中に入ってくるがいい!まだまだこんな物は序の口だ!更なる恐怖が貴様を打ちのめすであろう!」



 よし、突入や!あのアホを今度こそ成敗せねば!何が待ち受けとっても、跳ね返したる!しばき倒して、魔界に送り返したるわぁ!



「ご主人、あっしもお供したいでヤンス!」



 タニシが協力を申し出てきた。せやな、タニシにも手伝ってもらおか。しゃべれるんやったら別にかまへんやろ。家に入れても、大丈夫や。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る