第5話、本気の告白は破壊力抜群だ。
早朝、街道を進んでいくと、馬車や多くの荷物を背負った一団や、一目見て冒険者のグループと分かる筋骨隆々な男女が、すでに長い列を作って、王都ミュルアークへの門が開くのを待っていた。
「僕たちが一番だと思ったのに凄い人数が並んでるんだ」
「門の前で野営をする人々もいるからな」
「そっか。王都の近くで大勢で野営した方が安全かも」
「そういう事だ。門には兵士もいるから何かあった時には頼ることも出来る」
今まで見てきた街とは違い、ミュルアークの王都を守る塀は見上げるほどだ。当然、中の様子も全く見えない。
「開門!」
朝日が地平線の向こうから、柔らかい光を伴って現れると同時に門が開いた。列もゆっくりと動き始める。
「リュカデリク様、長旅お疲れさまでした」
「ただいま」
列に並んでいるリュカに気が付いた兵士が、駈けよってきて元気いっぱいに挨拶をする。門もリュカがいれば顔パスで入ることが出来た。
「王城まで馬車を出しますか?」
「あぁ。頼む」
兵士が門の隣にある待機所に合図を送ると、直ぐに馬車がやって来たんだけど、流石は王都仕様だ。
白く長い角の生えた白馬の2頭だて馬車だ。毛並みも太陽に照らされキラキラ輝いている。昔、図書館で読んだ童話に出てくるユニコーンみたいで格好いい。
「凄く綺麗な馬だね。触ってもいい?」
「おとなしい子たちなので撫でてやってください」
「ありがと!」
リュカに抱きかかえてもらい、風に揺れるたてがみを触ってみる。サラサラとして、とても柔らかい。次に頭も撫でてみると、僕の顔に体をスリスリ押し付けてくれる。
「可愛い!」
「タキの事が気に入ったようだな」
「へへへ!」
ひとしきり撫でまくってから馬車に入る。
最近は、森や草原ばかりだったから、窓の外の街の様子が新鮮で賑やかで見ているだけで楽しい。目的地の王城までの20分がアッというまに感じてしまった。
城へと続く豪奢なアーチ門をくぐり抜け、前庭に馬車が止まる。
「リュカデリク様、お帰りなさいませ」
「ようこそ。アレティーシア様」
「ただいま」
「お邪魔します」
玄関と言うには広すぎるけど、執事やメイドさんがズラリと並んでお辞儀をしている。テレビとか映画でしか見たことのない光景にテンションが上がってしまう。
「なんか凄い」
「バタバタしていて気が付かなかったかもしれないが、フィラシャーリの城もこんな感じだったはずだ。今度帰ったら見てみるといい」
「そっか!じゃあ早く兄さんを見つけて帰りたいな」
「そうだな」
クシャリと僕の頭を撫でる。リュカはよく頭を撫でてくる。もしかしたら、撫でるのが好きなのかもしれない。僕もリュカの大きな手のひらは、男らしくて気に入っている。というか力強くて逞しくて羨ましい。
「今から登山?」
「いや。今日は一日休んで、明日の朝にセランケーナ山脈に向かおうと思っている」
「分かった」
玄関を入ると、深紅の毛足の長いフカフカ絨毯が敷かれ、中央階段は白くツヤツヤの石で出来ている。階段を上っていくと、一定間隔に、代々の国王の肖像画が飾られて迫力がある。夜ここに来たら少し怖いかもしれない、と思うくらいには魂を込めて描かれている素晴らしい絵だ。
「オレは母上と軍部に旅の報告に行ってくる。夕食の時に会おう。それまではゆっくりしてくれ」
「うん。あ! 夕食まで城の中の探検していい?」
「もちろんだ。メイドのカリンをつけるから楽しんでこい」
「アレティーシア様。初めましてカリンです。よろしくお願いいたします」
「リュカありがと! カリンさんよろしく」
僕たちの後ろを、ティーセットを乗せた台車を押しながらついて来ていた、カリンさんに挨拶するとニコッと微笑んでくれた。三つ編みにした金髪と、ブラウンの瞳の可愛いメイドさんだ。
「では行ってくる」
「いってらっしゃーい」
手を振って別れる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます