棺桶から始まる異世界も波瀾万丈〜前世で恋人だと思っていた彼女に裏切られた俺は、次に目が覚めたら5歳の女の子に転生していたので、2度目の人生はハッピーエンドを目指すと決めた〜
第6話、異世界の山は溶けてしまいそうなほど暑い。
第6話、異世界の山は溶けてしまいそうなほど暑い。
「逃がしたって誰がそんな事」
「間違いなくティルティポーの奴らだろうな」
「助けに来た?」
「ラウルとシャイナは人を助けたりはしない。あの2人が裏切らないよう隠密にでも見張らせていたのだろう」
「そういえば、サリアたちが魔族退治なんてしないとか大声で話してた。あとなんか金銀財宝盗むって言ってたような? そのことを聞いて連れ戻しに来たのかな」
「それもあるが、一番の問題は情報が漏れることを恐れたはずだ。実際あの2人はペラペラ色々な事を話してくれたからな」
うわぁ~。見張りに気づかず任された仕事を放り出して、他国の城に盗みに入った上に情報漏洩とか、めちゃくちゃヤバいことしてる。
「サリアたちは、これからどうなるの?」
「間違いなく2人は奴隷落ちだろうな。だから忍び込んで盗みを、はたらこうとした事に関しては放置で良いと思っている。眠り薬で眠らされた兵士はいたが目を覚ましたし、大した被害も無かったからな」
「え! 奴隷制度なんてあるの?」
「奴隷と言っても、本来は犯罪者に『支配の首輪』を嵌めて、逃がさないようにしてから働かせるのが目的だ。だから普通に暮らしてるだけなら、まず奴隷になる事は無い。だが最近のティルティポーは一般人を攫う事も厭わない。奴等がは一体、裏で何をしているのか……」
「良かった普通は無いんんだ……でも一般人まで攫うって……」
「今、例の件と共に探らせてる」
「夜会の後、母さんとリュカがミュルアークの王様が捕まってるって話してた事?」
「あぁ。そうだ」
正直な話サリアたちが、どうなろうとどうでもいい。前世の【俺】を殺し、この世界でも僕を殺そうとしたのだから助けるつもりは全くない。
でもティルティポーの不審な動きは気になってしまう。一般人まで巻き込むなんて碌な事してなさそうだ。
「僕にも出来る事あるかな?」
「ありがとう。何かあれば手伝ってくれ」
「うん!」
コンコンコン!
ノックと共に、扉が少しだけ開き女性が顔を覗かせた。
「入っても良いかしら?」
「母上」
「もう出発するのよね?」
「はい」
「その前にアレティーシアとお話がしたいの」
「分かりました。どうぞ」
内緒話のように小さな声で喋りながら、リュカが扉を開け女性を招き入れる。
「アレティーシア会えて嬉しいわ。私はリュカデリクの母ルシェリアよ。よろしくね」
「ルシェリア様、アレティーシアです。よろしくお願いします」
赤い色のドレスを着た華やかなルシェリアに抱きしめられる。同時に、ふわりと甘い薔薇の良い香りが鼻の奥まで届く。
「よく顔を見せてちょうだい」
さすがリュカの母。緩くウェーブがかった金の髪の毛はサラサラで腰まで届き、目の色も輝くような金色だ。小麦色の肌は健康的だし、かなりの美人だ。だから見つめられると照れてしまって目が泳ぐ。
「やっぱりそうだわ! リュカデリクから貴方の事情を聞いて、もしかしてと思っていたの」
「もしかしてって?」
「この世界に来る前の、貴方の父はルドラという名前ではなくて?」
「そう……だけど……?」
なんで知ってるんだろ? リュカにも両親の名前までは言ってないはずなんだけど? しかも生まれ変わって、姿が違うはずだから父の面影も無いはずだ。
「戸惑わせてごめんなさい。私の家系は代々星読みをしたり、人生についての相談を受けることが生業なの。それが出来るのは人の魂の真実を見透す力を持ってるからなの。貴方の魂はルドラととてもよく似てるの。だから親子だと確信したのよ」
「凄い力ですね。じゃあ。もしかしてルシェリア様は父に会ったことがあるのですか?」
「ええ。ルドラはミュルアーク王室、お抱えの研究者だったの。だから私も幼い頃は本を沢山読んで貰ったのよ」
「そうだったのですね。と言うか、父が王室お抱えの研究者だったことに驚きました」
「とても優秀な人だったわ。けれど研究中の爆発事故で姿を消してしまったの」
今その話を聞くと本当の事だって分かるけど、倉田木シンだった時は、異世界なんて信じてなかったから、父は海外から日本に来て【俺】の母、美春に出会って結婚したんだと思ってたんだよなぁ。
「事故で日本に来たって聞かされてたけど、その時の爆発の事だったのかな?」
「間違いなくそうだと思うわ」
「びっくりですね」
「そうよね。でも私は貴方が、ここに戻ってくる運命だったと何となくだけど分かっていたの」
「ルシェリア様には全てが見えてそうですね」
「さぁ。どうでしょうね。運命は変わるし変えられると私は信じているの」
「それはどういう……」
更に聞こうとすると、僕の唇に人差し指を押し当て口を封じるようにする。
「私は公務があるからもう行くわ。今日は朝食を御一緒できなくてごめんなさい」
ニコリと微笑んで部屋から出て行ってしまった。肝心な事は聞けなかったような気がするし、ちょっぴり誤魔化された気分だ。
けど思ったより深く、僕はこの世界に繋がっていた。そしてルシェリア様は星読みとか見透す力があると言っていたから、もしかすると僕がここにいる理由も見えている気がする。
「少し遅くなったが朝食にしよう。そのあと山に出発だ」
「うん! 分かった」
カリンさんたちが、用意してくれた朝食は今日も豪華だ。コーンと卵の温かいスープに、こんがり焼き目のついた黒パンと新鮮なサラダ、そして薄く切って焼いた肉まである。そのどれもが美味しくて、おかわりまでして食べてしまった。だって今日の昼からは、また乾パンに干し肉だからさ食べられるときには、腹いっぱいにしておきたかったからさ。
「1時間後に玄関で待ってる」
「うん!また後で」
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