第4話ー4

 朝、起きると嵐も治まり静かになっていた。階下に行くと2人の姿は無く、その代わり荒らされまくった部屋が残されていた。リビングの片隅では、リュカが床に座り込んで本を読んでいた。僕が起きてきたのに気が付くと、ニヤッっと何だか悪そうな笑みを浮かべ手招きをする。隣に行って座ると僕にも本を開いてみせてくれる。


「クックックッ! 奴ら帰る事は出来ないかもしれないぞ。それどころかヤバい事になるな」

「どういう事?」

「地球と、この世界は確かに繋がって行き来は出来る。ただし前世の倉田木シンと両親が生きていることが必要不可欠なんだ。血の契約などと仰々しく書いてあるが、それぞれの世界の親を持つハーフの子供だけが行き来できるって事のようだ」

「じゃあ。倉田木シン以外には2つの世界を行き来することが出来ないって事だよね?」

「あぁ。そうなるな。倉田木シンの両親は地球に戻るときの道しるべだ。血の絆は別の世界に行ったとしても繋がってるってことだ」

「命綱みたいなものかな。じゃ! 双子神子の召喚が成功したわけじゃないとか?」

「2つの世界の血を引く倉田木シンが殺されて、皮肉にも血の契約によって一方通行の道が出来て、その時に丁度都合よく神子の召喚が行われていただけの話だとオレは思う」

「でも胸に証が現れたって!」

「あんなものいくらでも捏造できる」


 リュカが本の真ん中あたりのページを開いて、2種類の神子の証を見せてくれた。本に載っているならコピーでもしてタトゥーを日本にいるときに入れておけば、それらしく見えそうだ。


「確かに出来るかも」

「本来の召喚じゃないとすれば、いずれボロが出る。そもそもティルティポーのラウルとシャイナは王では無い。偽りの神子だと分かれば、ただではすまない」

「王じゃないと呼べないの?」

「あぁ。王の血で魔方陣を描き、王が祭壇に祈りを捧げて初めて双子神子の召喚が出来る」

「かなり大変な儀式なんだ」

「そうだな。だから600年くらい儀式は行われていなかった」

「聞けば聞くほど、おかしい召喚なんだ。てことはサリアたちは……」

「タキが手を下さなくても奴らには破滅しかないだろうな」

「そっか。うん……」


 理由が分かって、許せない気持ちが大きいけど一晩寝て少し気持ちに余裕が出てきた。リュカがいつでも傍にいてくれるのもあると思う。


「これからの事は少しずつ考えればいい。朝食を食ったら出発だ。明日にはミュルアークに到着する」


 リュカが僕の頭を、クシャリと撫でて立ち上がると旅支度を始めた。


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