第5話ー4
次の日の朝、目が覚めると隣にリュカが寝ていた。
カーテンの隙間からもれる朝日に キラキラ輝く金色の髪の毛に自然と手が伸びる。思ったより触り心地抜群だ。
「ふわっふわで柔らか」
「起きたのか」
昨夜はゴタゴタで余り眠れなかったのだろう、目をしばたかせ少しボンヤリしているようだ。
「おはよ。眠そうだけど、あれから忙しかった?」
「おはよう。タキが寝てからアイツらの尋問に行ってきたんだが、拷問するまでもなく聞いて無い事までペラペラ喋ってくれた。おかげで早く終わって2時間ほど寝られたな」
「そっか。何か聞けた?」
「お前にとっては重要な、この世界に来る過程まで話してくれた。見るか?」
ベッドサイドの机に手を伸ばして、羊皮紙を取り僕に見せてくれた。
-------------
ー極秘事項ー
サリアが倉田木シンの両親を殺した理由は、シンの父親の研究書を盗もうと書斎に忍び込んだ時、その事に気が付いた父親が研究書を持って逃げ出した。ムカついたから車で追いかけ父親を撥ねて研究書を奪った。後を追ってきたシンの母もナイフで殺して山に埋めた。
そして、事故の事を疑い始めた息子シンを監視する目的で近づいた。
研究書に描かれた双子神子の証のタトゥーを胸に入れ別世界に行く準備を整えた。シンを殺したあの日、研究書に描かれていた魔方陣を、リビングの床にシンの血で描いた瞬間、この世界に召喚されていた。
-------------
「こんな事になるなら一人暮らしなんてしなかった。あいつらから守ることは出来なくても、父さんと母さんの傍には居られたはずだからさ……」
本当の事を知るまでは怒りと悲しみで、どうにかなってしまいそうだった。けれど今は、後悔はあるものの、事実を知ったからなのか心は落ち着き始めている。
「復讐するか?」
「許せないし怒りも治まらないし悲しみもある……でもさ。今の家族を大切にしたいんだ。だから復讐はしない。それにリュカもいてくれるから怖く無いし寂しくないから大丈夫」
「お前は強いな」
「強くなんかない!」
「もしもオレが違う世界で生き返ったとしたら、周りは知らない人間ばかり、更に環境も違うとなればパニックになるだろう。ましてや自分を殺した相手に遭遇したら怒りや憎しみで精神を病むと思う」
「う~ん……確かに異世界に来てビックリしたし、サリアたちがいると思うと怖いよ。でもさ僕って単純で楽観的だからさ。せっかく生き返ったんなら楽しみたい気持ちの方が大きいんだ。特に魔法なんて前世では使えなかったから面白いんだよ!」
「やっぱりタキは強いと思う! 教会で初めて見た時から、オレにはお前が輝いて見えたんだ」
「かっ! 輝くって何!?」
「今も眩しいくらいだ。大好きだよアレティーシア」
トドメとばかりに額にキスをされてしまった。
「な! 朝から何言ってんの!?」
「一目惚れは叶えるものだからな!」
ウインクまでして、直球ストレートな告白をしてくるリュカに、アタフタして視線が泳いでしまう。
「待つって言った!!」
「あぁ。待つ! が手加減もしない」
「!」
真っ赤になってジタバタしていると、リュカが立ち上がり頭をクシャリと撫でる。
「落ち着いたらタキは着替えて待ってろ」
「落ち着けるわけないじゃん」
リュカの太陽のような匂いが残るベッドをゴロゴロ転がりまくりながら、熱く火照ってしまった顔を両手で覆う。
「イケメンの破壊力ハンパねぇ……」
深呼吸をして落ち着かせてから、カリンさんに着替えを手伝ってもらっていると、廊下からガシャガシャという音が聞こえ始め、ノックもなく扉が開かれリュカが慌ただしく入ってきた。その後ろには鎧を纏った兵士たちの姿まである。ガシャガシャ音は、鎧が擦れる音だったようだ。
「タキ! 無事か?」
「大丈夫だけど何かあったの?」
「双子神子が地下牢から消えたんだ。と言うより逃がした誰かがいる」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます