第253話 それぞれの探索者



 ☆★☆★☆★



 「命大事にじゃぞ! 今回は織田天魔がおらぬからの!」


 「はい!」


 バチカン市国内の三つある1級の狭間のうちの、その一つの前で攻略前の最後の檄を飛ばしているのは、合法ロリのイギリス『円卓』のリーダーであるマーリン。


 世間的知名度や実力などを鑑みて、この狭間攻略の実質的リーダー的を任されている。


 「大丈夫じゃ! 流石に織田天魔よりも恐ろしい魔物は出て来ん! あれに比べれば可愛いものだと思え! しかし! 油断だけはするでないぞ!」


 「はい!」


 イギリスと一緒に攻略するのは、他に台湾の『コハクンチョス』である。かつては織田天魔と共に1級の狭間に潜った事もある、台湾の四つの上位ギルドのうちの一つ。


 それが今回バチカンに派遣されていた。こんなふざけたギルド名をしてる事から分かる通り、このギルドメンバー達はサブカルが大好きである。イギリスと共に攻略すると聞いて、みなは歓喜したものだ。


 合法ロリ万歳。


 「うむうむ。調査では今回の1級の魔物は鬼系。オーガが確認されておる。過去に多大な犠牲を払って討伐したオーガ達だが、今の我々は違う! あの地獄の訓練での成果をここで見せてやろうぞ! 者ども! 突撃じゃー!」


 「おおーっ!!」


 滅茶苦茶士気が高いイギリス、台湾連合軍は、マーリンの合図で狭間に突撃して行った。



 ところ変わって、こちらも三つあるうちの一つの狭間。


 「団長。準備が整ったみたいです。韓国の奴らもいつでもオッケーだとか」


 「おし! 行くぞお前ら!」


 「うっす!」


 ロシアの『覇槍』バンチョフと韓国の『少女KARA』が三つの狭間のうちの一つを担当していた。


 バンチョフはブートキャンプやその後の特級狭間攻略では、ネタキャラのように扱われていたが、本来は世界の男連中から憧れられるカリスマ的存在であった。


 粗暴な口調ではあるが、子供に優しく、一般人に迷惑もかけない。ギャングのボスのような見た目をしてるのに、実は猫が大好きで、日本での休暇中に猫カフェでにゃんにゃんしてる姿が多数目撃されている。


 本人は変装して身元を隠そうとしていたようだが、身長が2m近くあるのだ。残念ながらバレバレであった。


 まあ、そういうギャップもあって、男連中から人気だったバンチョフだが。


 ブートキャンプ以降はネットでも弄られキャラとして定着している。全て織田天魔が悪い。


 「ここの狭間はトロールが確認されている。織田天魔が言うには1級クラスの魔物ではトップクラスの強さらしい。油断するんじゃねぇぞ」


 「うっす!」


 「よっしゃ行くぜ! 世間では俺の事をニャンチョフとか言ってる奴らがいるらしいが、今回の狭間攻略で黙らせてやる!」


 「にゃー!」


 「その気の抜ける返事はやめろ!」


 バンチョフの今回の狭間攻略に懸ける思いは強い。なんとしても、以前のイメージに戻して見せる。


 バンチョフの前途多難な狭間攻略が始まった。





 そして三つある狭間のうちの最後の一つ。

 そこにはイタリアの『カステロ』というギルドメンバーの姿があった。


 「うちは他国との合同じゃないんですね」


 「まあ、メンバーが多いですから。この狭間の魔物も私の能力と相性が良いですし、大丈夫でしょう」


 『カステロ』のリーダーであるデムーロ。

 彼の能力は『城召喚』である。召喚するのに多大な魔力を消費するが、本人が城と認めたものを召喚出来る、見方によっては非常に使い勝手の良い能力である。


 デムーロが城を召喚し、他のメンバーが遠距離から圧殺する。それが『カステロ』というギルドの必勝戦法だ。


 その為ギルドメンバーは遠距離攻撃が出来る能力持ちが多い。


 「さぁさぁ。皆さん。そろそろお仕事の時間です。ここを攻略しないと、イタリアにも被害が及びます。あまり乗り気ではない仕事ですが、こればっかりは仕方ありません。他国のギルドもそろそろ攻略を始めた頃でしょう。私達も遅れを取らないように頑張りますよ」


 「はい!」

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