第11話 お客様は王様です!(※キンカレ接客スローガン)
「らっしゃっせー!!!」
カレーの匂いに誘われ、ウチら一行はキンカレに入店した。外で待ってるわけにもいかないし、第一、つぐみんに何かあったらたまったモンじゃないので、渋々同行することにした。
「はいはい、それでは食券を買いますよ~♪」
この店は食券制である。食べたいメニューの食券をあらかじめ、入り口の近くにある自販機で購入するシステムなのだ。……ていうか、なんでつぐみん知ってんの?とても初入店で出来るムーブではない。考えたくもないけど、ひょっとして常連さんだったりして……。イヤやー、そんなつぐみんはイヤやー。そんな暴挙はウチが死んでも許しません!
「魔王陛下は初心者なので、ひとまず“HIgh・カツカレー”にしますね♪」
“HIgh・カツカレー”とは、要するにハイ・クオリティなトンカツがトッピングされているカレーだ。ちなみに他のチェーンで言うところの“手仕込み”とかが頭に付くヤツと同等ぐらいの意味合いである。とりあえず適当な席に座ることにした。
「一人分で申し訳ないですけど、お願いします。」
「いいっすよ!お気になさらず!……ハイカツ一丁入りました!」
「あっざーっす!!!」
注文が入ると共に、威勢のいい声が店内に響き渡る。あいかわらず、テンションたっけーな。この店深夜まで営業してんのに、スタミナ持つんやろか?
「ほほう、自らの手の内を見せるタイプか。なかなかに面白い。気に入った。」
何に感心してるねん。ただのよくあるオープンキッチン形式やろがい!加えて席の並びもカウンター席が中心で回転率重視の作りになっている。
「ほらほら、魔王陛下、トンカツはああやって注文を受けてから揚げてくれるんですよ。揚げたてでアツアツでサクサクでおいしいんですよ!」
「おのれ、味な真似をっ!待ち遠しくて、辛抱たまらんではないか!」
よだれ垂れてる!よだれ垂れてる!カウンターにポタポタ落ちとる。魔王とあろうものがカツカレーごときでみっともない醜態をさらすな!この姿を写メに収めて、一生ゆすり倒したろか!(ピロン!)
「へい、ハイカツ、お待ちっ!」
「とうとう来たか!さんざん焦らしおって!」
焦らしたって、せいぜい10分未満やないか。何十分も待ったみたいなこと言うな!三年も待って艦隊に核ブッパしたエースパイロットもいるんやで!(※意味不明)
「では、早速頂くとするか。」
フォークを手に取り食べ始める。そう、フォークだ。普通のカレー屋ではスプーンだが、この店はフォークで食べる。あくまでカツを食べることに主眼を置いているのだ。カレー自体も汁っぽくないのでフォークでも問題なく食べられるようになっている。ていうかウチもウチやな。こんなに語れるとは思てへんかったわ!恐ろしいわあ。
「な、なんだコレは!こんな悪魔的なものが存在していいのか!うまい、うますぎるぞ!うーまーいーぞー!!!!!!」
悪魔的なモノて、お前自身が魔王やないかい!そして、雄叫びを上げると共に体が急成長する魔王。加えて大げさなリアクション!お前はグルメ界の大御所か!うまいとか言いながら変身してたら、ますます○王に近付いとるやないかい。
「あっざーっす!!!」
店員も大喜びしとるわ。その前にお客さんが変身してるんですよ。まずはそれに突っ込もうよ!ツッコミどころが多すぎて困るわ。
「陛下、陛下!ぜひともコレもご一緒に召し上がってください。更にトビますよ!」
「何?なんだこの赤い細々としたモノは?」
うう!福神漬けまでススメるんか、つぐみん!ディープすぎるやろ!アカンて!キャラ崩壊するから、それ以上はイケナイ!ちなみにこの福神漬けはぎゅーどん屋における、紅ショウガに相当するものである。つまりマニアもとい、高度なジャンキーは山盛りでカレーを食すのである。……せやから、なんでウチは詳しいんやろ……。
「ば、馬鹿な!こんなモノが存在していいのか!更に飛ぶではないか!魔力無しでも、永久に飛行できるレベルではないか!このうまさはありとあらゆるエリクサーにも匹敵するぞ!店売りしていいレベルではない!こういうモノは低確率レアドロップ化を推奨する!」
そんなアホな。異世界にもレアドロップとかいう概念あるんかいな?そういうのはゲームとかの専売特許やろ。しかも、ラスボスの魔王がメタ的な発言とかしてええんか、とも思う。……ていうか、なんでカツカレーごときで妙に盛り上がってるんやろ……。
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