第20話、地下に隠れ住む者たち
赤い大地をひたすら歩く事3日。ようやく今までとは違う景色が見えはじめた。相変わらず全てが赤いけど、背の高い木々が生えていて、まるで赤い森のようだ。
しかも草の背丈も高くなって、僕が埋もれてしまうくらいワサワサと生えて前が見えづらい。リュカがさりげなく僕の手を掴んでくれたので安心して歩いていく。
「にゃにゃにゃん!!」
暫く歩くと、天音が前方で何かを見つけたみたいで飛び回っている。
そこは、赤い草で念入りに覆い隠されているけど、よく見ると奥へと続く道が見える。
「リュカ! 天音が洞窟の入り口を見つけたよ!」
僕の呼びかけに、リュカとクロトが駆け寄って来た。リュカが両手でソッと草を、かき分けると人1人が通れるしっかりとした道、そして地下へと続く階段が見えた。
「これは人の手によって作られた洞窟だな」
「そんな感じだよね。あとクロトの言う通り人がいそうだね」
「行ってみよう。侵入者用の罠が仕掛けてある可能性もあるから慎重に進もう」
「うん」
地下へ続く階段は、段差も小さくて僕でも降りられそうだったんだけど、いかんせん壁から湧き出た地下水で滑りやすくなっていた。
見て分かっていたはずなのに……。
「うわぁ!」
ドシンッ!!
案の定、見事に転んでしまった。
「大丈夫か? タキ」
「うん。バリアがあるから怪我はしてないよ」
「怪我が無いなら良かった。だが心配だ。オレにおぶされ」
「ありがと」
おんぶして貰うと、リュカはリズムよく2段飛ばしで、階段を一気に降りていった。
ちなみにクロトの腰の縄は、天音が口に咥えている。クロトの監視という重大な役目に、天音は目元をキリッとさせて張りきり気味だ。
「お前たちは何者だ?」
最下層に降りた途端に、真っ白な髪に赤い目をした石槍を持った5人の男達に囲まれてしまった。
「オレはミュルアーク王の子、リュカデリクだ。ここの責任者に会いたい」
「僕はフィラシャーリ王の娘、アレティーシアです」
この地で通用するかは分からないけど、僕とリュカはギィ婆さんの手形も見せる。
「……確かなようだな。ボスに会わせる。ついてこい」
手形をじっくりと確認してから、5人は頷き合うと「こっちだ」と言って、顎でしゃくり歩き出す。ギィ婆さんの手形は、充分に身元の保証が出来る物だったみたい。何だか凄すぎる。
5人組のリーダーだろう先頭の男が、突き当たりの壁に手をかざすと赤い魔法陣が現れ、壁が砂のようにサラサラ消えて、更に奥へと続く道が現れた。
「結界?」
「多重結界が施してある。これがないと一瞬で見つかって我らは殺されるからな」
奥へと進みながら振り返ると、そこはもう壁に戻っていた。
暫く歩くと、地下とは思えないほどに明るくて緑の草木、そして七色に輝く綺麗な湖まで見える広くて、清浄な空気感のある集落に辿り着いた。
この感じ知ってる。噴水のような滝は無いけど、此処は、まさに……。
「まるで大精霊のいる場所みたいだね」
「ククク。当たりだ。我らのボスはその大精霊だからな」
「え!? でも白の大陸には……」
大精霊の名前を口に出そうとした瞬間、空気のようなモノに口を塞がれてしまい、それ以上は声に出すことは出来なかった。
『その名を口にしてはいけませんの!』
空色の長いストレートの髪に、空を思わせる蒼の瞳、透き通るような白い肌の女性は、飾り気のない白いワンピースをひるがえし僕の目の前に現れた。
ただし身長は僕と同じ、もしくは少し低いくらい。今までの大精霊は人間より大きく感じたから何だか可愛いと思ってしまう。
『これでも、レフィーナは100年以上は生きてますの! 立派な大人なんですの! けど可愛いと言って頂けてとっても嬉しいですの!』
思っている事を読まれてる?
『レフィーナは大精霊だから、そのくらい出来ますし、悪い人と良い人を見分ける事も出来ますの!』
大精霊の名前って、安易に教えて貰えないはずだよね? 良いのかな?
『うふふ! レフィーナは、そのように細かい事は気にしませんの! そんな事より本題を話しなさい。時間がないのでしょう?』
「うん。ありがと!」
僕とリュカで、今まであった事を包み隠さず全部話して聞かせた。クロトは自分の話題が出ると、痛みを堪えるような居心地悪そうな様子を見せた。
『”レフィーナが産まれた”から、大変な事になっているのは分かっていたの。けどそこまで状況が悪化してるとは思いませんでしたの』
産まれたって、どういう事なんだろ? 大精霊って最初は5人だったんだよね? 大精霊って増えたり出来るの?
『うふふ! レフィーナは特別なの!』
「特別?」
『そうなの! 破滅の刻に生まれ落ちる。人々にとっての最後の希望の光なんですの』
僕の目の前で、レフィーナは微笑みながらウインクする。
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