第199話 次の国は


 帰国。帰国である。

 使徒様、イタリアの狭間攻略を経て帰国である。


 「バチカンは最後の機会を逃したな」


 「チャンスはあげたのにね〜」


 三週間ぐらいイタリアに滞在して、何かアクションがあればと思ったんだけど。

 いや、アクションはあったけど、残念ながら俺が求めてるのではなかった。


 結局最後の最後までお偉いさんっぽいのは出てこなかったからな。せっかく、ストーカーするのは許してあげたのに。


 イタリアさんが排除しようとしてたけど、本当に最後のチャンスだと思って話す機会は作ったつもりだ。


 でもやってくるのは下っ端ばかり。言う事は同じ事ばかり。最後の方はかなり切羽詰まってたっぽかったけど、やっぱり謝罪がない。


 下っ端ですら謝ろうとしないからな。

 謝ったらダメだとか言われてんじゃないのって思うぐらい。


 「もう滅んでどうぞ」


 狭間が崩壊したらそこに俺が魔法を放り込んでやるよ。




 「どうしましょうかね」


 「ええ、ほんとに」


 中国さんから攻略要請が届いた。

 部隊が壊滅してからも、人を送り込み続けてたみたいだけど、どうしてもボスに勝てないみたいだ。


 最初に精鋭部隊が散ってしまったのが痛かったんだろうな。数でゴリ押ししたけど、ボスに決定打を与えれずに、どんどんと人員を消費してしまって、どうしようもなくなったらしい。


 で、俺は探索者協会でその話を聞いてどうしたもんかと朝倉さんと相談してる訳だ。


 別に攻略するのは良い。

 モブは中国の軍が全部倒してるから、ボスだけって事で報酬を値切ってきてるが、それもまだ良い。


 問題は現在、日本と中国はすこぶる仲が悪いって事だ。それはもう滅茶苦茶悪い。

 今の俺とバチカンぐらい仲が悪い。


 そんな仲が悪い場所に行ってすんなり攻略だけして帰って来れるのかって話だ。


 「織田さんの身の危険を心配してる訳ではないのです」


 「そう言われるとなんか複雑な気持ちですけど」


 「織田さんを傷付ける何かや人物がいるなら攻略要請なんてしてこないでしょう」


 まあ、それはそうなんだけど。

 そう面と向かって言われると、なんだかなぁって思っちゃったりしちゃったり。


 俺だってみんなと同じ人間ですよ? 多分。300年ぐらい生きてるから多分としか言えないんだけど。


 「問題はただでさえ緊張状態が続いてる国家間で、もし織田さんが向こうで危害を加えようとする素振りでも見せられると、国としても対応しない訳にはいかないんです。織田さんがいくら強いとはいえ、日本からすると守るべき国民ですから。こちらも相応の態度を取らないと、世界からも顰蹙を買ってしまいます」


 「おお…」


 なんかスケールが大きい話になったな。

 しかも守るべき国民ですって。ちょっと嬉しい。守るなんて久しく言われてなかったからな。


 「流石にアメリカとバチカンの現状を見て、馬鹿な行動はしないと思いますが、絶対にしないと言い切れないのが中国という国です」


 「なるほど」


 「出来れば攻略が終われば速やかに帰国してほしいですね」


 ふむん。観光はNGって事ですか?

 本場の中華料理とか、万里の長城とかも無し? 張家界・武陵源とか、九寨溝・黄龍とかも行ってみたかったんだけど。


 「今回ばかりは遠慮していただければと」


 「むーん。仕方ないですか。ただでさえ仲が悪いのに、俺のせいで更に厄介な事になったりしたら申し訳ないですし」


 まあ、既に俺のせいでアメリカとバチカンとの仲は急速に悪くなってるんですが。

 でも俺は悪くないからね。向こうが馬鹿で勝手に怒ってるだけなんだ。ないだろうけど、もし戦争とかになったら任せてほしい。


 傲慢ルシファーに憑依して、拡声器で死ねって言いながらアメリカを飛び回ってくるから。


 そんなこんなで、俺の中国日帰り攻略遠征が決まった。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る