第4話

「…元気そうで良かった」


「そっちも、家族増えておめでと」


「ん、ありがとよ…で、オメーがああいう事をしたって話はな、あっという間に街に広まった」


「まあ、そうだろね」


「もちろん、アイツの耳にも入ったらしくてな」


「…」


チラっと、金の眼が俺の様子を覗う。

俺は平気だよって微笑んだ。

何せ本当に平気なのだから。


「まずはよ、ヴァネッサはあの日以降ステージに立つ事を止めて、あそこのクラブも潰れたんだよ」


「へぇ」


「で、その、ヴァネッサは行方知らずになったらしくってな…」


「そうなんだ」


「…オメーが居なくなって気が狂ったってのが、もっぱらの噂だぜ」


「他には?」


「オメーが攫ったとか殺したとか」


「まぁ言われるか」


「オメーがご執心なのは誰もが知ってるからな。でもよ、オメーがどういう人物なのか知ってる奴の方が多いから、ほとんどがオメーを自分の所為で失ったクセにっていう非難が多かった」


「…そぅ」


「うん、炎上したぜぇ。元々色んな野郎と噂になってたからよぉ、アンチもそれなりに多かったからよぉ、連日ヴァネッサ批判のニュースが飛び交ってよぉ。オメーが居なくなると困るのを、街の住人は知ってたからな」


「俺が居なくても大丈夫だろ」


「いや、大変だった。俺はすぐに追い掛けたかったんだが、動けなかった。防衛に手が回らなくって被害も出た。それも全部、オメーを裏切ったヴァネッサの所為だってなってな」


「…そっか」


「んで、今じゃ街の住民にとってヴァネッサは悪の権化。アイツと関係があったっていう奴も批難されて、襲撃された奴も居て…」


「ふーん…」


「で、一応、公式の声明が出された…聞くか?」


「一応、聞いておこうかな」


「『私ヴァネッサは、最愛のゼン以外と愛し合った事など一度もございません。私の肌に触れて良いのはゼンただひとりです。』…だってよ」


「…あっそ」


「まじでどーでもよくなってんのか…」


「そりゃ、そうだろ」


相棒がじーっと俺を見てから、ふひゅうっと変な息を吐いた。

本当に心配してくれていたようだ。

…アリバイ工作頼まれたら、請け負ってやるか。


「まぁ誹謗中傷に耐え兼ねて北海に帰ったんだろな。アイツの匂い街から消えたし」


「そんなに言われたんだ」


「言われてたぜぇ?そもそもオメーと付き合うなって俺は言った事あんだから」


「え、そうなの?」


「そりゃ言うぜ!げーのーじんなんてある事ない事噂されるんだからよぉ!声明文が本当だとしても、傷付くのオメーだし、現に浮気が原因でオメーは失踪したし」


「返す言葉もございません」


「まぁいい。次は変なのに嵌るなよ」


ふすん、と強めの鼻息に、俺はにんまりしてしまう。

相棒が、あん?と眉根を寄せた。

その毛皮寄ったとこ好きなんだが触っていいだろうか。

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