間話 祭りの空は哀の空 七瀬優美

 私には、友達に話していないことがある。それが、私がバンドをやっていることだ。バンド名は『サマーミスト』そのままで別名『夏の霧』です。このバンドは、私の通っている冠明高校から遠く離れたところにあるライブハウスで活動している。そこには、いつも電車を使って向かっている。そして今私は、そのライブハウスに来ている。


「こんにちは〜」


「七瀬ちゃんやっほー」


この人は、桐島真琴ちゃん。何事も気軽な性格で、バンド仲間の一人でギターを担当している子だ。みんなの勢いはいつも真琴ちゃんによって出ている。


「お、優美も来たか。」


こっちの人は、鈴木星歌さん。真面目で、みんなを纏めてくれる子で、たまに抜けちゃっていることがあるけどそこが可愛いです。担当はドラムです。


「みんな来たし、近いうちにライブあるし、練習でもしよう!」


最後に、夕凪渚さん。よくはしゃぐ人でよく真琴ちゃんと一緒に星歌さんに怒られています。使っている楽器はベース。そして、私はボーカルギターをしています。

サマーミストは結成してそろそろ1年ですけど、ひとけの無いところのライブハウスでやっていたので知っている人は少ないですけど、知っている人には人気のあるバンドです。


「そうだね。みんなで練習しよっか。」


私は、この前みんなで集まった時に冠明祭のステージ発表に参加しよう。と提案をして、オーディションに合格してその日から集まれる日は集まって練習をしている。そして今日は冠明祭前日だ。そのため今日は早めに終わらせて、明日に備えてみんな早く自分の家に帰った。


 当日、私達は学校の校門前に集まった。


「いやぁ〜緊張するね〜」


「そこはもう少し、緊張しているような声だろ。」


渚さんの言葉に星歌さんがすぐさまツッコミを入れる。この感じならみんなでステージ発表を盛り上げられそうだ。


「ねえねえ、七瀬ちゃん。私達のステージライブは何時からなの?」


そう聞かれて私は、冠明祭の案内の紙を見て真琴ちゃんに伝える。


「えっと、ステージ発表は3時から始まって、順番は最初。1番目だね。」


「それなら、今は11時でもうすぐ昼時だし、どこかしらは飲食店の出し物やっているだろうから、食べにいこうか。」


「そうだね〜」


「それだったら、1年2組に喫茶店があるよ。」


「じゃあ、1年2組にレッツゴー!」


私達はみんなで三月さんと美琴さんの出し物のある教室で、行列や三月さんの5つ同時焼きに驚きながらも注文した簡単オムライスを食べた。


「いやぁ、あれはすごいよもはや職人技でしょ。」


「オムライスも美味しかった。」


「この後は、ライブの準備をしよう!」


みんなが満足できたみたいでよかった。それにしても、三月君は本当になんでもできそうな人だなぁ。私達は楽しく話しながら、ライブを行う体育館に向かい、時間になるまで練習を続けた。

 そして、時は来た。ついに、ステージ発表が始まる。正直みんな緊張している。それはそうだろう。今まで無名のライブハウスで客は大体4人多くて9人、10人程度だったのに、いきなり約100人近くの人の前でやるのだから。そして4人の緊張による静かな空間を壊したのは、星歌さんだった。


「大丈夫だ。私達はいつも通りにやればいい、ミスをしたら誰かが補えばいい。だから緊張に負けるなよ!」


私達は星歌の言葉に応える。


「うん!いこう!」


「まず、一組目の発表です。グループ名『サマーミスト』」


文化祭実行委員の声に反応して、私達は表舞台に歩みを入れていく。私達が出て来た時には、たくさんの人達が見ている。みんなも私も緊張している。でも、いつも通りやっていけばいい、だから……


「どうも!サマーミストです。私達のバンドを知っている人はこの学校にも、この地域の人たちも少ないと思います。話が長くなるのもあれなので、いきます!一曲目、サマーミストで『霧の栄光』」


星歌さんのスティックの鳴らす音と共に曲が始まる。曲の特徴は、ステージ発表の最初であるため後続にも続くように、勢いのある曲の『霧の栄光』。私達の活動して作った曲で一番新しく、一番弾くのが難しい曲になっている。ドラムが変拍子で、そこにギターの音を絡めるのが異様に難しく、3ヶ月近くずっとみんなで練習をしてきた。今だって間違うときがあるけれど、今はただひたすらに音を流すだけだ。ただひたすらにみんなで音を合わせ、歌を歌う。ここには、発表を見に来た私の家族や友達である冬瓜君や美琴さんだっている。それに、ここまで来てダメなところは見せたくなんてない。そう思いを深めているといつの間にか曲は最後を迎える。一曲目が終わるそうすると、ステージ全体は拍手の音で広がる。そして私の鼓動は大きく動く音がする。それも、みんなの拍手が聞こえなくなるほどに。それほど緊張していたのが分かる。そして思う、みんながついている。だから本当に大丈夫だって。そして口が動く。


「ありがとうございました!続いて次に曲に行きます!2曲目で……」

そうして、私達の音はその後もみんなの思い出の深くへ沈むまで流れた。

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