第3話 我が心の友よ!


 ウチは自室に戻り、さっきまでの鬱憤をどうやって晴らしてやろうか、等と色々悪巧みを考えてみた。ブラソでお兄ぃの世界に侵入したおして、煽りまくったろかな。ブラソとはブラッドソウルの愛称である。あのゲームはオンライン要素があり、他のプレイヤーと協力したり、逆に邪魔をしたり出来る要素がある。それであのアホをコテンパンにしてやろうというのだ。

 

 ……鬱憤は晴らせても、あの話が出来ないのはなんかモヤモヤする。……せや!つぐみんや!つぐみんならわかってくれる。つぐみんとはウチの親友でフルネームは白河順美。いつも、何があってもやさしく受け入れてくれる。いわば、心の友である。とりあえずINFLUWIREを使うことにした。(※INFLUWIREとは写真・動画共有のSNSである。)


 ウチはできうる限りのへこみ顔(というよりただの変顔?)の写メを撮りグループ投稿した。反応が来るまで、嫌がらせ侵入のプランを練ることにした。どういうやり方でハメ倒したろうかな?



「ご飯できたで~!」



 おっと、晩メシが出来たようだ。悪巧みをいったん中断することにした。



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



 晩ご飯の最中も例の変質者騒動について話題は持ちきりだった。なんとか、オトンを手勢に加えることには成功したものの、証拠不十分であると実在説は却下されてしまった。ぐぬぬ。



「まあ、ええわ。……せや!はよ部屋に戻ってリプ来てるか確認せな。」



 スマホを持って降りるのを忘れたり、論争に夢中になりすぎたので、ついつい、そのことを忘れてしまっていたのだ。ドタドタと階段を駆け上がっていき、自室へ飛び込む。ベッドへダイブし、スマホを確認する。



「おっ!来とる、来とる。」



 2件のリプライありの通知があるのを確認。どれどれ。まずは一件目……、



《新種の妖怪か byツル》


「誰が妖怪や!ツルのアホ!」



 ツルとは剣のことで、フルネームは武蔵野剣という。こんな名前でも女子である。実家が接骨院と柔道教室をやっていて、本人も柔道をやっている。ウチとは腐れ縁で小学校低学年からずっと一緒である。互いの手の内を知り尽くした中ではあるが、それ故にウチの身内同様、容赦ないツッコミを平気でしてくる。ときには柔道技を駆使してくる(主に関節技などの組み技系)のでやっかいなヤツである。



「チクショー、もう1件は!」


《ミヤちゃん、何があったの? byツグミ》


「やっぱ、つぐみんや!さすが、我が心の友よ!」



 さっそく、つぐみんに対してリアクションをとる。



《変質者に遭遇してん byミヤコ》



 しばらくすると、すぐに返信が帰ってきた。



《ミヤコに遭遇するとは変質者もハズレを引いたな byツル》


「じゃかあしい!オノレはだまっとれや!」



 余計な野次に反応しているうちにもう1件返信が来た。



《大丈夫だったの!何か変な事されたの? byツグミ》


《変なコスプレ野郎がおってん 見た目は小学生?みたいやったけど byミヤコ》


《近所の子供じゃないの byツグミ》


《あんな子見たことあらへん byミヤコ》


《我が名は魔王とかひれ伏せとかいっとたわ byミヤコ》


《本格的だねー かわいー byツグミ》


《ほんで、ウチに殴りかかってきおってん byミヤコ》


《ええ!大丈夫だったの? byツグミ》


《タニシが返り討ちにしたけどな byミヤコ》


《怪我させちゃったの? byツグミ》


《無問題!甘噛みやったさかい 多分な! byミヤコ》


《おまわりさんこいつです byツル》


「せやから、お前はだまっとれや!ミュートしたろか!」


 相変わらず、ツルの奴、絶妙なタイミングで茶化しよる。


《ほいで家に帰って、オカンとお兄ぃにこの話をしようとしたら、ウチをあんなんとかクルクルパー呼ばわりよ! byミヤコ》


《かわいそう byツグミ》


《草 byツル》



 つぐみんとツルでは反応が天と地ほどの差である。やっぱ、つぐみんは天使やなあ。



《それはそうと、つぐみんも気を付けるんやで byミヤコ》


《うん でもちょっと会ってみたいかも byツグミ》



 いや、やめとき、つぐみん。あんなん相手にしたらアカン。百害あって一利なしや。



《ミヤコに気を付けろ byツル》



「だまれ!お前、明日覚悟しとけよ!猛抗議してやるからな!」



 INFLUWIREのやりとりを終了し、ひとまずお風呂に入ることにした。



「ウーッ、ワンワン、ワオオン!」



 おや、タニシが吠えている。何だろう?

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