第6話 コーヒーおかわりいかがですか?


「ほう!やっと起きてきたか!」



 朝起きて台所に行ったら、見知らぬイケメンがいた。



「誰やねん!」



 どこから沸いて出た!次から次へと変なのが出てくるのは何なん?



「誰て、マオ君やんか。」


「は……?」



 今なんて言うた、オカン。いやいやいや、それはいくらなんでも、ボケとしては無理があるやろ。



「いやいや、朝っぱらからそんなボケはいいから、コイツは誰なん?」


「我の事を忘れるとは、何事か。このド低脳が!」



 ん?でも言われてみれば、口調や態度は同じかもしれない。



「マオ君から聞いたけど、魔力が枯渇すると体が縮むんやて。せやけど、ご飯食べたら、元に戻るらしいわ。」



 何、その設定!現実味がなさ過ぎてどこから突っ込んでいいかわからんわ。今時、漫画でもそんなテキトーな設定使わへんやろ。



「オカン!なんで、こんな意味分からん不審者の言うこと真に受けとんねん!」


「え~、そんなこと言わんでもええやねん。かわいらしい子が一晩明けたら、イケメンになってるやなんて、素敵やん!」



 素敵ちゃうわ!おかしいやろ、根本的に。



「ほら、漫画でもようあるやんか?次の回になったら、同じキャラクターでもデザインが変わってるなんてことしょっちゅうあるやん?」



 ……それは、ゆ○だから!いつの時代の話やねん。認識が古すぎるやろ。

(※一番最近で数年前に発生しました。さすがにミヤコはそんなこと知らない。)



「せやから漫画とちゃうねん!現実やねん!」


「そうか。……せやったら、間を取ってオーバーボデーってことにしとこか!」



 もう、○ではええから!間をとったって、どこの間をとったんや!ええ加減にせんとゆ○先生に怒られるで。



「何をごちゃごちゃと言っておるのだ。その間に食事が済んでしまったではないか。食後の茶でも頂きたいのだが?」


「態度でか!」



 客(?)のくせに何様やねん。当然のように茶を催促すな!ていうか、ちゃっかり朝メシまで食べとったんかい。



「コーヒーでもええか?」


「コーヒー?なんだそれは?……まあいい、頂こうか?」



 コーヒー、知らんのかい!ホンマ徹底しとるな、コイツは。コーヒーをオカンから受け取り、何か驚いたような素振りでカップの中身を見ている。



「こ、これは!」



 何の変哲もない、ごく普通のコーヒーのはずだが?



「く、黒い!」



 当たり前やないかい!ホンマに初めて見るんかいな。



「ミルクと砂糖入れるか?」



 オカンがすかさず差し出す。しかし、コイツは手でそれを制止した。



「いや。まずはそのまま頂くとしよう!」



 そのまま、ズズッとすする。そこでまた、驚いたような素振りを見せる。ホンマ、忙しい奴ちゃな。



「こ、これは!」


「口にあわんかったか?」


「違う。素晴らしい味ではないか!この苦み……なんとも言えぬ。我が魔界のありとあらゆる毒草をかき集めたところで、この味には到底及ぶ物など存在せん。」



 たかがコーヒーを魔界の毒草なんかと一緒にすな!そこらのスーパーで買ってきた適当な豆で煎れたコーヒーやぞ。



「しかも、この黒さよ!魔界の王たる我にふさわしい飲み物ではないか!」


「えらい気に入ってくれて、よかったわ。」



 何の変哲もないコーヒーに感心するとは、魔王とは一体……。



「はっ!?アカン!もうこんな時間や!はよせな!」



 時計を見ると、いつも家を出る時間の十分前になってしまっている。弁当作る暇、あらへんやんけ。まあ、作るとは言っても、冷凍食品とか晩メシの残りを適当に詰めるだけやけどな!昨日の唐揚げを入れるつもりやったのに。コイツにとられたんや!ちくしょー!時間があらへんから、しゃらへんさかい、朝メシだけ食べることにした。ちくしょー、腹立つわ!



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「行ってきまーす!」



 ウチは朝メシを食べたらすぐに家を出ることにした。



「どこへ行くのだ。」



 急いでいるのに魔王が引き留めようとする。なんや、ウチの大切な時間をどれだけ奪えば気が済むねん。



「どこって、ガッコーや。学校!」


「学校とはなんぞや?」



 そっから説明せなアカンのかい!コーヒーの件といい、世間知らずにも程があるぞ!



「オカンにでも聞きーや!ウチは急いどるさかいに、ほなっ!」



 コイツの相手しとったら遅刻してまう!あとはオカンに任せて、ウチはさっさと学校に行くことにした。弁当用意出来んかった上に遅刻までしてもうたら、シャレにならへん。



「いってらっしゃい。きよつけて、行きーや!」



 あとは任せたで、オカン。ソイツを招き入れた責任はとれよ。

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