第8話 特攻の脅威

 偵察艦ハイドラ号は哨戒任務中に敵偵察艦と遭遇して交戦した。

 これを撃破して爆散させるも左舷側装甲に深刻なダメージを負い、中破した。


 修理の為帰投すべく、最大戦速で基地のある第4惑星に向かっていた。

 敵の前衛部隊は第5惑星の影から現れ、駐留艦隊に向かってきた。

 旗艦フレッチル号は提督の指揮の下、駐留艦隊を率いて出撃した。

 第4惑星と第5惑星との間で激しい戦闘を繰り広げる事になる。

 その戦闘の中、哨戒艦ハイドラ号は第4惑星を目指していた。


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 駐留艦隊は敵の前衛部隊と思われる艦隊と、第5惑星と第4惑星との中間辺りで激突しようとしていた。

 敵の前衛部隊は約100艦で、駆逐艦から巡洋艦の小型艦を中心に構成されていた。

 駐留艦隊は偵察艦の半分程度の大きさの戦闘艇を除き、巡洋艦と戦艦を中心に約200艦で構成された艦隊だ。


 戦闘機は星系内の各所に配備されており、その数は200機に及ぶ。

 艦隊は駆逐艦から戦艦まで多種多様な艦種が揃っていた。

 数的にも質的にも駐留艦隊が有利だった。

 また、駐留艦隊の戦闘艦のうち、1/3の艦が輸送任務にて第5惑星と第6惑星の間を航行中だった。

 急を要するため足の遅い輸送艦の護衛を5艦のみにし、それ以外を後詰として予想される戦域に急行させた。


 また、各ドッグや基地から戦闘機約200が緊急発進され、駐留艦隊本体に合流しつつあった。


 駐留艦隊提督であるベイグツ中将は、旗艦フレッチル号から指揮を執った。


「全艦、敵艦隊に接近せよ!敵を一掃するぞ!」


「了解!」


 各部隊は提督の命令に返事を返す。

 駐留艦隊は敵の前衛部隊に向かって進撃した。


 敵の前衛部隊は駐留艦隊に対して猛攻を仕掛けた。

 敵の戦闘艇は駐留艦隊側の戦闘機と激しい戦闘を展開した。

 敵の巡洋艦は駐留艦隊の巡洋艦や駆逐艦に向け主砲を放ったが、ミサイルは打ってこない。

 敵の攻撃は速くて正確だったが、駐留艦隊はそれに負けていなかった。

 戦闘艇の数は巡洋艦の数と同じ40だった。


 駐留艦隊の戦闘艇は敵の戦闘艇を次々と撃破した。

 味方の巡洋艦や駆逐艦は敵の巡洋艦と駆逐艦を次々と沈め、戦艦は敵の前衛部隊に主砲を放ち、一撃で複数の敵小型艦を爆破した。


「敵の前衛部隊は壊滅状態です!我々は殆ど被害を出していません!間もなく全滅できると思います」


 参謀が報告した。


「よくやった!我々は勝利したぞ!」


「提督、おめでとうございます!」


 各艦から祝福が入る。


「これで敵は引き下がるだろうな」


「そうですね。敵はもう手詰まりです。これまでのパターンですと、一方的に前衛がやられると本体は撤退し、追わなければ反撃してきません」


 提督の言に参謀が答えた。


 丁度その時、敵艦隊の本体が駐留艦隊側から見ると、第5惑星の反対側から現れた。

 レーダーに反応があり、レーダー担当が叫んだ。


「て、提督!敵の本体と思われる艦隊が現れ、こちらに向かってきています!」


「何だと!?」


 提督は驚き、つい叫んだ。


「第5惑星の反対側から大量の反応が出ています!て、敵の本体です!偵察艦ハイドラからの画像出ます!や、約1000隻の大規模な艦隊です!」  


 レーダー担当が声を震わせながら言った。


「1000隻!?間違えではないのか?」


 提督は呆然とした。


「提督、これはまずいです!このままだと我々は包囲されます!」


 参謀が慌てて告げた。


「くそっ!やられた!これは罠だったのか!」


 提督が怒りにテーブルを叩いた。


「全員聞け!敵の本体が現れた!このまま何もしなければ我々は包囲される!全艦、防御大勢を取り防水陣形をとれ!射程に入り次第、敵本体に対して攻撃せよ!」


 狼狽えながらも提督が命令を出す。


「了解!」


 各分艦隊が返答した。

 駐留艦隊は敵の本体に対して数的に不利な状況だったが、抵抗する意思を見せた。


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 敵本体の出現に艦隊が右往左往している頃、偵察艦ハイドラは損傷した左舷側の封印を行い、索敵を行いながら帰投すべく航宙していた。


「か、艦長、や、やばいです」


「ロイル、後で私の部屋に来なさい!それと何度落ち着けと言ったら分かるんだ?ここはもう士官学校じゃないんだぞ」


「まあまあ、その辺にしといてやれって。さっき死闘を繰り広げたばかりでさ、若いやつには刺激が強すぎて呂律が回らないだけだから。で、ロイルちゃん、何がやばいんだい?」

 

 手厳しい副長を艦長が宥める。

 平時の艦長はおおよそ軍隊で人の上に立つような態度を見せないが、有事には戦艦の艦長より的確な指示を出す。


「か、艦長。申し訳ありません。これを見れば分かるかと」 


 レーダーの解析結果を大型スクリーンに写した途端、皆が口をぽかーんとした。


 敵の本体は約1000隻の大規模な艦隊だったが、実際はそのうち約300隻が戦闘艦で、約700隻は艦載艇だった。


 しかし、おぼろげな輪郭が数値として艦影が1000だと示していた。 


「通信士、念の為旗艦と司令部、それと第3惑星にいる第12輸送艦隊に情報を送れ!」


「アイアイサー!」


「我々にはどうにもならないが、補給を済ませたら、再度哨戒に出るからそのつもりでいろ!」


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 そしてその報と、レーダーの解析結果を見た提督はゴクリと唾を飲み込んだ。  


 戦端が開かれる頃には詳細な構成が分かったが、戦闘艦の数が少ないのは幸いだったが、艦載艇の数は脅威だった。


 敵の艦載艇は艦載機としては大型で、偵察艦の半分ほどの大きさの戦闘艇だった。

 人類側もそうだが、戦闘機や戦闘艇は重力ジャンプができない。


 参謀の見解は、前衛部隊と本体に別れたのは、艦載艇の数が多かったため、戦闘艦から複数機出すのに時間が掛り、1艇のみ積んでいる艦を前衛部隊にして先行させ、本体の準備が整うまでの時間稼ぎをしていたのだろうとなった。


 敵の艦載艇は局地戦向けで、全長60mほどの機体に30m級のミサイルを1本搭載し、軽巡航艦並みの主砲を1基搭載していた。

 その火力は駐留艦隊にとって大きな脅威だった。


 提督が旗艦フレッチル号から指揮を執り、敵本体に対し攻撃命令を出した時に戻る。


「全員聞け!敵の本体が現れた!このまま何もしなければ我々は包囲される!全艦、防御態勢を取り、防水陣形をとれ!射程に入り次第敵本体に対して攻撃せよ!」


 敵の本体は既に駐留艦隊に向かっていたが、駐留艦隊も敵本体に向かって進路を変更した。


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 戦闘開始予想時間頃、射程に入った途端敵が火蓋を切った。


 敵の艦載艇は駐留艦隊に対して猛攻を仕掛けた。

 敵の攻撃艇は1発しかないミサイルを即時に放ち、主砲で駐留艦隊に攻撃を浴びせた。

 駐留艦隊も敵の攻撃艇に対し反撃する。

 駐留艦隊の戦闘艇や攻撃機は、敵の攻撃艇とドッグファイトを展開した。駐留艦隊側の巡洋艦や駆逐艦も、敵の攻撃艇に対し主砲や副砲を情け容赦なく撃ち込む。


 ミサイルも敵艦に対して一斉に放たれた。 

 そして大きく貢献したのは駐留艦隊の戦艦で、敵の攻撃艇群に大口径の主砲を放った。


 敵の攻撃艇の攻撃力は脅威だったが、紙装甲としか言えないほど防御面が脆弱だった。

 シールドも前方のみにあり、デブリや星間物質程度を防ぐのが精一杯で、駆逐艦の副砲であっても当たれば一撃で大破だ。

 駐留艦隊は敵の攻撃艇を狙い撃ちにし、敵攻撃艇は次々と爆散して宇宙の藻屑となり、炎の花を散らした。

 最初こそ数に圧倒されたが、艦隊データベースにある戦力と乖離していた。

 参謀もこれまで知られているのとは違い、防御力を捨てて攻撃力に特化したのだと判断した。


「敵艦載艇は予想よりかなりの勢いで減ってきました!現在我々の方が優勢です!」


 参謀が提督に戦況報告をした。  


「皆、よくやった!我々は勝てるぞ!もうひと踏ん張りだ!敵はミサイルを使い切った!主砲に気を付けて各個撃破せよ!」


 提督が全艦に通信した。 


「流石にこれで敵は引き下がるだろうな?」 

 

「そうですね。敵はもう撤退しかないでしょう!」 


 提督の質問に参謀が答えた。


 しかし、その時レーダー担当が叫んだ。


「提督!敵艦が特攻を始めた模様です」


「何だと!?捨て身か?何故だ?」


 提督が驚きの声を上げた。


「敵が自らの艦をこちらの艦に突っ込ませています!」


「くそっ!これは罠だったか!」  


 提督が怒りに震えた。


「全員聞け!敵の艦が特攻戦法を始めたぞ!全艦、防御陣形をとれ!敵艦の突撃に注意せよ!」


 駐留艦隊は敵艦の特攻に恐れをなした。




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