第230話 秘密兵器


 「うーん。やっぱりこうなるか」


 「んふふ〜! 私達も強くなったよね〜!」


 顔合わせをした翌日。早速ブートキャンプを開催。場所はとあるドームを丸々貸し切りました。


 で、毎度の流れで死ぬ寸前までボコボコに。そして回復してボコボコに。以下エンドレスループである。


 桜達にも手伝ってもらって、比較的順調に進んでると思われる。物語ではこういう時に必ず出てくると言っても過言ではない、跳ねっ返りが全くいないのも助かる。


 逆らったら切腹させられるとでも思ってるんだろうかね。一々躾直す手間が省けて楽だけど、なんだか複雑な気持ちである。


 流石にそこまで俺も鬼じゃありませんよ? ちょびっと訓練を厳しくするだけです。


コメント

・うわぁ…

・上位の探索者達が集まってるはずなんだけどな

・ぼろんちょんにやられてる

・本当にこれで強くなるの?

・なるんだろう。それは日本のギルド達の犠牲によって証明されてる

・犠牲ってwww


 因みにブートキャンプの様子は配信している。これを見て俺もやるぞって気になってくれるのを期待してます。


 残念ながら今の所は訓練の過酷さに引いてるだけだけど。全く。最近の若いもんは軟弱者だなと、老害みたいな事を言ってみる。


 なんたって俺は300歳オーバーだからね。


 「がっはっはっは!! 中々やるではないか!!」


 そんな中、一人。公英となんとか勝負が成り立つ程度には奮戦してる青年がいる。しかもどこのギルドにも所属していない野良の男の子だ。


 「くっ!」


コメント

・おお

・すげぇな

・あんな細身で筋肉ダルマになんとかついていってるぞ!

・能力があれば筋肉はあんまり関係ないと思うけど

・てか、誰だ?

・日本人だよな?


 青年の名前は伊達瑞樹。総理大臣さんと日本探索者協会協会長さんの息子さんである。


 探索者学校に通っておらず、本人も少し前までは探索者になる気はなかったらしい。パパさんと同じように政治の道に進もうとしてたんだ。


 でもどこぞの超新星が狭間を次々と攻略していく動画を見て憧れたらしい。一体どこの誰かだろうね。皆目検討もつきません。


 授かった能力は『学習』


 瑞樹君本人は、最初勉強に役立つ能力としか思ってなかったみたいだ。実際かなり役立ったけど、能力は本人の捉え方次第なところがあるからね。


 俺が結構前にやった探索者学校での講義でそれを聞いて『学習』を戦闘に応用。色んな動画の映像を見て独自に学習してここまで至ったらしい。


 実戦経験は皆無で、まだ本格的にやり始めて1年も経ってないのに、なんとか公英についていけてるのは凄いだろう。


 俺も昨日の顔合わせで挨拶をされて初めて知ったからね。日本の秘密兵器です。


 「でもなぁ」


 「圧倒的に肉体性能が足りてませんねぇ」


 横で見てた陽花の言う通りだな。


 色んな武術の動画や探索者達の映像を見て、小手先の技術は上がってる。でもそれが通用するのは、せいぜい3級ぐらいまでだろう。


 公英みたいな事を言いたくないけど、筋肉が足りてない。今も公英が能力を使ってないから、ついていけてるだけだ。魔物の防御を破るパワー、魔物の攻撃から身を守る防御力。魔物のスピードについていく瞬発力。その辺が足りてない。


 俺だって憑依してない状態なら、そこらのプロスポーツ選手よりちょっと上ぐらいの身体スペックしかないんだ。『学習』は確かに有用な能力だけど、その辺を解決出来なかったら伸び悩むだろうなぁ。


 徒手空拳で戦ってるけど、武器を持ったりはしないんだろうか? ちょっと後で落ち着いた時に聞いてみよう。


 今は瑞樹君だけじゃなくて、色んな探索者の指導をしないといけないからね。まあ、ひたすら模擬戦をするだけだけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る