間話 Quick Winter 千田美琴

 どうも、千田美琴です。今年の夏休みは三月君たちと遊んでいたため、やるべきことをやるのを忘れていました。それで今そのやることをするために私は一度実家に帰って来ています。私は毎年、とある友達の家に長期休みの時に行って様子を見に来ています。その友達の名前は白澤雪という子で元はクラスのムードメイカー的な存在で昔からの幼馴染の女の子なんだけど、中学時代の時に原因不明で不登校になっちゃって、その原因を私は突き止めたかったけど情報が一つもでないまま私は、高校生になってしまった。でも、今年の春に三月君から諦めかけていた時に情報が出てきた。その情報がもし本当なら、三月君と同じことをされたのだと思う。自分がされていたと思うと正直怖い。でも雪ちゃんがされていたのなら、全力で支えてあげたい。そう心に決めながら雪ちゃんの家に向かう。雪ちゃんの家族は雪ちゃんが不登校になる前に、事故で両親を失い祖母が育てていてすでに精神面ではかなり傷ついていた。でも私とかの友達がいたからなんとか持ち堪えていたみたい。歩くこと数分、雪ちゃんの家に着くと私は家の中に入り、祖母さんに挨拶をした後に階段を上り、雪ちゃんの部屋に向かった。


「雪ちゃん、美琴だよ。部屋に入るね」


そうして私は部屋に入る。部屋はカーテンが閉まっていて薄暗く、中に埃が舞っている中、雪ちゃんは布団にくるまっている。私はその光景を見て、少し呆れながらも部屋の窓を開け換気をして、一階から箒を持ち出して掃除をする。部屋をきれいにしている間に雪ちゃんと話が始まった。


「美琴ちゃん…どうして夏に来れなかったの?」


その言葉に少し間をあけて話す。


「それに関してはごめん。言い訳にしか聞こえないだろうけど、宿題とかが多かったから来れなかった」


「そっか…ねえ、美琴ちゃん。高校は楽しい?」


「楽しいよ。中学のみんなとは離れ離れになっちゃったけど、新しく友達が出来たんだよ。でも私の1番はいつになっても雪ちゃんだけどね」


「ふふ、いつもここにきた時にそれをいうよね……」


少しばかり雪ちゃんが微笑む。その少し明るくなった空間で私が今回、話したいことを雪ちゃんに話しかける。


「雪ちゃんは、今は学校に行こうとする気はない?」


「ううん、私には無理なことだよ」


雪ちゃんが暗い顔になる。こんなことになることはわかっている。でも、私はもう止まらない。


「私、学校でとある友達が出来たんだけど。その人は、生まれた時からいじめにあっていたの」


「……」


「それで、どんなことをされたのかを泣きながらも話してくれた。その中に一つだけ雪ちゃんに関係していると思うものがあったの。西川大雅君。覚えている?」


「…!」


やっぱり、三月君の言った通りだった。雪ちゃんは西川大雅君に虐められて不登校になったのだと。


「その人は、大雅君が初めての友達で嬉しかった。けど、大雅君に裏切られて、家族からは家を追い出されたと言ってた。でも、彼は学校で何もなかったように平然と過ごしている。多分、彼は強いのではなくて、自分が弱いと分かって今を、これからを前向きに生きていると思う」


「私は……その人みたいに、私は慣れない……」


雪ちゃんは俯きながらそう言った。その瞬間、私は無意識の内に雪ちゃんの頬を叩いていた。雪ちゃんは頬を叩かれたことに少し困惑している。その中で私は我慢が出来なくなって、思ったことを話した。


「私ね。学校は今も楽しいけど、雪ちゃんがいた中学の方が何倍も楽しかったの。だから私のわがままではあるけど、私は雪ちゃんに学校へ来て欲しい。そして少しずつでいいから雪ちゃんも前みたいに明るい姿を私に見せてほしいんだよ」


私は雪ちゃんが明るくなれる様に支えていきたい。でも無理矢理だと雪ちゃんの心の傷が深まるかもしれない。そう思っていたのに、自分の気持ちを全て吐き出してしまった。しかも、一番聞かせたくない人に…。


「あの……!」


雪ちゃんが話す。その大きな声に私はびっくりした。


「ごめん。美琴ちゃんに……辛い思いをさせちゃったんだよね……。私は、美琴ちゃんが中学を卒業してから家に来れなくなった日からずっと本当は悩んでいたの」


カーテンが風で脇に追いやられて窓が外の明かりで眩しくなる。その光景に映る雪ちゃんを見て涙が出てこようとしてくる。


「私は、あいつ。西川大雅に虐められて、学校に行きたくなくなった。でも、美琴ちゃんといつもみたいに笑い合いたい。でも怖かったの、また虐められるのが……。今だって怖い、あいつみたいなのがいるかもしれないって」


私は知らなかった。こんなにも雪ちゃんは1人で悩んでいたなんて。


「私は、美琴ちゃんの言う“彼”みたいにはなれないかもしれない、それどころか美琴ちゃんの気持ちに答えられないかもしれない。それでも、美琴ちゃんと一緒なら……一緒にいてくれるなら、前みたいに仲良くしていきたい」


「雪ちゃん……。私達は前からそして今も親友でしょ。それにそこまで言ってくれたのなら」


「うん。言ってみるよ!美琴ちゃんの通っている学校。冠明高校に!」


私達はそれから、昔みたいに2人で仲良く遊んで冬休みを過ごした。家に帰ってからは通話を通して、冠明高校の編入試験の勉強をしている。雪ちゃんは中学3年生から勉強が途切れていて、正直大変だったけど。春になって雪ちゃんがやってくるのが楽しみです。


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