第211話 日本政府


 ☆★☆★☆★



 「どうするんだね!!」


 「伊達首相の意見を聞かせて頂きたい!」


 「流石にこれは看過出来ませんぞ!」


 議会は紛糾していた。天魔が隕石をばら撒いてから緊急的に会議が開かれたが、正当防衛を主張して、仕方ないという意見が4割。いくらなんでもやり過ぎだと言い、天魔には首輪を付けるべきだと言ってるのが、なんと半数もいる。


 残りの人間は日和見主義の風見鶏。黙って余り会議には参加せず、都合の良い方につこうと、機会を伺っている。


 「私の意見を言う前に、あなた達はどうしたいんですか?」


 首相の伊達は天魔は正当防衛だと最初から主張している。妻の日本探索者協会の会長も、世界探索者協会との会議で正当防衛を主張。


 しかし、余りにも被害が大きすぎた。多少のやり返しなら仕方ないと思っていたが、まさか中国全土に報復は過剰防衛だと言っているのだ。


 (少ないながらも日本人も今回の件に噛んでるみたいですしね。果たしてこの中に関係者は何人いるのやら)


 伊達首相は顔を真っ赤にして、唾を飛ばしながら織田天魔を政府の管理下に置くべきだと主張している人間を見る。


 まるで何かに焦ってるかのように、天魔の件を早々になんとかしたがってるように見える。


 「織田さんを政府の管理下に? 首輪を付ける? 一体誰が出来るんです?」


 「一探索者として力を持ち過ぎているのです!! 今回の様に暴走させない為に、しっかりとこちらで管理する必要があるのです!」


 「だから誰がです? その気になれば織田さんは世界を滅ぼせるんじゃないですか? あんな力を使ってもなお余裕がありそうですしね。私が織田さんの立場なら面倒な事になれば都合の悪い人間は一旦消して、自分の住みやすい世界にしますよ」


 「なっ…」


 伊達首相は呆れた様に声高々と主張していた人間を見る。当たり前だろう。誰が好き好んで政府の駒になると言うのだ。


 これが本当に力のない一探索者ならまだしも、圧倒的武力を持っているのだ。政府が管理する? 出来る訳がない。機嫌を損ねたら隕石を落とすような相手なのだ。管理させろと言って素直に従う訳がない。


 「私は何度でも言いますが、今回の件は正当防衛です。織田さんとは今後とも良き付き合いをしていきたいと思ってるんですよ」


 「あ、あんな惨劇を起こした相手と良き付き合いだと!? 出来る訳がなかろう!!」


 「では、織田さんに素直に殺されろと? 先に手を出して来たのは向こうですよ?」


 「そうは言ってない!! 他にもやりようがあったはずだ!」


 「では、織田さんにそう言って下さい。あなたが直接そうやって言いに行くのは止めませんよ。どんな結末になるかは分かりませんけどね」


 伊達首相だって、他にやりようがあったのではと内心では思っている。あそこまでやる必要があったのかと。


 しかしあの国は適当に済ますだけではダメだとも思うのだ。なあなあで適当な賠償で済ませるだけでは解決しない。必ずあそこは同じ事を繰り返す。


 そうしない為にも、一度で済ませる為にも、今回の事は仕方なかったのだ。


 今回の件で迂闊に織田天魔に手を出す人間はほぼ居なくなるだろう。ほぼというだけで、全く居なくなる訳じゃないのが、人間の業が深いところではあるが。


 天魔だって個人への報復なら、そこまで事を大きくしないはず。今回は国主導の襲撃だからああいう事になったのだ。


 「首相。新たな情報が…」


 秘書がある画面を見せてくる。

 それは天魔の生放送。


 現在そこでは今回の件に関わった人間の調査が行われていた。そして、その名前には天魔を管理すべきと主張していた男の名前が。


 (はぁ。やっぱりそうですか。裏取りはしっかりしないといけないですが、さっさと引き渡さないと、こちらにまで被害が及びそうですね)


 伊達首相はため息を吐いて、これからの事を考えた。まだまだ苦労する日々は続きそうだなと。

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