第229話 各国の探索者
「うわぁ! 見てください! 『覇槍』のバンチョフさんですよ! あ、あそこには『円卓』のマーリンさんも!」
「そうだね」
「くぅー! サインを持ってない人がいっぱいだ!! 後でお願いしに行かなきゃ!」
各国から上位ギルドの探索者が続々と日本にやってきた。探索者オタクである『暁の明星』のリーダー稲葉さんのオタクゲージが急上昇。
一応、ブートキャンプを開催するにあたって、一通り情報は頭に入れたけど、今ではその各国の名だたる探索者より、稲葉さんの方が有名で強いんだけどね。
多分そういう事じゃないんだろう。鼻息荒く、あれはどこどこの誰々って教えてくれる。名前と顔を一致させるのに役立ってもらってます。
稲葉さんは、その後も一通り教えてくれたけど、もう辛抱たまらんって感じで、色紙を片手に突撃していった。
「確かにそれなりに戦えそうな人達ではあるけどなぁ」
「みんなおんなじ感じだよね〜」
まあ、頑張れば2級の狭間の攻略なら出来るんじゃねってぐらいの実力だ。日本のブートキャンプをこなした上位ギルドの面々の方が強い。
掘り出し物の強者とかいないかなって、ちょっと期待してたんだけどね。
「む? あれは誰だ? そこそこ強いぞ」
そろそろ全員揃ったかなと、挨拶を始めようとすると、集合時間ギリギリに会場に入ってきた、一人の人物。
あれはそこそこ強い。桜達には一歩及ばないけど、日本勢と同じぐらいの実力は持ってそう。あくまで見た感じだけど。
「まっ、いっか。そのうち分かるでしょ。時間になったし、そろそろ始めようか」
今日集まってもらったのは、東京のとあるホテル。とりあえずみんなで顔合わせをして、親交を深めてから、ブートキャンプをしましょうかってなった。
各国の上位ギルドばかりが集まってて、長期滞在は出来ないから、明日から早速スタートなんだけどね。今日と最終日はこうして仲良くしましょうの会が開かれる事になってる。
「はいはーい。皆さんよく集まってくれました。織田天魔です。皆さんとは短い付き合いにはなりますが、ブートキャンプ中はどうぞよろしくお願いします。明日から早速厳しい訓練が待ってますので、今日は英気を養って、明日からの訓練に備えてくださーい。じゃあ、長々と喋ってもダレるだけなのでこの辺で。かんぱーい」
適当な挨拶をブッかまして、乾杯。一応今回は俺がホストって事で、最初の音頭を取りました。後は各々が好きなように仲を深めて下さい。
俺は用意された美味しそうな料理に集中させていただきますね。
「織田さん、是非ご挨拶を」
「あ、はい」
なんて事は出来ない。料理を食べようとしたら、次から次へと各国の探索者が挨拶にくる。
台湾や韓国で会ったギルドの探索者も来てて、久々だねーなんて話したりしつつ、初めましての人にはこれからよろしくーつって。
非常に面倒である。まあ、挨拶をするのが普通なんだろうが、俺は料理が食べたい。あのローストビーフが美味しそう。あ、あそこのお寿司も食べたいな。
しかし我慢。ここを乗り切れば、今度から1級如きで海外遠征しなくて済む。俺が出るのは特級の禁忌領域だけにしてほしい。
あーでも料理が食べたい。食べながらとかダメなのかな? 良い? ありがとう。お礼に明日からはみっちりと鍛えてあげる。
そんな引き攣った顔をしないでよ。効果は保証するからさ。ブートキャンプが終わった頃には、国を代表する探索者になってる事間違いなしだよ。
やったね。英雄の仲間入りだ。おめでとう。
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