第20話ー4
鴉を見送ってから、すぐに地下のレフィーナの元に戻り、先ほど思いついた事を話すことにした。
「万能除草剤だけじゃ、ほんの少し枯らすくらいしか出来なかったから、青の大精霊の加護を受けたユラハの力を合わせて、赤の大陸を浄化しようと思ったんだけどどうかな?」
『可能かどうかは、どの程度の加護かにもよりますの』
「そっかぁ……やっぱり、やってみないと分からないよね」
『そういう事なの。強力な加護であれば良いのですけれど、昔語りを聞いて気がついているかもしれませんが、5大精霊は基本的に人の子を人柱としか思ってませんの。だから直接助ける事はしませんの』
「だから加護なんだね……」
青の大精霊は加護としか言わなかったから、その力が強いのか弱いのか、それとも気休め程度なのかも分からないんだよね。
残念そうにすると、レフィーナが僕の肩に手を置いて微笑む。
『けど今はレフィーナがいますの。もしもの時に人の子側に付く大精霊が産まれるようにと初代王クレアが祈り願い、そして双子神子も生まれましたの。運命を変える為に動くなら今しかないですの』
僕の前に来てレフィーナが僕の手を両手で包み込む。
『レフィーナが全身全霊で力を貸しますの』
スルリと手を離して、僕を羽根のように優しく抱きしめて、僕の額にレフィーナが額をくっつける。
『貴女の中に眠る”アレティーシア”に、レフィーナの力の全てを授けるの』
「そんな事をしたらレフィーナが消えちゃうんじゃないの?」
『大丈夫ですの。レフィーナはアレティーシアと共に、倉田木シンの魂と融合して生き続けますの』
「でも! この地下に住む人々の大切な人を奪ってしまう!」
『大丈夫ですの。此処に居る者たちには、これから起こる全てを話してありますし”この日”が来るのも知っていますの』
レフィーナの言葉に、首だけで後ろを見ると、リーダーの男と目が合った。そして男は「我らは”この日”を待っていた。だから覚悟もしている」と口元に笑みを浮かべた。
『それにレフィーナは奇跡と希望を司る大精霊、真の双子神子と力を合わせれば全てが上手くいくと思いますの』
僕の中に、暖かい陽だまりのような熱に似たモノが入り込んで来る感覚にクラクラする。
『レフィーナの力は……奇跡と希望……必ず……役に……たち……ま……す……の……』
“アレティーシア”と”レフィーナ”の、2人分の熱くて光り輝く魂が、僕の”倉田木シン”の魂を、包み込み混じり合い次第に1つになっていく。
「レフィーナさん、ありがと!」
心を込めてお礼を湖に向かってすると、脳内に『うふふ! 一緒に頑張るの。レフィーナがついてますの』と響いた。
僕の中でレフィーナが、確かに生きてると実感して同時に安心出来た。
そしてレフィーナと融合した影響は天音にも訪れた。湖の岸辺で寝転んでいた天音の身体が眩く光ったかと思うと成獣に変化し始める。いきなりの自分の身体の変化に驚き、天音は目を真ん丸にして飛び起きた。
「うにゃ!? にゃにゃん?」
しかも身体のサイズを自由自在に変える事が出来るようになったようで、天音は自分の身体を大きくしたり小さくしたりして大興奮してしまっている。
「天音は大きな姿もかっこいいね!」
「ふにゃん!」
僕が褒めると、嬉しそうに超ご機嫌に、翼を羽ばたいて見せたり、爪や牙を出してみたり飛び跳ねたり大騒ぎだ。
ちなみに、かなりパワーアップしたみたいで、口から炎がふけるようになった。炎魔法が使える空飛ぶにゃんこ! 可愛い上にかっこいい。おもわず抱きしめると頬をペロペロ舐められた。
「頼りにしてるね!」
「にゃにゃにゃにゃにゃん!」
遊びに満足すると、あくびをして身体を元の小さなサイズに戻し、定位置の僕の胸元に入って寝息を立てはじめた。
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