第4話 勇者にもぶたれたことなかったのに!
「ふはは!また会ったな、犬よ!」
聞き覚えのある声が聞こえてきた。タニシの異変に気が付いたウチは、いやな予感がしたのだ。自室を飛び出し、急いで家から出て、現場へ急行した。
「どうした?犬よ。囚われの身になっているではないか。」
やはり、あいつがいた。現場に到着したウチはアイツとタニシが対峙しているのを目の当たりにした。囚われの身とか言っているが、そりゃ普通飼い犬は鎖に繋がれてるだろ。アホかな。
「ふはは!そのザマでは手も足も出まい!」
タニシの可動域限界ギリギリの場所に陣取っているくせに何を言うか。タニシの射程圏内に入って、八つ裂きにされてしまえばいいのに。
「どうだ?悔しかろう。これからゆっくりと貴様を料理してやろう。くらえ、ダーク……!はっ!!」
「やっと、お気づきになられましたか?」
そばまで来てるのに一向にウチに気づきもしなかったのでそろそろ介入することにした。ちょうどタニシに何かしらヘンなマネをしようとしたところで、ウチは両者の間に割って入った。
「ムっ!貴様は!あのときのクソ女!」
「誰がクソ女や。いいかげんにせんと、張り倒すぞ!」
「貴様ごときに何が出来るというのだ。やれるものなら、やってみせてもらお……。」
(ベチーーン!!)
派手に頬を張ってやった。ものすごい、いい音がした。これ以上ないぐらいに。
「ぐはおうっ!!」
アイツは軽く吹き飛んだ。女の子にビンタされたぐらいで、子供とはいえ、吹き飛ぶとは。ほんとに言葉通りに張り倒してしまった。
「おのれ!よくも!勇者にもぶたれたことなかったのに!!」
あ~、はいはい。わかります、わかります。魔王だけに勇者ですか。キャラ設定がしっかりしてますねえ。なんのキャラか知らんけど。
「甘ったれるな!勇者にも殴られたことない、軟弱な魔王がどこにおるねん!」
アイツはゆっくりと立ち上がり、優雅にポーズを決めようとしていた。
「フッ、勘違いするな。我があまりにも強すぎる故、勇者ですら我に触れることすら叶わなかったということだ!」
なにカッコつけとんねん。むかつくわ。ダサすぎて誰も関わりたくなかっただけかもしれへんやろ。
「じゃあ、ウチは魔王を倒した最強の女子高生ってことで!」
(ドカッ!!)
「ごぶう!?き、貴様!二度もぶっ……いや、蹴ったな!」
今度は蹴ったった!「二度もぶった」なんて言わせてたまるか。ざまあみろ。
「なにしとん?ミヤコ?」
ここで以外な人物が乱入してきた。オカンが来た。
「ちょー、見てや!こいつが例の変質者やねん。」
ズビシッと自称魔王を指さして見せた。徹底的な証拠が自らのこのこやってきたのだから、このチャンスを逃すわけにはいかなかった。
「は?変質者?えらいかわいい変質者やな!」
何ィ!こんなんがかわいいだとう!……まさかオカン、ショタコンやったんか!
「まあええわ。夜中に外でってのもアレやから、うちに入っといで!」
エェ……。うちに入れるつもりなんかい!
「だが断る……と言いたいところだが、今は敢えて、その誘いに乗ってやろうではないか!フハハハハ。」
コイツ!……アカン。完全にオカンのペースに飲まれてしまった。ここは諦めるしかない。あとでどうやって追い出すか、ゆっくり考えよう。
あ、そうだ。風呂入ろう。アホの相手をしてたら、忘れてた。
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