第254話 攻略開始


 「おっ。配信もしてるな」


 複数の国が協力して1の級の狭間攻略が始まった。


 以前試験的に運用した、狭間内でも生放送が出来る新機材を使っての配信もしている。三つともほぼ同時刻に攻略を開始したっぽいな。


 「どれを見れば良いか迷っちゃうな」


 「全部見たらええやないか」


 犀がパソコンをぽちぽちして、テレビと映像を繋いでくれた。しかも三画面になって全部が見れる贅沢セット。こんな事も出来るんだね。


 俺はタブレットを三つ並べるぐらいしか思い付かなかったよ。


 「オーガに、トロールに、フレイムウルフか。トロール以外は平均的なBランクの魔物って感じだな」


 「マーリンちゃん大丈夫かな〜」


 「大丈夫だろ」


 あのブートキャンプを乗り切ったんだ。これぐらいスパッと攻略してもらわないと困る。もし苦戦するようなら、日本に呼び出して再度訓練で地獄を見せてやる。


 それに、相手はオーガだ。オーガは簡単に言えば身体能力がバケモンな人だと思えば良い。オーガより恐ろしい俺と数ヶ月対峙してたんだから、今更ビビる必要なんてないだろう。1級っていうバイアスを取り除けば楽に戦える相手のはずだ。


 「イタリアなんかは、一方的にやりたい放題出来るんやないか? あんなん、城出して遠距離から一方的にタコ殴りしたらしまいやろ」


 「相性が良いもんな」


 デムーロが率いる『カステロ』は相性が良い相手にはとことん強い。今回の相手の主な種族は狼。


 大きさはボスでも2mぐらいだ。本来は圧倒的機動力で翻弄してくる厄介な相手だ。常に体に火を纏ってるのも鬱陶しい。


 でも高い城壁を越えてくる力がない。『カステロ』は籠城して、相手が攻めてきたところを遠距離からタコ殴りするだけで良い。


 城を出すのに多大な魔力が必要になるが、魔力回復ポーションと併用すると、こういう相手には無類の強さを誇る。


 今回の攻略する奴らの中で一番安心して見れるグループだな。


 「問題はロシアと韓国が行ってる狭間だな。トロールは動きが鈍くて戦いやすい相手ではあるけど、再生能力がとにかくうざい。一体一体を倒すのに時間が掛かるだろうな」


 「ふむ。良いサンドバッグになりそうな魔物だな」


 「再生出来ない程に溶かしてしまえば良いですよねぇ」


 「私はシャコパンチで、復活させる間も与えないぐらいに消滅させますっ!」


 陽花はともかく、公英と神田さんは感想が脳筋すぎるよ。神田さんは公英と仲良くなって、思考が侵食されてるんじゃないのかな?


 やはり筋肉感染は恐ろしい。俺も気を付けないと。


 「あ〜! マーリンちゃんが空を飛んでるよ〜!」


 「正確には浮いてるだけどな」


 一番初めに敵と接敵したのは、イギリスと台湾チーム。4体のオーガが出て来て、戦闘が始まった。


 『円卓』と『コハクンチョス』の戦い方は非常にシンプル。受けタンク避けタンクがヘイトを取って、その隙にアタッカーが攻撃する。


 で、その圧倒的アタッカーだったマーリンは、機動力に少しばかり難があった。魔法職だし、そっち方面に補正が掛かってないから仕方ないっちゃ、仕方なかったんだけど。


 偶に攻撃のタイミングを逃してしまう事もあったらしい。それを改善したのがあれだ。


 俺のアイテムボックスの中で肥やしになっていた、浮遊の魔道具。俺は自前で空が飛べるから使う必要が全くなかった。


 それに最大で5mぐらい浮かせる事の出来るだけの魔道具だ。移動する事は出来ない。本当に浮くだけ。


 でもマーリンにはそれで良かった。機動力が足りなくてついていけないなら、浮いて空からタイミングをみて攻撃をすれば良いって事だな。


 俺が身体強化の魔道具の方が良いんじゃないって言ったんだけど、断固拒否された。『魔法少女は空に浮いてないといけないのじゃ!』って熱く語られてしまった。マーリンなりのロマンなんだろう。


 しかも、あの魔道具。扱うのは結構むずい。魔力を流し続けてないと、浮かんでられないし、魔力を流す量も多すぎても少なすぎてもダメっていう、シビアな調整が求められる。


 それと同時に攻撃の魔法も使わないといけないんだからな。まあ、マーリンはそこそこ器用みたいで、すぐに慣れてたけど。


 成長したら、浮遊の魔道具じゃなくて飛行の魔道具をあげてもいいな。飛行は浮遊なんかよりも更にシビアな魔力操作が必要になるから。


 まあ、魔法少女に憧れてるなら、そのうち出来るようになるでしょ。

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