第256話 『カステロ』


 『デムーロ。あの辺なんか良いんじゃないか?』


 『………そうだね。じゃあ周辺の警戒を頼む。城が出来るまで、私は無防備になってしまうからね』


 『円卓』や『覇槍』チームが、魔物と接敵して倒し終わった頃、イタリアの『カステロ』は、なるべく魔物との接敵を避けつつ、城を召喚する場所を探していた。


 「こいつら、フィールド型で助かったよな。迷宮型だったら、デカい城なんて建てれないし」


 「小さいお城というか、家を建てる事も出来るみたいですけどねぇ。やっぱりあの人の真価が発揮されるのは、こういう大きいフィールドでしょう」


 意外にも『カステロ』のデムーロと仲が良い陽花が言う。なんでもブートキャンプの時に手土産で持ってきたワインが美味しかったらしい。


 まあ、陽花が言うように、今回の荒野みたいなフィールドだったら、デムーロの力は十全に発揮出来るよなぁ。


 狭い場所とかでは、今まで『カステロ』本来の力は発揮出来なかった。城からの遠距離攻撃が『カステロ』本来の持ち味だからね。


 「中々応用が効く能力だよね〜。本人の思い込み次第だけど〜」


 デムーロの能力は『城召喚』って名前だけど、正確にはデムーロが城と認めたものを魔力を使って召喚する能力だ。


 だから、極論を言えば、俺を城と認める事が出来たら、俺を召喚出来てしまう。


 召喚する対象によって魔力の大小が決まるから、俺を召喚しようとするなら、えげつない程の魔力を要求されるだろうが。この世界の人間の魔力を全部合計しても無理じゃないかな。


 「あいつは見た目に反して真面目だからな。意識を改革させるのに苦労したぜ」


 デムーロの見た目は絵に描いたようなチャラ男。俺の偏見も入ってるけど、これぞイタリア人って感じだ。


 たが、性格はクソ真面目。それがあいつの良いところではあるんだけど、城は城って感覚を変えるのは中々難しかった。


 あまりの勿体なさに嫉妬か色欲の悪魔を使って、軽く洗脳してやろうかと思ったくらいだ。流石にやめたけど。


 まあ、それでも日本のアニメやらに触れさせたりして、なんとか軽く応用が出来る程度にはなった。


 「おっ。上手くいったな」


 デムーロが召喚したのは、堅牢な城壁がある城。モデルは大体のアニメに出てくるような、なんか凄そうな城だ。現代の地球にはこんな城はないが、上手く想像出来たらしい。


 『ここをキャンプ地とするっ!!』


 『それ、言わないとダメなんですか?』


 『天魔がこういう時の様式美だと言っていたよ』


 『絶対騙されてますよ…』


 うむうむ。お約束もしっかり守ってくれたみたいでなにより。俺自身も、正直元ネタは知らないし、なんか拠点が出来た時に言っとけばいいんでしょってぐらいにしか思ってないけどさ。


 『城に反応してフレイムウルフ達が押し掛けてくるぞ! 総員攻撃準備!』


 城さえ出来れば後は『カステロ』の独壇場だ。魔物は基本的に馬鹿だから、こんな大々的な行動したら、間違いなく突っこんでくる。


 知恵のある魔物もいるけどBランク程度なら、せいぜい幼稚園児レベル。テイムされてたらその限りじゃないが。


 『圧倒的じゃないか、我が『カステロ』は』


 『デムーロさん、日本のアニメに毒されすぎですよ…』


 突っ込んできたフレイムウルフは、立ち塞がる城壁にどうする事も出来ない。せいぜい壁に焦げ跡をつくるくらいだ。


 城壁の上から『カステロ』は魔法で攻撃したり、銃で攻撃したり、弓で攻撃したりとやりたい放題である。


 で、魔物のウェーブが終わったら、ドロップ品を回収しに行って、城の中で安全に休める。


 ほんと相性の良い相手には無双できるな。


 いつか天空の城とか召喚出来るようになって欲しいもんだ。是非お邪魔させて頂きたい。

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