第4話 ステータス!!

《この世界には多くの転生者が存在しており、さらにこの世界はおよそ1000年の歴史があります、よって個体名”宮本咲”のような非転生者も存在します》


そりゃそうか、それほどの歴史があって子供の1人も作らないって方がおかしいもんな。


「そんなに驚いてどうしたんでござる?」

「いや、なんでもない」


いやにしても驚きだよ、この世界子供も作れんのかよ。生々しいリアルさだな。


「まぁそこに関してはもう突っ込まない、とりあえずなんで金がないのかについて聞こうか」


そう、こいつが転送者ではないとはしてもこの世界で生まれたのならば親がいるはず、子に一銭も持たせず、持たず、町に繰り出すことなんてあるか?それもこんなに腹を空かせてだぞ?


「うっ、それは………をカチャッタ」

「え、なんて?」

「父ちゃんからもらったお金全部刀買うのに使っちゃった………」

口をすぼめ、先細りしていく咲の声と同じく俺の眉毛も次第に垂れ下がっていく。


「………じゃあここの会計は?」

「え、ルイのおごり?」

悪びれているもののメニュー表から目を離さない咲のその行動に対して、俺の琴線がぶちぎれそうになったとき、咲が突然声を荒げた。


「こ、これだーーーー!!!」

「え、何?」

「これ!これ!これでござる!」

咲が見せてきたのは"店長とトリノボアの大食い対決!勝てば無料!”と書いてるメニュー表だった。確かにこれに勝てば食事代は浮くと思うが勝てんのか?


ふとキッチンにいる大柄な男を見る、腕が俺の太ももよりも太いし顎が異常発達してるところを見ると幾度となく大食い対決に勝利してきたのだろう。だからこそあの店名だったのか。


かたや咲の方は華奢で背も小さい、こんな体型であの店長に勝てるのだろうか。


「まぁやってみたらいいんじゃないか?」

「うん!!」

「………」


無邪気なこの笑顔を見ていると食事代くらいだしてもいいかと思うようになってきてしまった、いやもう呆れたのかかもしれない、仕方ない自由に食ってくれ。


「店長!!大食い対決でござる!!」

「大食い一丁!!」


まぁ確実に負けるだろうが、きつそうだったら手伝ってやるか。


20分後

大食い対決を終え店の前で一息ついていた。


「………お前本当に勝っちゃうとは、店長もまさか負けるとは思っていなかったっぽいし、お前に負けた後の店長の姿筋肉がしぼんでひどいもんだったぞ」

「うん少しやりすぎてしまったかなって思っちゃったから腹3分目に抑えちゃったでござる」

「え?」


こいつが食べたのは日本でいうところの普通のステーキ40食分に相当するものだった、それを平らげておいて未だ腹3分目だとは思わなかった。


「引くわ普通に」

「ひくわ?その言葉はよくわからんが、とりあえずルイには助けられた、拙者に手助けできるものがあるのなら言ってくれ」


咲にしてほしいこと………今のところ目標という目標はない、シナリオも開けようとは思ってない、なら俺に今必要なのは単純にこの世界を生き抜くための力だな。


「なら俺のレベル上げに付き合ってほしいかな」

「あぁ、もちろんいいでござるよ!!」

「助かる」


なんかこいつ妹みたいだな………妹居ないけど。


腰の後ろで手を組みながら、頬を上げて微笑みかけてくれる姿を見ていると不思議とそう思ってしまった。


《あなたが次にやるべきは冒険者登録です、この世界で生きていくためには必須なのですから》


………だるい、早く冒険したい。


《ダメです、これは最優先事項です》


2号はお母さん見たいだな。しかも小うるさい系で子供の偏差値とかめちゃくちゃ気にしてくる過保護タイプの母だな。


《まったくもうルイはいつもいつも、なんでお母さんのいうことを聞かないの!隣の家の太郎君はもうレベル13よ!あなたはいつもまで2のままなのよ!》


え、なんか乗ってきた、二号ってたまにAIとは思えない言動するよな。


《日本のお母さんの中から検索条件に合う人間のデータを模倣しただけです》


その模倣をするだけで普通のAIではないと思うけどな。


《もううるさいのでさっさと冒険者協会に行ってください》


了解、お母さん。


「咲、その前に冒険者登録を済ませてもいいか?」

「あー、それなら拙者もしたいでござる」

「あれ?まだ冒険者登録済ませてなかったの?」

「そうでござるよ、拙者はもとより冒険者登録をするためにこの町に来たのでござる」

「なるほどなー、道わかる?」

「ふむ、わからん、案内してくれ!!」

「お前、よくここまでこれたな本当」


やばい、こうまでのんきな調子でいられると、長男魂に火がついちまうぜ。


「じゃあ離れずについて来いよ」

横目に咲を見ながら歩きだす。

「なら、これで離れないでござるな!」

こ、こいつぅぅぅぅぅ!急に手を握ってくるなよ!つかちっせぇな、こいつの手………、けどちょっとあったかい。


ま、まぁこいつが迷わないようにちゃんと握っててやんねぇとな。少しだけ握る力を強めた。


「あ、あぁそうだな」

そこからはぎこちない歩き方で冒険者協会まで歩いて行った。



特になんの変哲もない木造の一軒家のような建物に入ると中は西部劇の酒場のように丸テーブルが乱立しており、柄の悪い人達が数人椅子の上で股を開いたやくざ座りをしている、その座り方は椅子の上でするものなのだろうかという疑問は置いといてカウンターのような場所に目を移す。


カウンターの上に受付と書かれた看板が立てかけられている、見ると数人の女性がそのカウンターで座っていた。おそらく受付嬢というやつだろう。とりあえずあの人達に話しかけるか。


「こんにちは、ようこそ冒険者協会へ、今日はどんな用でお越しですか?」

「あ、えと冒険者登録をしたいんですけど」

「私もそうでござる!!」

「了解しました、ではそこの席でお待ちください」

「あ、はい」


ききっと木と木が擦れるような音を出しながら椅子を引き座る。


え、何あの無気力な感じ、目に光がともってなかったぞ。一呼吸おいてから先ほどの受付嬢の違和感について考える。


《冒険者協会はこの世界のシステムが運営していて、今の受付嬢もAIです、よって人間らしくない行動をしているのです》


なるほどな、じゃああの受付嬢の容姿の設定は誰がやってるんだ?


その受付嬢の姿はもう乳首が見えるのではないかと思うほど下げられた襟元にお尻のしわが若干見えるくらい上げられたショートパンツ、それでいて巨乳金髪ポニーテールという要素を詰め込みすぎたような姿だったのだ。


これは気になってしかるべきだろう。


《日本にいる成人男性が思い抱いている受付嬢の理想の姿の平均の姿です》


………なんかすいません。


「ところでルイ、ちなみに今のレベルはどれくらいなのでござるか?」

「ん?5かな?」


俺は俺が情けないよ、こんなことでサバを読んでしまうなんて。


「そうか、案外高いのでござるな」

「あ、あぁ俺は歴戦の猛者だからな」


かっこつけようとして足を組もうとしたら足をテーブルにぶつけてしまったが何事もなかったように平然と足を戻す。


《歴戦の猛者(ゴブリン一体)ですね)》


二号さん、俺泣いちゃうよ?幼稚園児顔負けの号泣しちゃうよ?


「ふむそれならば拙者とあまり変わらないかもしれないでござるな、拙者のレベルは7でござるからな」

「そうか、ふむ確かにそうだな」

馬鹿!かっこつけるな俺!余計恥ずかしいだろ!

「お待たせいたしました、登録の準備ができましたのでカウンターまでお越しください」


た、助かった!このまま嘘を言い続けるのは骨と心臓が折れるからな、本当よかった。


「ではここに手を置いてください、この機械はあなたの魂に刻まれているスキルやレベルを読み取るだけです安心してください」

受付嬢さんが出してきたのはなにやら荘厳な手を置けるような機械だった。


特に抵抗もなくそこに手を置く、すると目を閉じたくなるほどのまばゆい光が部屋を包みこむ。この光はっ!


「くっ、これが俺が出す光か!さすがに強いな」

「はい、ありがとうございます、手を外してください」

「流石だ、だがこの程度の力では夜の死者共に勝てない、もっと混沌をも呼び込む力でなくては!」

「手を外してください」

「まだか、まだなのか!俺の光はまだ止まらないのか!」

「はい、だから止めるために外してください」

「くっ、や、やめろぉ!いくら俺の力が強いからって嫉妬なんかすんじゃねぇ!っていったぁぁ!!」


相当ストレスがたまったのだろうかだいぶ強い力で無理やり引きはがされてしまった。


不思議と受付嬢の瞳に怒りがともっている気がした。


「はい、これがあなたのステータス表兼冒険者身分証です、ここにはあなたの名前と持っているスキルとレベルが記載されています、スキルやレベルが上がったら更新に来てください」

「あ、はいどうも」


ステータス表を見ると


鳴神 累

レベル 2


スキル ショット レベル1


「………」

「え、レベル5って、え?」


隣にいる咲から困惑の声が上がった、困惑しすぎてござる語を忘れている。


「え?5じゃないの?」

「………うん」

「え?」

「………」

「え?」


いや、「え」だけはやめて、もう本当傷付いちゃうから。












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過保護系AIと共に死ねない世界を介護されながら生きていく @rereretyutyuchiko

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