第203話 案の定


 ☆★☆★☆★



 「あらあら? 何か物々しい雰囲気ですねぇ」


 「紫さん、まさか?」


 攻略組がデンキウナギを見てテンション爆上がりしてる頃。天魔が所有する自家用ジェット内にて。


 万が一を考えてここの護衛を任されていた陽花は、周りの雰囲気が刺々しい感じになっていく事に気付く。真田はまさかと思いつつ、窓から外を確認。


 「……物凄い数の軍人に囲まれてますね」


 「まさかと思ってましたけど、本当に手を出してくるつもりなんですねぇ。真田さん、動画は回してますか?」


 「はい。生放送で日本政府に届けられてるはずです」


 「結構。向こうが手を出してきたら行動を開始しますよぉ」


 飛行機内にはカメラがいくつも設置されていて、外の映像を撮っている。万が一手を出された時の証拠用に回してたもので、出来れば出番がないと良かったのだが。


 「中国は一体何を考えているのか…」


 「本当にねぇ。数でなんとかなると思ってるのかしら? なんとか出来ないからこちらに攻略要請して来たんでしょうに」


 陽花と真田は戦闘準備をしながらため息を吐く。飛行機の周りにはかなりの軍人が集められている。その数は軽く三百人は超えるだろう。


 「私と真田さんだけならなんとかなると思われてるんですかねぇ。私も真田さんもそれなりに名前を売ってると思ってたんですが。まだまだ足りてませんか」


 「いえ。紫さんはともかく私はまだまだですよ」


 真田は謙遜しているが2級の狭間をソロで攻略したのは、世界でかなり話題になっている。『超回復』を駆使したゾンビ戦法は、海外ではクレイジーモンスターと言われてるぐらいだ。


 本人は天魔のブートキャンプに比べると楽だったと思っているのだが。


 「あらあら? 問答無用ですね」


 「はぁ。本当にやって来ましたね。これから一体どうなるんでしょうか…」


 「団長さん次第ですねぇ。もしかしたら国が無くなってしまうかもしれませんねぇ」


 ここからどうなるのかと中国軍の様子を見ていたら、飛行機目掛けて魔法攻撃をなんの警告もなく放ってきた。


 魔法は飛行機にぶつかる直前で、結界に阻まれる。天魔が置いていった魔道具の効果だ。


 中国軍は人に防がれるならともかく、まさか飛行機に当てられないと思ってなかったのか、かなり動揺してる様子。


 「しっかり撮れてますかぁ?」


 「バッチリです」


 攻撃されたのを確認して、陽花は自身の隣にずっと浮遊していた小さい水球を握り潰す。

 真田はそれが何かを理解してるので、何も言わずに見届けてから二人とも飛行機を飛び出した。


 既に証拠は確保した。ここからは正当防衛だ。それが過剰防衛になるかもしれないが、それは置いておこう。


 かくして陽花と真田の蹂躙が始まった。



 ☆★☆★☆★



 「冷たっ」


 ボスドロップと宝箱を回収。

 デンキウナギかっこよかったぜなんて言いながら、狭間から出ようとすると、俺の懐に入れていた陽花に渡された水球が潰れた。


 これは万が一飛行機が襲われた時に知らせてもらう為のやつだ。狭間内は電波が届かないから連絡出来ないからね。


 懐に入れてたものの、ちょっとやそっとの刺激では潰れない不思議な水球。これが潰れたって事はつまりそういう事だろう。


 「あー、ちゅーもーく! どうやら飛行機に襲撃があったっぽい。俺は手を出してこないだろうって思ってたけど、甘々ちゃんだったらしい」


 飛行機が襲われたって事は、俺達も狭間から出ると何かしらのアクションがある可能性が高い。


 1級ボスにも勝てないような中国軍にやられるとは思えないが、一応襲撃されても対応出来る準備はしておくべきだろう。


 「桜は携帯で動画を撮っておいて。外に出て襲われるにしても証拠は欲しい。なんなら外に出た瞬間生放送で全世界にお届けしたら、楽しい事になるかもな」


 手を出しちゃったか、中国さん。

 しかも俺に手を出すならまだしも、飛行機の方に。あっちには非戦闘員のパイロットだっているのにさ。


 流石に温厚で慈悲深いと評判の天魔君でも限度ってのがありますよ。まさか、アメリカやバチカンの前に中国と事を構えるとは思ってませんでしたね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る