間話 夏と一人に群青を 喜多冬凪
俺こと冬瓜は今、各個人の自由時間で、海の家のバイトをしている。本来、こういうときは三月を誘って遊ぶべきなのだが、あいつがどこに行ったか、検討もつかない。だから、こうして今はバイトをしている。海の方を見ると、美琴と優美が仲良く遊んでいるが、どうしても三月が見つからない。本当にどこいった?俺は、海を見渡して三月を探しながら仕事をする。
「おーい、にぃちゃんやい。ぼーっとしてないでこっち手伝ってくれ!」
「はい!」
あとでお前のバックの中を漁ってやるからな。俺はそう考えながら、仕事を淡々と進めた。まあ、正直言って海の家のバイトは楽しかった。いろんな人としょうもない話、彼女に振られたと言っている人の話などと、いろんな話が入って来る。人はそれぞれで悩みを抱えたり、思い出を持っているんだなと改めて思った。まあ、何回か逆ナンされたのは、いつものことだから軽く話してお終いにしていたけど。そうしている間に、時間は過ぎていき…
「にぃちゃんお疲れ!ありがとな手伝ってくれてよ。これは、手伝いのお礼だ。あんたはまだ高校だろ」
そう言われて、俺はおっさんからお金と店の余りの焼きそばを2パック貰った。
「ありがとうございます!」
そう俺はお辞儀をしてその場を去った。
そして、俺は海の家から更衣室に来ている。それは先ほど心の中で決めたこと、三月のバックを漁るためだ。俺は、更衣室にある三月のバックを見つけ、持ち上げようとした。…のだが。
「お…おも!」
俺の想像以上に、三月のバックが重かった。というかどうやって、こんなバックを持っているんだよ!そう思いながら、俺は仕方なくその場でバックのボタンを外して、バックの中身をのぞいた。海に来る前の電車でどんなものがあるのか聞いたが、聞いた限りのものがこのバックの中にあるとは思えないのだが、驚くことに、三月が持ってきたと言っていたもの以外にも色々と見つかった。日傘に、チャッカマン、花火や謎の木の棒が置いてあった。その中でも、目に入ったのが小型のバーベキューコンロだ。本当にどうやったらどこにでも売っているようなバックにどこぞに猫型ロボットの四次元ポケット級の収納量があるのか。正直この四次元バック自体が欲しいと思った。
メタいが本編の出来事の後の午後の遊びで、俺達は今海を泳いでいて今から三月、美琴、俺で競争をする。ちなみに優美は、審判をやってくれる。
「スタート!」
優美の掛け声でスタートする。泳ぐコースはスタートから一直線に泳ぎ奥にある岩の外周を回り戻って来るというシンプルなコースだ。俺は運動が好きで泳ぎも例外じゃない。はじめの方では、三月と美琴を大きく離していたが、外周を回った後の後半戦。美琴ははじめよりも少しずつ離れているが、三月はいつの間にか追いついていた。なぜこんなに三月が動けるのか不思議に思いつつ泳いでいると、入学してからやった体力測定を思い出した。俺は、小学、中学でずっと他の人より運動神経がずば抜けていた。けど今年は2番目だった。50m走での差は0.2秒差だった。正直あの時は悔しかった。もし、こいつが三月が俺よりも上だというなら認めよう。でも負けたくない!俺は体力の限界にいくまで、スピードをあげる。そしたら三月もスピードを上げてくる。これは男の勝負だから本気で勝ちにいく。あと5mくらいのところで俺は最後の力で加速をする。
「ゴールです。勝者は…。」
俺は息をきらしながらも、優美の判定を聞く。
「冬瓜君です。」
「よっしゃあ!」
「俺はそう叫んだあと砂浜にぶっ倒れた。これまでの人生の中でスポーツを本気でやったことがなかった。ずっと一人で、孤高の中で、やって来ていた。でも三月のおかげで気づけた。全力で体を動かすことは楽しいって。俺もこの夏は、思いっきり満喫できそうだ。
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