第3話 自称ぼっち
元自宅から遠いところの学校、冠明高校に入学した。高校生活の初日は入学式を体育館でやった後、クラスに戻って教科書の配布だの、自己紹介が始まった。ん?自己紹介!?。まずいどうすればいい、どうすれば今後目立たずに学校生活を送るか。好きなものでもいうか?いや、普通すぎて覚えられてしまう。なら、やりたいこと?いや、これも無理。なら自分の虐められた過去は?いや、これは論外だ。そうこう考えているうちに、自分の番がやってきた。
「次の人!」
「ふぁい!」
噛んだ。周りが少しばかり笑う。でも気にせず何も考えずに喋り出す。
「僕の名前は三月巧也です。ぼっちを目指しています。これから宜しくお願いします」
あ。やらかした。でももう遅かった。言い終わった瞬間クラス全体が笑い出す。先生だって笑い出した。でもまだこれは最初の印象だけであって、それ以外は凡人並でいればいい。そう考えているが、この一言が三月巧也の二つ名“ぼっちになれないぼっち”の始まりである。
帰りの時間僕は歩く。今の僕の自宅は安めのアパートだ。だってお父さんからの仕送りもないし、バイトの給料も安いしで安定して過ごすにはここしかなかった。でもその分、前より楽しいことは増えた。家族から離れたことで、怒られたり、ばかにされることはないし、勉強を強制されるわけでもない。だから、自由な時間が増えて好きな本を読めたり、スマホでゲームをやっている。リア友がいなくても、ネッ友がいるから寂しくない。そして家事は今まで全部家で任されていたから不自由はないし、自分にとっては最高の生活だ。そう思いながら考え出す。
しかし、明日は体力測定だ。僕の高校生活始まって以来の最難関。どうすればよいのか。手を抜くか?いや多分なんか言われる気がする。なら、本気を出すか?でもそしたら注目の的になるだろう。そうだ、自分の前の人より少しだけ速く走ろう。そう考えがついて、僕は布団に潜り込んだ。
次の日の昼、体育の時間つまり、体力測定だ。今回の50メートル走は前の人より少し速く走ることを考えなきゃいけない。その時に自分の前の人が走り出す。
「記録6.2秒」
よし大体6秒か6.1秒かなと考えながら位置に着く。自慢ではないが、中学時代にあいつらから逃げるためだけに鍛えられた足があり、体力の節約もかねて速度も調節ができる。スタートの合図で走る。速度を一定にして怪しまれないようにする。して、ゴールに着く。結果はどうだろうか。
「記録6.0秒」
狙い通りそう考えていると歓声が上がる。何故だろう、そう思い近くの人に聞いてみる。そしたら、
「さっきの君の走りが、さっきのクラスの最高記録を抜いたからだよ」
自分の中で沈黙が続く。思考が再起する。まて、つまりは前の人がクラスのトップでそれを抜かしてしまったのか?!僕はその場で挫折する。周りは心配してしまうだろうと考え、立ち上がってから自分のやったことを振り返る。やばい。また目立ってしまった。どうしてこんな運が悪いんだ。いや、運が悪いのは元からでも、やるんだったら1人1人の記録を見て平均的に走るべきだったか。まあ、もうどうしようもない。そう考えて僕は教室へ重い足を運んだ。
1週間後、今日から部活に入れるようになる。ところどころには先輩の人たちが何人かの人たちを部活に勧誘され悩んでいる人や、もう部活に入っている人がいた。でも、僕はそれ以上に勧誘を受けていた。理由は分かる。この間の50メートル走だ。タイムは、他のクラスの人も含めて自分が最速だったからだ。僕は、目立ちたくない。だから、運動系の部活は控えたい。だから、僕は帰宅部になることを望む。しかし、残念なことに、この高校には帰宅部がないのだ。そうなると、入るのは文化系。なら文化系の部活を見てみよう。まず、美術部。これは自分に画力がないから却下。続いて吹奏楽部は、楽器のエキスパートが集まりやすい中、1人だけ下手くそなのが目立つ印象。次は、実験開発部。何これ。なんか爆発とか爆発とか爆発が起こりそうだしやめよう。もう変なのしかないけど次、オカルト研究部。部員が0人だし、いらんだろ。という感じで変なのか、ガチ勢しか集まらなそうなものしかなかった。でも1つだけ興味があったのが…
文芸部。
この学校の文芸部は入っている人が多いのにも関わらず、オリジナルの本を書いている人が少なくて1割ほどだ。この部活なら、陰キャが多くて孤立しやすくて、好きな本を読んでいられるから、何より楽だ。僕は文芸部に加入するための用紙を出して、学校を後にした。無事、今日を終えたようだ。
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