第23話ー2


 海岸沿いに、ドラゴンたちが並ぶさまは、かなりの迫力がある。ちなみに数えてみたら157頭いて、それぞれ名前もついているし、槍や剣を持った精鋭部隊と、魔法石のハマった美しい装飾が施された杖を持った上級魔道士が、ドラゴンの背に1人ずつ乗っている。


 協力者全員が揃ったのを確認すると、リュカが細かく作戦を伝える。


「それでは私たちは、その木箱に入った万能除草剤を、大陸全体に撒けばいいのですね?」

「うん。撒き終わったら、この高速鴉を飛ばして欲しい。そしたら僕とユラハで浄化魔法を使うからさ」

「了解しました。散開して事にあたらせます」

「分かったのじゃ! ハルルいくのじゃ!!」

「はっ! はい!!」


 速さを重視した、いつもより細っそりとした高速鴉を、各部隊長に一羽ずつ渡す。


 フィンさんは、ドラゴンに乗って待機をしていた兵たちに的確に指示を出す。すぐに全員が動き出し、木箱から万能除草剤を手に取り持ち場に向けて飛び立っていく。


 流石ドラゴンと言うべきか、さほど時間をかけることなく、空が黄色く除草剤色に染まって大陸に霧状に降り注ぎ始めた。



「天音、僕とユラハを大陸の中心まで乗せて行って欲しいけど良いかな?」

「にゃにゃん!!」


 僕が頼むと、天音葉任せろ! と言う感じに返事をして、身体を大きく変化させフセをする。翼の生えた黒豹に乗れるのは、かなりテンションが上がる。2人で跨ると、僕たちが落ちたりしない速度で走り出す。


 全力を出さなくても、天音は足が速いので、すぐに大陸の中心に到着する。


「カァカァカァ!!」

「カァカァカァ!!」

「カァカァカァ!!」

「カァカァカァ!!」

「カァカァカァ!!」


 同時に、僕たちを追いかけ、高速鴉が次々と戻って来て、最後の一羽が僕の肩にとまる。



「ユラハ。僕たちもやろう!」

「分かった!!」


 目を瞑り、僕の内で生き続けるレフィーナとアレティーシアに「力を貸して!」と頼む。すると、今までに感じた事がない程の熱い魔力の奔流が噴き上がる。その力を手のひらに集めるイメージをして目を開いて前を見据え。


『大陸浄化』

「浄化!!」


 僕の声とユラハの声が重なり合う。


 七色の輝きが、僕たちを中心にして広がっていき、細かい光の粒が宙を舞い踊り、ゆっくりと確実に大陸全てを包み込んでいく。


 そしてまるで大地が水を吸い込むように、光の粒たちが赤い草と大陸に染み込んでいく。


 深く深く浸透していく。


 次第に、赤い草が茶色く変色して萎れ枯れて、目に見えないくらいの粒子に変わって、サラサラと空気に風に流されて消えていく……。


 けれど赤い草が消えた後の大地は、乾涸びてヒビ割れ痛々しい傷跡が残ってしまった。



『仕上げはレフィーナに任せるの!』


 一体どうすればいいのかな? とヒビ割れた大地を見つめていると、弾むようなレフィーナの明るい声が脳内に響いた。


 次の瞬間。


 先ほどの熱く荒々しい魔力ではなく、人肌を思わせる温かく優しい力が、僕の奥底から綿毛が飛ぶようにホワホワと大陸全体に広がっていく。


 優しく温かい綿毛が舞い降り触れた大地からは、少しずつ緑の葉が芽吹き、草花が風に揺れ、青々とした木々も勢いよく伸びていく……。


 大陸が生き返る。


『これで大陸の傷は癒しましたの。あとは貴女方に任せますの!』

「ありがと! レフィーナ」


 心の中でレフィーナにお礼をする。



「上手くいったな!」

「うん! 大成功だね!」

「うにゃん!」


 ユラハが僕に抱きつき、天音が僕に擦り寄って来て成功を喜ぶ。



「でも作戦は、まだこれからだよ! 次の集合場所に行こう!」

「そうだな! 赤い草は無くなったけど奴隷にされた人たちを助けないといけないからな!」

「うん! リュカたちが待ってる。皆んなと合流しよう!」



 再び天音の背に乗せて貰い、赤い草の加工所に向かって走り出す。


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