第9話 祭りの空は哀の宇宙(中編)

 2学期が始まり、2週間が過ぎる。後1週間もすれば、冠明祭だ。ここまでの準備で、僕が発案したメニューに決まって、内装はクラスの中で親が喫茶店で店長として働いている人がいた。どうやらその人が喫茶店の案を出したらしい。


「こっち手伝える人手伝ってー」


「すいません、こっちで作った試作品の味見をお願いします」


「分かった!」


「味見は俺がいくよ!」


いろんなところで助けを求め、手の空いている人が助けに行っている。連携がとてもできている。この調子なら、本番に間に合いそうだ。


 昼休み。最近はいつもの4人で集まって、昼ご飯を食べながらお互いの進捗を話している。


「冬瓜君と七瀬さん達のクラスの様子はどう?」


「こちらでは、コートの形ができて、今は人を傷つけない位の武器を男子が作っています」


「例えば、発泡スチロールでできたバットとかだな。三月達はどうなんだ?」


「おおよそのデザインが決まって、三月君が提案したメニューを料理班が練習中という感じかな」


というかんじで、お互いの様子を知ってはアドバイスになりそうなことを言っては言われて、それぞれ試行錯誤をしている。その結果は、お互いのクラスの助け合いに繋がっていた。そのまま時が流れ、準備が進んでいって本番前日となった。その日の解散前に今、学級委員がみんなの前で話している。


「今日まで、3週間お疲れ様です。明日は当日なので、みんなには帰ったらゆっくり休んでもらいたい。私達で最高の冠明祭にするぞ!」


その言葉にクラスのみんなは口を揃えて、


「「「おーー!」」」


勢いよく、声を出した。

 僕は解散後、家に帰って来て、ご飯を食べ、風呂に入り、布団の上に寝転びながら明日のことを考える。


(僕はみんなの為に動けたのかな……)


僕は、その一つのことを考えて、眠りにおちた。


 今日がきた、冠明祭の始まりだ。僕は、学校についてすぐ教室の入り、喫茶店を作るにあたって、作ってくれた制服をきて、僕はみんなに挨拶をした後に厨房に入る。まあ、厨房といっても簡易的に、ガスコンロを5台、後はまな板と包丁とか、コーヒーメーカーぐらいしかないが。今の時間はどうだろうかと思い、時計を見る。9時30分。つまり学校公開、冠明祭の始まりだ。5分くらいたったころ、初めての客が来た。クラスメイトの一人が注文をとる、その後に伝達係が調理担当に注文されたものを伝える。その後僕らが調理をして運ぶ、これが一つの流れだ。


「注文で、1番テーブルにサンドイッチとコーヒーを一つずつ!」


「了解!」


作業が始まる。僕は、パンを切って、その間にレタスとハムを挟む。そのままできたものを皿の上に乗せて、コーヒーと一緒に運ばれていく。この流れでなら上手く出来そうだ。そう考えている間に、客が増える。


「2番テーブルにたまごサンドとアイスコーヒーを一つずつ!」


「こっち、4番テーブルに簡単オムライスとミックスドリンク!」


注文が増える。僕らは一つ一つを早く丁寧に作りあげる。そのまま注文の量は少しずつ増えながら、2時間が過ぎる。


「4番と7番テーブル、同じ注文でオムライス2つずつお願い!」


注文に何人かが間に合わなくなってみんな慌て始めている。今の昼時を抜けたら、終わりになる。こういう時こそ、昔にやっていた料理の仕方をするしかない。


「ちょっとフライパン貸してくれるか」


「あ、はい。」


僕は、5つのガスコンロの上にフライパンをのせ、そのまま5つ全てに火をつけた。


「卵を5つ持って来て!」


ここで大切なことは、一度もミスをせず、一回で完璧に仕上げること。一度でも失敗したら、遅くなって客が不満を持つだろう。だからといって、一個ずつだともっと時間がかかる。今ここで、やるしかない!


「卵を持って来ました!」


「ありがとう。このまま一気に作るよ」


今の待機中の注文がオムライスが4つ、サンドイッチが2つ、たまごサンドが2つ、コーヒーが5杯、ミックスジュースが1杯。普通なら出来ないだろう。でも、僕ならできる。僕は、一つ一つのフライパンに卵を速攻で黄身を入れ、同時に作り出す。これは、家でこき使われていた時、家族に出す料理を速攻で作るために出来た技だ。この技はもはや、他人から見たら見せ物みたいなものにもなるだろう。注文がつぎつぎと増えるが、それ以上のスピードで料理を完成させる。みんなも最初は焦っていたが、次第に落ち着きを取り戻してペースも上がって来た。このままならいける。僕達は、そのままの勢いで一番忙しいであろう昼時を乗り越えた。

 午後になると、僕達のクラスの出し物はとじた。正直あそこまで人気になるとは思わず、材料がなくなった。今、僕は一人で1年4組、冬瓜君や七瀬さんのクラスの出し物を見に来ていた。


「おっ、やっと来たか」


声がした方を見ると、冬瓜君がいた。


「うん、今来たところ。正直、こっちの喫茶店が人気になりすぎて材料がなくなったから店じまい」


「まあ、そうだよな。さっき廊下で見たんだけどすごい行列だったからな」


「そうだ。そっちの出し物どんなかんじなんだ?見ていっていいか?」


「いいぞ、でも気を付けろよ」


僕はその一言に対し警戒しながら教室に入っていった。教室の中は壁紙で飾られていて、明らかに内装が闘技場そのものだった。いったいどうやったらこんな、再現度の高いものになるのかと、感心をした。けど、おもちゃと言っても本物の武器にしか見えない手作り武器に少しばかり、僕はそこに恐怖感を感じた。


「やっていくか?」


「いや、いいよやらなくていい。怪我はしたくないからね」


僕は、その一言から一歩下がってから後ろを向き、全力で走って逃げ出した。

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