第7話 偵察艦ハイドラの運命

「主砲発射!」


 副長が叫ぶと、照準を合わせた武器管制士が主砲発射スイッチを押した。

 偵察艦ハイドラの主砲から青白い光が放たれ、敵艦に向かっていく。

 敵艦は回避しようとしたが、間に合わなかった。

 敵艦との距離から、発射すれば瞬時に着弾すると言ってもよい。

 光が届いてから0.01秒ほどしかタイムラグがなく、照準を合わされないように回避行動を取るべきだった。

 その場合、AIに照準を任せる事になるが、今回は回避行動を取る前だったので、手動で照準を合わせた。


 陽電子加速砲の弾体は敵艦の外殻を穿ち、内部に侵入していった。

 その瞬間、敵艦が激しく爆発し、穿たれた穴より破片や空気等が噴出した。


「命中です!命中しました!」


 武器管制士が報告した。


「撃沈したか確認せよ!」


 艦長の声が冷静に響く。


「た、大破です。しかしまだ敵艦は動いています!」


 レーダー担当が警告した。


「何だと!?あれでまだ動くのか?」


 艦長が驚きの声を上げた。


「敵艦はまだ速度を落としていません!」


 レーダー担当が報告した。


「くそっ!頑丈な奴だな!」


 艦長が悪態をつく。


「もう一発撃てるか!?」


「はい!陽電子加速砲の再充填完了です!」 


 副長の問に武器管制士が答えた。


「よし、もう一発撃て!」


「発射!」


 艦長の命令に武器管制士が叫んだ。

 哨戒艦ハイドラ号からもう一度青白い光が飛び出し、敵艦に向かって突進した。敵艦は再び回避しようとしたが、またもや間に合わなかった。陽電子加速砲の弾体は敵艦の後部に命中し、大穴を開けた。その瞬間、敵艦がさらに激しく爆発した。「命中!命中です!」


 武器管制士が報告した。


「撃破完了!」


 興奮気味に艦長が告げた。


「敵艦は停止しました!動きません!」


 レーダー担当と興奮気味に報告する。


「我々の勝ちだ!距離をとろう」と


「後方に向けてレールガンを準備しろ!敵艦に最後の一撃を与えるぞ!」艦長が勝利宣言をすると副長が命令した。 


「了解です!レールガンの充填開始です!」


 即時に武器管制士が答えた。


 哨戒艦ハイドラ号は、敵艦から離れて後退した。敵艦は静かに漂っていた。


「距離は100kmです。レールガンのエネルギー充填完了です!」


 武器管制士がモニターを確認すると報告した。


「よし、発射するぞ!目標は敵艦の中央だ!」


 艦長が副長に命令した。


「カウントダウンの後発射せよ!3、2、1、ゼロ!」


「発射!」


 副長によるカウントダウンの後武器管制士が叫けび、レールガンを発射した。


 哨戒艦ハイドラ号から金属製の弾体が高速で飛び出し、敵艦に向かって突進した。


 敵艦は反応する暇もなかった。

 いや、最早艦を動かすことができなかった。


 レールガンの弾体は敵艦を真っ二つに切り裂き、残骸を四方に飛ばした。


 その瞬間、敵艦が完全に破壊され、爆散した。


「命中!命中!敵艦の撃沈を確認しました!」


 武器管制士が興奮して半ば叫んで報告した。


「我々は生き残ったぜ!ふう」


 艦長が安堵のため息をつく。


「しかし、代償は大きかったな…・・・」


 副長がつぶやいた


「どういうことだ?」


「クルーの1割を失いました……」艦長の問に副長が答えた。


「何だって!?」


 艦長が驚きの声を上げた。


「敵の砲撃で左舷側に深刻な損傷を受けた時、そこにいたクルーの一部が死傷しました・・・」


「くそっ・・・」


 副長の報告に艦長は悲しみに襲われた。


 敵偵察艦を撃沈したことを旗艦に報告した哨戒艦ハイドラ号は、損傷した装甲やシステムの応急処置をしながら第4惑星の軌道付近に向かっていた。

 第4惑星は駐留艦隊の拠点となっていた惑星で、軌道上には工廠や補給基地があった。哨戒艦ハイドラ号はそこで修理と補給を受けるつもりだった。

 そんな時、損傷部位の応急処置の指揮をその場で採っていた艦長にレーダー担当から報告が入った。


「レーダー担当から連絡です!」


「何だ?」


 艦長が返事をする。


「敵の前衛部隊が第5惑星の影から現れました!約100隻の艦隊です!」


 レーダー担当が声を震わせながら伝えた。


「本当か!?」


 艦長が驚いて聞き返した。


「本当です!敵の前衛部隊は我々の駐留艦隊に向かってきています!」


 レーダー担当の上ずった声がブリッジに響いた・・・

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